怪奇探偵社

しぃ

(6)

俺は自分でも驚く程水を飲んでしまった。

自分ではあまり喉のかわきに気づかなかったのだが、そのまま全部飲んでしまったのだ。

俺は、空の2Lペットボトルを見ながら言った。

「俺、こんなに酷く泣きました…?」

「レンくんねぇ〜、食事の時も飲んでなかったし、…起きてから何も飲んでないよねぇ〜?丸1日寝てたから、まぁ…2L飲むのも仕方ないんじゃない〜?逆に少ないくらいかもねぇ〜」

クスクスと笑って言う彩嶺さん。

確かに食べることに夢中で飲み物に気づかない程だった。脱水症状と改めて考えると、確かにめまいや立ちくらみがあったかもしれない。身体が軽すぎて気づかなかったが… 

「飲み終わったか?そろそろ、大事な話をしようか。君にとっては嫌な話かもしれない。」

社長の乃良さんが少しこちらをうかがうように話し出した。

「はい。…聞きます。」

多分、お金の話だろう。

あれだけ憑いていたのだから、沢山迷惑をかけてしまったに違いない。それをタダなんて思っていない。

100万でも、200万でも頑張って払おう。…そう心に決める。

「………話というのは悪霊を払った料金、なんだが、会社の正規料金として、悪霊祓いは一体100万だ。

そして君に取り付いていたのは計34体。

だが、君の現状や怪奇探偵社に直接来た為に遠征費が浮いた事を考慮して、…一体80万に価格を下げた。

80万×34体で2720万円。

それと、ここ、怪奇探偵社は国公認であるから、君が意識を失っている間に交渉して1割程負担して貰った。負担額は272万。

…それでも、料金合計は2448万。

手は尽くしたが、これ以上の値下げは出来そうにない。」

すまない、と頭を下げる乃良さん。

鈍器で殴られるような衝撃だった。

2448万。どれだけバイトをしても、どれだけ生活を切り詰めても、とても払える金額ではなかった。

ホームレスになる予定の無一文な俺が、2448万もの借金を背負って…いったいどうしろと言うんだ。そう、声を荒らげたくなった。

…でも、乃良さんも国とすら交渉して、値下げも最大限してくれている。救ってくれた乃良さん達に当たるのは、絶対に違う。

「………分かりました。ですが俺はネットカフェに泊まるお金すらない無一文です。とても、返せるとは……」

「ああ、すまないがこちらでも君の事は調べさせて貰ったよ。持ち物に身分証があったからね。勝手に連絡してしまって悪いが、親御さんの方には一銭も払う気はないとも言われた。」

「そう、ですよね。絶縁…されてますから……」


……どうすればいいんだろう。

臓器を売るか…?死ぬしか無いのだろうか…。

踏んだり蹴ったりで俺の人生終わるのか……

頭を抱えた。どうしようもなくてガリガリ掻きむしった。

手の甲に、小さい手が掻きむしるのを止めるようにスっと触れた。

顔を上げて見れば彩嶺さんが薄らと笑いながら俺を覗き込んでいた。

そして彩嶺さんは乃良さんの方を向く。

自然と、俺の視線は釣られるように乃良さんを見る。



正面に座る、乃良さんは、俺を真っ直ぐに見つめ、真顔で言った。


「そこで私達は、君にある提案をさせてもらうよ。」









テスト期間に入ってしまいました!
次回更新はもう少し後になります!すみません!
更新予定は   !更新しました!
後々キャラクターや世界観を紹介するのも投稿しようと思ってます!



コメント

  • ノベルバユーザー596761

    しい7話楽しみにしとるよ〜!
    めちゃくちゃ面白いし早く続きみたい笑
    テストファイト

    1
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