【コミカライズ】私の身体を濡らせたら
9.結婚宣言-3
「お前、ようやく来たな!」
馬場が相変わらずの大声で言った。
「元気そうだな!!」
「お前もな。そんなでけぇ声で、議員の秘書なんて勤まってんのかよ?」と言いながら、俺は馬場の隣に腰を下ろした。
「ばーか! 仕事中はひたすらオヤジの後ろで大人しくしてんだよ。その反動で、仕事終わったら喋りたくてたまんなくてよ」
「それは、まぁ、大変だな」
「周りはいい迷惑だけどな」と、向いに座っていた祥平が言った。
「家が近いから、しょっちゅう飲みに付き合わされんだよ」
「いやー、持つべきものは独り身の友達だよな!」
馬場が、ガハハッ、と大笑いする。
「彼女がいたって、構わず誘って来るんだろーが!」
「馬場に女が出来ない限り、付きまとわれんぞ」と、祥平の隣の倫哉が言った。
「勘弁しろよ」
また、馬場がバカ笑いする。
馬場は父親が道議会議員で、跡を継ぐべく大学卒業後は秘書になっていた。
「いや、これからは駿介を誘うから大丈夫だ!」と言って、馬場が俺の肩に腕を回す。
「あ、俺、無理」
俺は素っ気なく答え、目の前のビールに口をつけた。
「何だよ? お前も家、近いだろ? 祥平に聞いたぞ?」
俺と祥平は同じ高校の出身で、当時は互いの名前と顔を知っているくらいだったが、大学に入ってからつるむようになった。俺と真綾が別れた経緯を詳細に知っているのは、恐らく祥平だけで、卒業後も連絡を取り合っているのも祥平だけ。
俺が麻衣さんを追っかけて引っ越したことを知ってるのも。
「駿介は仕事と女で忙しーんだよ」と言って、祥平が揚げたこ焼きを口に入れた。
「女!? いんの!?」
馬場がグイッと顔を寄せてくる。俺は馬場の顔を、グイッと手で押し返した。
「いちゃ、おかしーかよ」
「おかしかねーけど……。いつからだよ?」
「付き合いだしたのは三……四か月前?」
言葉にしてみて、ちょっと焦った。
もう、四か月も過ぎた。
あと、八か月しかない。
一年なんて、早すぎる。
「マジかぁ……。どんなん? いくつ?」
押し返してもグイグイ迫ってくる馬場に背を向け、俺は壁を見た。
「勿体ないから教えねー」
「私、知ってる」
それまで黙っていた真綾が、口を開いた。
昔と変わらず、彼女の手にはワイングラス。
「同じ会社の先輩なんだよね?」
「え、なんで遠藤が知ってんだよ?」
まさか、元カノの真綾がそんなことを言うとは思わなかったのか、馬場が目を丸くした。
「この前、偶然会ったの。ぽちゃかわ? って感じ。私とはぜーんぜん違った」
「マジかぁー。そっか。ようやく遠藤のことを吹っ切れたんだな? 良かった、良かった」
馬場が、うんうん、と大袈裟に頷く。
「ちょっと、待て。俺は別に遠藤のことを引きずってなんかなかったぞ?」
ジョッキを空にして、注文用のタブレットでお代わりを注文する。倫哉と馬場の分も。
馬場が相変わらずの大声で言った。
「元気そうだな!!」
「お前もな。そんなでけぇ声で、議員の秘書なんて勤まってんのかよ?」と言いながら、俺は馬場の隣に腰を下ろした。
「ばーか! 仕事中はひたすらオヤジの後ろで大人しくしてんだよ。その反動で、仕事終わったら喋りたくてたまんなくてよ」
「それは、まぁ、大変だな」
「周りはいい迷惑だけどな」と、向いに座っていた祥平が言った。
「家が近いから、しょっちゅう飲みに付き合わされんだよ」
「いやー、持つべきものは独り身の友達だよな!」
馬場が、ガハハッ、と大笑いする。
「彼女がいたって、構わず誘って来るんだろーが!」
「馬場に女が出来ない限り、付きまとわれんぞ」と、祥平の隣の倫哉が言った。
「勘弁しろよ」
また、馬場がバカ笑いする。
馬場は父親が道議会議員で、跡を継ぐべく大学卒業後は秘書になっていた。
「いや、これからは駿介を誘うから大丈夫だ!」と言って、馬場が俺の肩に腕を回す。
「あ、俺、無理」
俺は素っ気なく答え、目の前のビールに口をつけた。
「何だよ? お前も家、近いだろ? 祥平に聞いたぞ?」
俺と祥平は同じ高校の出身で、当時は互いの名前と顔を知っているくらいだったが、大学に入ってからつるむようになった。俺と真綾が別れた経緯を詳細に知っているのは、恐らく祥平だけで、卒業後も連絡を取り合っているのも祥平だけ。
俺が麻衣さんを追っかけて引っ越したことを知ってるのも。
「駿介は仕事と女で忙しーんだよ」と言って、祥平が揚げたこ焼きを口に入れた。
「女!? いんの!?」
馬場がグイッと顔を寄せてくる。俺は馬場の顔を、グイッと手で押し返した。
「いちゃ、おかしーかよ」
「おかしかねーけど……。いつからだよ?」
「付き合いだしたのは三……四か月前?」
言葉にしてみて、ちょっと焦った。
もう、四か月も過ぎた。
あと、八か月しかない。
一年なんて、早すぎる。
「マジかぁ……。どんなん? いくつ?」
押し返してもグイグイ迫ってくる馬場に背を向け、俺は壁を見た。
「勿体ないから教えねー」
「私、知ってる」
それまで黙っていた真綾が、口を開いた。
昔と変わらず、彼女の手にはワイングラス。
「同じ会社の先輩なんだよね?」
「え、なんで遠藤が知ってんだよ?」
まさか、元カノの真綾がそんなことを言うとは思わなかったのか、馬場が目を丸くした。
「この前、偶然会ったの。ぽちゃかわ? って感じ。私とはぜーんぜん違った」
「マジかぁー。そっか。ようやく遠藤のことを吹っ切れたんだな? 良かった、良かった」
馬場が、うんうん、と大袈裟に頷く。
「ちょっと、待て。俺は別に遠藤のことを引きずってなんかなかったぞ?」
ジョッキを空にして、注文用のタブレットでお代わりを注文する。倫哉と馬場の分も。
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