【コミカライズ】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

8.彼女の嫉妬と元カレとの再会-2

「気持ち良過ぎて思考がぶっ飛ぶくらい」

 瞼に、鼻にキスをする。

「俺が欲しくて堪んなくなるくらい」

 唇にキス。

 チュッと触れるだけ。

 何度も。

「俺はそれくらい、好きだよ」

 再び、麻衣さんをギュッと抱き締める。

「抱き合うだけでこんなんなるくらい、好きだよ」と言いながら、脚の間で存在感を露わにしたモノを、彼女の腹部に押し付ける。

「同じくらい俺を好きになってくれたら、麻衣さんもきっと抱き合うだけで濡れるよ?」

「それって、なんか、変態っぽい」

 ははは、と笑って、両手で麻衣さんの尻を鷲掴みにした。

「変態は変態でも、制服を着せたり鞭を持たせたりはしないから」

「なんか、喜べない」と、麻衣さんは不満そう。

 けれど、俺の手を払おうとはせず、俺の腕から逃れようともしない。それだけでも、進歩だ。

 昨夜は強引にし過ぎた。

 麻衣さんは嫌がりはしなかったが戸惑っていた。そして、あのまま続けても濡れなかったろう。

「ねぇ、鶴本くん」

「ん?」

 麻衣さんの尻の感触に夢中になっていると、麻衣さんが割と冷静な声で聞いた。

「元カノの話って、どんなことだったの?」

「え?」と、思わず尻を揉む手が止まる。

「飲み会がどうとかって言ってたから、誘われたのかと思って」

 鋭い。

 まさに、その通り。

 大学を卒業してからもグループでの飲み会は続けていて、俺はずっと欠席していた。他の奴らは別れても友達付き合いは続けていて、グループで恋人関係が続いているのは一組だけだった。

「元カノがいるから、飲み会に行ってなかったの?」

「……まぁ、それもある……かな?」

 出来れば、言いたくない。

 察してほしくて、尻揉みを再開した。が、すぐに断念することになった。

 両手で俺の胸を押し離し、麻衣さんが真剣な表情で俺を見上げる。

「なんか、誤魔化したよね」

「え? そんなこと――」

「誤魔化したよね!?」

「……はい」

 俺はため息をつきながら、髪を掻き上げた。

「引かれそうで言いたくないんだけど……」

「うん?」と、麻衣さんがじっと俺を見る。



 聞く気満々だ……。


 腹を括って話すしかないようだ。

「俺さ、真綾と別れた後、友達から『就活も上手くいってない上に女に振られた』って同情されてさ。ムカついて『好きな女が出来たから、真綾とは別れるつもりでいた』って言っちゃって。そしたら、『強がるな』とか『浮気してたのか』とか言われてさ。今の事務所から内定は貰えたけど、行政書士試験に合格しなきゃ意味ないからバイトも止めて勉強してたら、『真綾に振られて引きこもってる』とか言われるようになっちゃって。なんかもう、いちいち反論するのも面倒になって、連絡も取らなくなっちゃったんだよね」

「けど、ちゃんと試験に合格して就職したんだから、失恋で引きこもってたんじゃないって、友達にもわかったでしょ?」

「特に親しくしてた友達には本当のことを話してたから、そいつとは今も付き合いがあるんだけど、グループでってなると、なんか――」

「――そうしてるうちに、仲間内では『元カノに会わす顔がないから来ないんだ』って言われるようになった、と」

 コクン、と頷く。

「グループって、ワイワイしてる分には楽しいんだけどねぇ」

 もう一度、頷く。


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