【コミカライズ】私の身体を濡らせたら
7.彼の嫉妬と元カノとの再会-1
「こんなに会えないなんて……」
鶴本くんの息が耳にかかる。
「寂しくて死ぬかも」
私が社労士業務を覚えるために南事務所に行くようになって、二週間。鶴本くんとはすれ違いの生活を送っていた。
私の家から南事務所までは通勤時間が倍になり、私は鶴本くんより早く家を出て、遅く帰って来た。鶴本くんは、私と組んでいた時は分担していた書類作成業務を一人でこなし、忙しかった。
で、この二週間で会えたのは今日で三度目。一度は仕事帰りに食事に行き、一度は私が北事務所に顔を出した時にランチを食べた。
「麻衣さん……」
土曜日の夜。
私が仕事を終えて帰宅するなり、鶴本くんが飛び込んで来た。玄関先で抱き締められ、靴も脱げずにいた。
「鶴本くん。とりあえず上がろう」
「……」
私を抱く彼の腕に力がこもる。彼の鼓動が私の鼓動と重なる。
トクン、トクン、トクン……
同じ速度で、私よりも力強い鶴本くんの鼓動。
「麻衣さん……」
耳元で私の名前を囁き、背中で交差していた彼の腕が緩む。解放されるのかと思ったら、片手は肩に、片手は腰に添えられた。
「触って、いい?」
私の返事を待たずに、鶴本くんの手はそれぞれ私の胸とお尻に向かって下りていく。
「鶴本く――」
二週間ぶりのキス。
唇が触れ合い、わずかに離れ、また触れる。彼が舌先で閉じた唇をノックし、私は快く招き入れた。
「ふぅ――っ」
口の中をゆっくりと舐め上げ、それから、私の舌を絡めとる。重なり、吸い付き、互いの舌が弧を描くように踊る。
キスに気を取られている間に、鶴本くんの手が乳房を揉み上げ、お尻を撫でる。あっちもこっちも気になって、集中できない。
ただ、付き合い始めた日以来、鶴本くんがこんなに性急に求めてくることはなかった。
確かにこの三年、毎日のように顔を合わせていたのだから、そうでなくなって寂しいと言われるのは嬉しいし、私だってそう。けれど、先週、五日ぶりに鶴本くんとあった時、新鮮だった。
今日は会えるとわかって嬉しかったし、待ち合わせの場所に向かう間はそわそわした。顔を見たらドキッとした。帰り際には、寂しくなった。
唾液で唇の周りがべちゃべちゃになり、いい加減息苦しさに耐えられなくなった時、鶴本くんの手がニットの裾から素肌に触れた。同時に、お尻にある手が私を抱き寄せた。足の間に膝を挟まれ、身動きが取れない。
お腹周りをくすぐり、ゆっくりと胸を目指す手。キスが疎かになり、鼓動が加速し、血管が激しく収縮する。
ちょっと、待って。
どこまでスル気――?
玄関先だし、急がないって言ってたし、シャワー浴びてないし、ヒートテックのガードル穿いてるし――!
そりゃ、もう、色々な考えが頭を巡り、とにかく一旦落ち着くべきだと結論が出た。
私は両手で彼の肩を押し、唇が離れた瞬間大きく息を吸い込む。けれど、呼吸が整うまで時間がかかり、その間に鶴本くんはその場に跪いた。
私を見上げ、コーデュロイのガウチョを両手で下ろす。
「鶴本くんっ!」
私は慌ててガウチョを掴み、勢いよく引き上げた。
なんとか、ベージュのガードルは見られずにすみ、ニットの裾を直す。
「ちょっと、落ち着こう」
「無理」と即答すると、鶴本くんは再びガウチョに手をかけた。
「無理って、なんで!?」
「なんでも」
「いや、ちょ――」
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