悪役令嬢にはブラック企業で働いてもらいます

ガイア

仕事終わりに来てもらいます

「怖い怖い怖い、もう出勤したくない!!この会社!」

相澤は頭を抱えて震えているけれど、女にモテるというのはいいことなんじゃないの?

「モテモテなのは、いいことなのではないですか?」

理沙が私と同じ事を相澤に問いかけるけれど、

「何言ってんですかあれは罰ゲームかいじめですよ!ボクをからかって楽しんでいるんだ!ボクがモテるわけないでしょう...!あぁ、怖い怖い」

「ネガティブなんですね...」

理沙は、あまり相澤と関わっていない。男性と関わるのが苦手だって言ってたからなのかもしれないけれど。
八木杉は、いつもの感じでガンガン話しかけていくコミュニケーションおばけだし、総司はいつものように、近すぎず遠すぎず他人とコミュニケーションをとっているわ。
相澤とこの中で一番話してるのは私なのかもしれないわね。

「相澤、何かあったら私が相談に乗ってあげるわよ」

「溝沼さん...」

相澤は、キラキラとした目で私をみていた──けれどすぐその目を黒く染めヒョイっとそっぽに向けた。

「でも溝沼さんは、ボクがあの女の先輩三人衆に絡まれているときに助けてくれなかったじゃないですか」

「どうすればよかったのよ!」

相澤は、理沙と同様女の人が苦手だからなのかしら。

次の日も、次の日も、女の先輩に絡まれて相澤はぐったりしていた。
でもある日を境に相澤はとうとうおかしくなった。

「ボク...やっぱりモテるのかもしれません」

「え...どうしたの相澤」

「いや、ボク実はモテるのかもなって。年上の女性に人気なのかなって、このダメ人間なところとか、放って置けないのかなって」

「相澤?どうしたの?」

「トイレに行ってきます」

相澤は、ふらふらと歩いて行った。大丈夫なのかしらアイツ。
そんな彼を、意外なことに理沙が気にしていた事を私は気がつかなかった。

「ボクが年上の女性に人気があるとは思いませんでしたよ。よく可愛い可愛いって言われてたんですよね...はは...ついにボクも童貞卒業しちゃうかなぁ...」

「相澤...だい、大丈夫なの?」

「何がですか?」

相澤は、閉じきったミノムシみたいな心が、こじ開けられてボロボロになったようだった。

「明日、仕事終わりに先輩の一人に呼ばれてるんですよね...」

「そ、そうなの...何でよばれてるのよ」

「さぁ...何でしょう」

だ、大丈夫なのかしら...。

「灰子ちゃん」

理沙が、心配そうな顔で私に手招きした。

「どうしたのよ」

「トイレ行こう」

「え?」

理沙は、私の手を掴んでトイレに連れていくみたい。どうしたのかしら理沙ったら。

「昨日、私がトイレにいる時ね聞いちゃったの」

「え?」

「あの相澤さんに話しかけている3人の女の先輩が、相澤さんをからかってるだけだって。陰キャヲタクがちやほやされて勘違いして可愛いって」

「.....」

相澤...。

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