【コミカライズ】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

5.濡れない身体-3

 私と鶴本くんで七歳違う。必然的に私と彼の妹さんとでは十歳近くかそれ以上離れている。



 私も二十代前半はこういうの使ってたなぁ……。



 三十歳を過ぎた頃から、化粧品にお金をかけるようになった。肌に優しいとか、美白とか乾燥肌用とか、気にするようになった。



 いくら若く見えても、身体はそうじゃないんだよな。



 シャワーを浴びていた数十分間で、ベッドは整えられ、朝食が出来ていた。

 コーヒーとシリアルとヨーグルト。

「すいません、こんなんしかなくて」

「ううん。私こそ、ごめんね。迷惑かけて。あ、洗濯するよ? シーツとか――」

「大丈夫です!」

 全力で拒否されて、私の勘が働いた。

「嫌な予感がするんだけど」

「何がです?」

 私は布団をめくり、シーツを剥がそうとした。

「ダメダメ!」

 鶴本くんが阻止しようとシーツを押さえ、私たちはシーツを引っ張り合う格好になった。

「何がダメなの」

「……シーツの替え! ないんで」

「夜までに乾くわよ。何なら、お詫びに新しいのを買って――」

「結構です!」

「けど、私昨日酔ってたから、お酒臭かったしシャワーも――」

「それがいいんです!」

 鶴本くんが思いっきり引っ張り、私はシーツが破けるんじゃないかと思って、手を離した。鶴本くんがシーツを丸めて抱える。

 子供が大切なおもちゃを取られないように抱えているよう。

 私は両手を腰に当て、仁王立ちした。

「Hなことに使うつもりじゃないでしょうね」

「使いませんよ!」

「じゃあ、どうしてそんなに洗うの嫌がるのよ」

「……」

 鶴本くんが気まずそうに視線を逸らす。

「鶴本くん!」

「麻衣さんの匂いで、さっきの夢の続きが見られるかもしれないじゃないですか」

 やけくそのように言った。軽く、涙目で。

 匂いだの夢だのと、くだらないことで必死になっている姿が、可笑しい。

「……変態」

「はぁ? どこがですか! 好きな人の匂い嗅ぎたいとか、好きな人の夢が見たいとか、普通に思うことでしょ」

「思っても本人に言う?」

「言わせたのは麻衣さんでしょ」

「とにかく! シーツそれは洗います!」

「ダメです!」

「鶴本くん!」

 見つめ合い、もとい、睨み合い、数秒。

 鶴本くんがまた、悪い顔をした。

 嫌な予感。

「洗うから、俺の頼みを聞いてください」

「は?」

「麻衣さん家、行きたい」

「はい?」

「麻衣さん家で、お家デートしたい」



 お家デート!?



 急に甘えた口調で言われ、私は返事に困った。



 デート……とかする……んだ?

 そういえば、私の不感症を治せるかの一年間、私たちの関係は?




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