【コミカライズ】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

2.OLC-4

 そうなのだ。

 チャラチャラしてそうなのに、仕事は真面目。打ち合わせでも熱心にメモを取っているし、積極的に仕事を覚えようとしている。

 本来であればとっくに教育期間なんて終わっているけれど、事務所全体の仕事を覚えたいからと、全員の担当業務を経験して、私のところに戻ってきた。

 私は、会社設立や業務拡大の依頼を担当している。

「カッコいいですか?」

 龍也に聞かれて、鶴本くんの姿を思い出した。

「一般的にモテるタイプだと思うよ? 背が高くて顔小さくて、よく笑うし、話しやすいし、よく周りを見て気が利くし」

「髪、ちょっとくせっ毛で、黒にグレーのラインが入ったバッグ持ってます?」

 ん? と思った。

 確かに、鶴本くんの髪は少しうねっている。バッグも龍也が言った通りのものを持っている。

「なんで知ってるの?」と、私は聞いた。

 みんなも同じ疑問を持ったはず。

「ホテルで麻衣さんを待ってる時、見たんですよね」

「え?」



 ホテル……で?



「俺、麻衣さんが食事に行った時にホテルに迎えに行ったんですけど――」と、龍也がみんなに説明する。

「麻衣を送ってくれって、俺が頼んだんだよ」と、陸が補足説明をした。

「麻衣さんが出てくる直前にその男が出て来たんだよ。やたら慌ててたから、憶えててさ。麻衣さんが俺の車に乗るところも見てた気がするんだよな」



 まさか……。

 いや、ないでしょ。



 いくら責任を感じても、そこまでするとは思えない。

 それに、似たような男なんて、世の中どれほどいることか。

「まっさかー」と、私は笑って言った。

「食事の後、後輩に何か言われた?」

 千尋に聞かれて、考えた。

「何も?」

 そう。何も言われていない。

 むしろ、聞かれても不思議はなかったのに。

「ふぅん……」



 まさか……ね?




「彼女に逃げられた男だったのかな」と、龍也が言った。

「麻衣は追いかけられなくて良かったねぇ」

 千尋が少しぎこちなく、言った。

「ま、何にしても、あの男とはもう会うなよ」

 陸の言葉に、私は頷いた。

 集まって一時間半が過ぎた頃、さなえのスマホが鳴った。

「もしもし。……いいえ。…………わかりました。すぐに迎えに行きます。……はい。すみません。……はい。お願いします」

「母さん?」

 電話を終えたさなえに、大和が聞いた。

「うん。大斗がぐずってるって。先に帰るね」

「俺も――」

「いいよ、大丈夫。お義母さんが家まで送ってくれるって」

 さなえはバッグとジャケットを抱えて、立ち上がった。

「ごめんね、みんな。また、ね」

「気を付けてね」

「さなえ――」

 見送ろうとして立ち上がろうとする大和の肩に手を置いて、さなえは阻止した。

「大和、飲み過ぎないでね」

「ああ」

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