【コミカライズ】私の身体を濡らせたら
10.波乱の忘年会-6
突然の告白と展開に唖然としている私たちを置き去りにして、龍也はあきらの手を握り、みんなに見えるように持ち上げた。
「あきら、早く諦めて結婚して」
え、結婚!?
「俺は絶対諦めないから、あきらが諦めろ」
私から見えたあきらの横顔は、恋する女の顔だった。
「龍也がそこまで本気とはなぁ」と、大和が感慨深そうにビールを飲む。
「つーか、あきらは? 龍也のことどう思ってんだよ?」と、陸。
「好きでもない男とヤルような女じゃないだろ? お前」
いくら親しい仲間内でも、いくらお酒の席だとは言っても、なんてことを聞くんだと口を開きかけた時、先に千尋が言葉を発した。
「そんなこと――」
「当たり前じゃないですか!」
龍也が千尋を遮る。
「あきらはそんな女じゃないですよ。けど、素直じゃないからなかなか認めてくんないだけです」
「そんな、難しいことか?」
「それは――」
「そりゃ、そうよ。仲間内でデキちゃって、ダメんなったら、気まずくて堪んないじゃない」と、千尋。
いつも冷静で、思ったことをハッキリと言うあきらが、何も言わず俯いている。
あきらが龍也を好きなのは明白だけれど、素直になれない理由があるのだろう。
高校の頃からの彼とは、十年近く付き合っていたはずだ。その彼と別れてから、あきらは恋人が出来ても数日や数週間で別れてしまっていた。
龍也への気持ちに素直になれないのは、その辺の事情からだろうか。
それに、私にはあきらのことでもう一つ、思い当たることがあった。
「それに、龍也の気持ちがこんだけ本気で、しかも結婚まで考えてるなら、悩まないはずないじゃない」
「えっ!? それって俺が重いってこと?」
「いや、重いってより重すぎだろ。死ぬまで、とか」と、大和。
「じゃあ、結婚してくんなきゃ死んでやる、とか?」
「あーーー……。あきら、じっくり考えろ?」と、陸がため息交じりに言う。
私も同調した。
「うん、その方がいいよ。龍也がいい奴なのはわかってるけど、さすがに怖いわ」
あきらの顔を覗き込むと、フッと表情が和らいだ。
「それに、恋愛と結婚は違うからね」
「そうだな。それで失敗した例がここにいるし、じっくり考えろ。週末に会うだけなら、お互いに格好つけていられても、一緒に暮らすとなるとそうはいかないからな」
陸の言葉に、部屋の空気が冷える。酔いも醒めそうだ。
内容が内容だけに、流しずらい。
「経験者の言葉、重すぎるよー」と、私はちょっとおどけて言った。
「ありがたいだろ?」と、陸がケラケラと笑う。
「ありがたくないよ!」
「そうよ。あきらが益々尻込みしたら、陸のせいだかんね」
「知るかよ! つーか、千尋と麻衣はどうなんだよ! いくらイギリスに行く前に結婚しろとは言っても、三人立て続けはきついぞ」
「確かに! うちは子供も増えるし、ご祝儀貧乏とかなりたくないぞ」と、大和。
「ああ。私はないない! ってか、そろそろ別れるし」と、千尋がブンブンと手を振って言った。
「はあっ!? なんで? お肌艶々効果がキレたか?」
「なんでよ! 私は前からお肌艶々です!!」
「じゃあ、なんでだよ?」
「もともとそんな真剣な付き合いじゃなかったのよ。私はあきらと違って、『いい男だなー』ってくらいの気持ちでヤレちゃう女なんで」
その言葉に、ムッとした。
千尋はそんな、男にだらしない女じゃない。
私みたいに、男運がない癖に告白されたら断れない、ダメ女じゃない。
私の大好きな千尋を、たとえ千尋自身でも悪く言って欲しくなかった。
「……素直じゃないのはどっちよ」
「あきら、早く諦めて結婚して」
え、結婚!?
「俺は絶対諦めないから、あきらが諦めろ」
私から見えたあきらの横顔は、恋する女の顔だった。
「龍也がそこまで本気とはなぁ」と、大和が感慨深そうにビールを飲む。
「つーか、あきらは? 龍也のことどう思ってんだよ?」と、陸。
「好きでもない男とヤルような女じゃないだろ? お前」
いくら親しい仲間内でも、いくらお酒の席だとは言っても、なんてことを聞くんだと口を開きかけた時、先に千尋が言葉を発した。
「そんなこと――」
「当たり前じゃないですか!」
龍也が千尋を遮る。
「あきらはそんな女じゃないですよ。けど、素直じゃないからなかなか認めてくんないだけです」
「そんな、難しいことか?」
「それは――」
「そりゃ、そうよ。仲間内でデキちゃって、ダメんなったら、気まずくて堪んないじゃない」と、千尋。
いつも冷静で、思ったことをハッキリと言うあきらが、何も言わず俯いている。
あきらが龍也を好きなのは明白だけれど、素直になれない理由があるのだろう。
高校の頃からの彼とは、十年近く付き合っていたはずだ。その彼と別れてから、あきらは恋人が出来ても数日や数週間で別れてしまっていた。
龍也への気持ちに素直になれないのは、その辺の事情からだろうか。
それに、私にはあきらのことでもう一つ、思い当たることがあった。
「それに、龍也の気持ちがこんだけ本気で、しかも結婚まで考えてるなら、悩まないはずないじゃない」
「えっ!? それって俺が重いってこと?」
「いや、重いってより重すぎだろ。死ぬまで、とか」と、大和。
「じゃあ、結婚してくんなきゃ死んでやる、とか?」
「あーーー……。あきら、じっくり考えろ?」と、陸がため息交じりに言う。
私も同調した。
「うん、その方がいいよ。龍也がいい奴なのはわかってるけど、さすがに怖いわ」
あきらの顔を覗き込むと、フッと表情が和らいだ。
「それに、恋愛と結婚は違うからね」
「そうだな。それで失敗した例がここにいるし、じっくり考えろ。週末に会うだけなら、お互いに格好つけていられても、一緒に暮らすとなるとそうはいかないからな」
陸の言葉に、部屋の空気が冷える。酔いも醒めそうだ。
内容が内容だけに、流しずらい。
「経験者の言葉、重すぎるよー」と、私はちょっとおどけて言った。
「ありがたいだろ?」と、陸がケラケラと笑う。
「ありがたくないよ!」
「そうよ。あきらが益々尻込みしたら、陸のせいだかんね」
「知るかよ! つーか、千尋と麻衣はどうなんだよ! いくらイギリスに行く前に結婚しろとは言っても、三人立て続けはきついぞ」
「確かに! うちは子供も増えるし、ご祝儀貧乏とかなりたくないぞ」と、大和。
「ああ。私はないない! ってか、そろそろ別れるし」と、千尋がブンブンと手を振って言った。
「はあっ!? なんで? お肌艶々効果がキレたか?」
「なんでよ! 私は前からお肌艶々です!!」
「じゃあ、なんでだよ?」
「もともとそんな真剣な付き合いじゃなかったのよ。私はあきらと違って、『いい男だなー』ってくらいの気持ちでヤレちゃう女なんで」
その言葉に、ムッとした。
千尋はそんな、男にだらしない女じゃない。
私みたいに、男運がない癖に告白されたら断れない、ダメ女じゃない。
私の大好きな千尋を、たとえ千尋自身でも悪く言って欲しくなかった。
「……素直じゃないのはどっちよ」
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