【コミカライズ】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

8.彼女の嫉妬と元カレとの再会-3

「好きになった女が七歳も年上で不感症だなんて、言いにくいしねぇ」

 流れで頷きかけて、慌てて顔を上げた。

「それはっ! 関係ない!!」

 麻衣さんが、フフッと笑う。

「引っ掛かったら、もっと苛めてあげようと思ったのに、残念」

「はっ!?」

「鶴本くんと付き合い始めて気が付いたんだけど、私、Sかも」

「へっ!?」

 麻衣さんが上目遣いで、何か企んでいる風な悪い表情をした。

「さっき、遠藤さんに会った時の鶴本くん、知らない男の顔してた」

「え?」

「今の鶴本くんと、どっちが素?」

「意味が分かんない」

「無自覚って怖いね」と言うと、麻衣さんの顔がスッと浮き上がってきて、唇同士が触れた。

 麻衣さんからキスされたのは、これで二度目。

 付き合い始めてからの一か月、電話やメールはもちろん、食事に誘うのも、手を繋ぐのも、キスをするのも、俺からだった。

 そりゃ、付き合って欲しいって頼み込んだのは俺だし、仕方がないのかもしれないけど、麻衣さんが南事務所に行ってしまって、会おうとしなければ会えない状況に、情けないほど堪えてしまった。

 昨夜は、あまりの寂しさに我を忘れかけてしまった。

 そして、今、こんな風に麻衣さんの方からキスなんてされたら、理性は真昼の星となるべく飛び立った。

「麻衣さん!」

 両腕でがっちりと彼女を抱き締め、唇が触れると同時に舌をねじ込んだ。

「んっ……」

 実はこの一か月、毎日のように麻衣さんの夢を見ていた。

 彼女を組み敷いて、全身くまなく撫で回し、舐め回し、全力で彼女を揺さぶる夢。麻衣さんが俺に跨り、腰を振る夢。

 欲求不満の自覚はある。

 付き合い始めがあんなんだったから、妄想ばかりが膨らむ。

「つ……るもとく――」

「麻衣さん……」

 全身の血液が沸騰しそうだ。いや、沸騰したのかもしれない。

 身体が熱くて堪らない。

「好きだよ」

 彼女の舌に吸い付きながら、両手で胸を揉みしだく。昨夜も思ったが、重量が堪らない。指の間から溢れる柔らかさ。

「ちょ――、待って! 鶴も――!」

 麻衣さんに拒絶する隙を与えるまいと、唇を押し付ける。

 熱すぎる。暑すぎる。

 俺は自らシャツのボタンを外し、脱ぎ捨てた。次に、彼女の服の裾から手を忍ばせる。タンクトップか何かをスカートから引っ張り出して、素肌に触れた。

 ひんやりしていて気持ちいい。

 俺の手には収まりきらない乳房を揉み上げ、ツルッとした手触りのブラジャーを引き下げた。

 麻衣さんの身体がビクッと跳ねて、強張る。

 何も考えられなかった。

 麻衣さんは俺のキスから逃れようと身を捩るが、本気で嫌がっているようには思えず、俺はやめなかった。

 とにかく、熱い。

 興奮し過ぎて、息が苦しい。

 飢えた獣のように、俺は浅い呼吸を繰り返していた。


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