おとぎの店の白雪姫【新装版】
エピローグ:『つづく』のその先
おとぎ町のおとぎ商店街にある小さなレストラン。ファミリーレストラン《りんごの木》は、おとぎ小学校の五年二組でも話題のお店だ。
まず、みんなで笑って話したのは、面白いメニューの数々だ。【桃太郎の~】や【シンデレラの~】といった、有名な物語の名前が付けられていて、メニュー表を見ただけでワクワクしてしまう。
そして、もちろん料理もとびきりおいしい。シェフの心のこもった料理は、ひとりで食べてもおいしいけれど、家族と食べるともっともっとおいしい。
だから、ファミリーレストラン。
カランガランと、少しだけ錆びた音を立てるドアベルを鳴らしてお店に入ると、優しくほほ笑むりんごおじさんが出迎えてくれた。
「待っていましたよ。今日は何を食べますか?」
「【白雪姫のホワイトバーグ】がいいな」
「それなら、彼女の得意料理ですね。期待していいですよ」
りんごおじさんがくるりとキッチンを振り返ると、「オーダー、承りました!」と、明るい声が飛んで来た。
「相変わらず元気だね。──ましろお姉ちゃん」
亀山まゆりは、やれやれと肩をすくめると、姉のように慕うリトルシェフ──、白雪ましろの顔を見に行った。
ましろは、長く伸びた黒くてふわふわの髪を、くるくると上手にお団子にしていた。
そういえば、こないだ一生懸命に練習してたなぁ。苦手なわりにがんばったじゃん。
まゆりはそんなましろを見て、思わずニヤニヤしてしまう。
「今日は、ましろお姉ちゃんが作るのか~。りんごおじさんのご飯が食べたかったな~」
「生意気だなぁ! わたしの料理だって、けっこう人気なんだからね!」
「冗談だよ。ましろお姉ちゃんの料理も好き」
まゆりは、ムッと口を尖らすましろが可笑しくて、クスクスと笑った。
ましろお姉ちゃんのことも、すっごく好きだよ。
ましろは、まゆりの両親が仕事で忙しい時、《りんごの木》でいっしょにご飯を食べてくれる。
ましろいわく、りんごおじさんがそうしてくれたから、大好きなまゆりにも同じようにしたいらしい。まゆりは、そんなましろの気持ちがうれしいので、《りんごの木》に頻繁に通っている。
そして、まゆりがここに来ることには、もう一つ理由がある。
「りんごおじさん! 味見してよ!」
「いいですよ、ましろさん」
まゆりは、キッチンで肩を並べるましろとりんごおじさんの姿を眺めることが、いつも楽しみだった。
二人の間に流れるあたたかい空気や時間。親子以上に強い絆──。目に見えない家族愛を感じることが、まゆりは好きだった。ステキな二人だった。
「誰よりも家族だよね」
「ん? まゆり、何か言った?」
きょとんとした顔で、ましろはこちらを見つめていた。
もう一度は言わないよーっだ。
まゆりはクスクスと笑いながら、お水の入ったグラスをテーブルに運んで行った。
「おなか空いたって言ったの!」
「そっか、ごめんごめん。お待たせしました!」
キッチンから出てきたましろは、コトンッとテーブルに料理を並べた。
黒い鉄板にのっているのは、雪のように白いソースをまとったハンバーグ。付け合わせは、色鮮やかなニンジンのグラッセだ。どれも熱々で、ジュウジュウという音を聴いているだけで、おなかが空いてくる。まゆりの大好物だ。
「さぁ。一緒にご飯を食べよう!」
まず、みんなで笑って話したのは、面白いメニューの数々だ。【桃太郎の~】や【シンデレラの~】といった、有名な物語の名前が付けられていて、メニュー表を見ただけでワクワクしてしまう。
そして、もちろん料理もとびきりおいしい。シェフの心のこもった料理は、ひとりで食べてもおいしいけれど、家族と食べるともっともっとおいしい。
だから、ファミリーレストラン。
カランガランと、少しだけ錆びた音を立てるドアベルを鳴らしてお店に入ると、優しくほほ笑むりんごおじさんが出迎えてくれた。
「待っていましたよ。今日は何を食べますか?」
「【白雪姫のホワイトバーグ】がいいな」
「それなら、彼女の得意料理ですね。期待していいですよ」
りんごおじさんがくるりとキッチンを振り返ると、「オーダー、承りました!」と、明るい声が飛んで来た。
「相変わらず元気だね。──ましろお姉ちゃん」
亀山まゆりは、やれやれと肩をすくめると、姉のように慕うリトルシェフ──、白雪ましろの顔を見に行った。
ましろは、長く伸びた黒くてふわふわの髪を、くるくると上手にお団子にしていた。
そういえば、こないだ一生懸命に練習してたなぁ。苦手なわりにがんばったじゃん。
まゆりはそんなましろを見て、思わずニヤニヤしてしまう。
「今日は、ましろお姉ちゃんが作るのか~。りんごおじさんのご飯が食べたかったな~」
「生意気だなぁ! わたしの料理だって、けっこう人気なんだからね!」
「冗談だよ。ましろお姉ちゃんの料理も好き」
まゆりは、ムッと口を尖らすましろが可笑しくて、クスクスと笑った。
ましろお姉ちゃんのことも、すっごく好きだよ。
ましろは、まゆりの両親が仕事で忙しい時、《りんごの木》でいっしょにご飯を食べてくれる。
ましろいわく、りんごおじさんがそうしてくれたから、大好きなまゆりにも同じようにしたいらしい。まゆりは、そんなましろの気持ちがうれしいので、《りんごの木》に頻繁に通っている。
そして、まゆりがここに来ることには、もう一つ理由がある。
「りんごおじさん! 味見してよ!」
「いいですよ、ましろさん」
まゆりは、キッチンで肩を並べるましろとりんごおじさんの姿を眺めることが、いつも楽しみだった。
二人の間に流れるあたたかい空気や時間。親子以上に強い絆──。目に見えない家族愛を感じることが、まゆりは好きだった。ステキな二人だった。
「誰よりも家族だよね」
「ん? まゆり、何か言った?」
きょとんとした顔で、ましろはこちらを見つめていた。
もう一度は言わないよーっだ。
まゆりはクスクスと笑いながら、お水の入ったグラスをテーブルに運んで行った。
「おなか空いたって言ったの!」
「そっか、ごめんごめん。お待たせしました!」
キッチンから出てきたましろは、コトンッとテーブルに料理を並べた。
黒い鉄板にのっているのは、雪のように白いソースをまとったハンバーグ。付け合わせは、色鮮やかなニンジンのグラッセだ。どれも熱々で、ジュウジュウという音を聴いているだけで、おなかが空いてくる。まゆりの大好物だ。
「さぁ。一緒にご飯を食べよう!」
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