神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

第八話 石製アーティファクトを作る

 フェアリーノームを連れて森の中を歩く。
 イーサさんも一緒だが、なぜかフェアリーノームが真ん中に入って牽制しているので隣に立って歩くことができない。
 イーサさん曰く仲間意識が非常に強いらしい。

「あー、そうだ。名前つけたほうがいいかな? 名前ほしい? いらない?」
 フェアリーノームに名前が欲しいか聞いてみると、コクコクと首を縦に振ったので名前を付けることにした。

「う~ん。目の色が青いから【ミレ】で」
 ボクが名前を言った瞬間、フェアリーノームのミレが一瞬光った。

「あれ? ミレ? なんか耳生えてるけど」
 恐る恐るミレを見てみると、頭の上には狐耳が生えていた。

「ということは……」
 ミレのお尻を見てみると、服の裾からは可愛らしい狐の尻尾が顔を覗かせていた。

「ど、どういうこと!?」
 ミレは自分に起こった変化を興味深そうに見ている。
 自分の尻尾を見つけては追いかけてくるくる回ったりしていて非常に可愛らしい。

「眷属……になったってこと?」
 よくわからないけどとりあえずそうなのだろう。
 後で調べられないか確認はしてみるけど……。

「へぇ。こういう変化をするのか。でも見た限り遥の眷属になったってことで間違いはなさそうだね」
 イーサさんも興味深そうにミレを見ている。

 というわけで、さっそく変化を解いて妖狐の姿になってみると、ミレが驚いたような顔をした。
 それからボクの尻尾を触って嬉しそうに抱き着く。

「ミレはボクとお揃いだね。嬉しい?」
 ミレはコクコクと頷いてぴょんぴょんと大ジャンプを繰り返した。
 どうやら喜んでもらえたようだ。

 いざ再開となったのでボクの耳と尻尾は隠したものの、ミレは耳と尻尾を隠そうとしない。
「ミレ、隠さないの?」
 ミレは首を縦に振る。
「そっか。でも人間のいるところに行ったら隠してね?」
 ミレは首を縦に振った。
 物わかりのいい子で助かる。

「この近くにはイノシシもいるらしい。周りに注意して動くんだよ」
「は~い」
 言われた通りに周囲を確認するが、気配を追うという芸当はできない。
 みんなどうやって覚えているんだろうか。

「遥、ミレ。近くにイノシシがいる。注意しろ」
 イーサさんの言葉を聞いてボクたちは周囲の様子を伺う。
 しかしどこにいるかはわからない。
 茂みもあるので見通しにくくて仕方ない。

「ミレ、場所わかる?」
 なんとなく聞いてみると、ミレはコクコクと頷き前方を指さした。
 じっくり見てみる。

「あ、いた。って見えづらっ」
 前方のかなり奥、茂みと木の間に鼻が突き出ていた。
 いや、これどうやってみつければいいんだろ。
 狩り初心者のボクには見分けが全くつかないのだ。

「なに、慣れれば大丈夫さ。ミレは敏感なんだろう」
 イーサさんの言う通りかもしれない。
 ミレのようになるには繰り返して覚えることが大切なのかも。

「さて、遥はどうする?」
「うーん。ボクの力だとまだ狩れないので……ミレ、お願いしていい?」
 ミレは頼られたのが嬉しいのか、コクコクと頷くと斧を握りしめ、身を屈めた。
 じりじりと近寄ってから一足飛びに飛んだかと思うと、そのままイノシシの頭に斧を突き立てた。

「プギイイイイイ」
 イノシシ大暴れ。
 ミレはぱっと斧を手放すと、飛び蹴りを繰り出して斧の持ち手に衝撃を与えた。
 イノシシはそのままぴくぴくと数度痙攣すると、動かなくなってしまった。
 おそらく一撃目で致命傷を与えたのだろう。

「おぉ、すごいね。イノシシの頭は固いのに一撃でかち割ったのか」
 イーサさんも驚いてるけどボクも驚いた。
 フェアリーノームは勇敢なんだなと改めて感じる。

 仕留めたイノシシを嬉しそうに担ぎながら、ミレ笑顔の凱旋。
 ボクは思わず拍手を送ってしまった。
 うーん、このままボクだけ何もできないのは問題だよね……?

 早速集めた素材から何かいい物を作ろうと思った。
 えーっとなになに? 石と木材からだと……おぉ、石槍が作れるのか。
 ふむふむ、ええ~っと、少し材料多めにして、むむ? 魔力を追加とな?
 よくわからないけど、新しく魔力を追加するという項目があったので追加してみた。
(イノシシを一撃で倒せるくらい鋭利で硬くてちょっとでも命中しますように)
 すると、体から何かが失われる感覚と同時に手元に見るからに鋭利そうな石槍が現れた。

「イーサさん、こんなの作ってみました」
 早速イーサさんに見せると驚いたような顔をした。

「さすがは父上の孫というだけあるのか。この石槍には【鋭利】と【硬化】と【命中補正】が付いてるぞ」
 むむ? 【命中補正】とな? たしかにできるだけ当たるようにとは考えていたけど。

「ちょうどいい。もう一頭イノシシがいるから相手してみるといい。打ち漏らしたら助けに入るからね」
 イーサさんからお許しが出たので、早速イノシシに対して使ってみることに。

「ミレ、イノシシどのあたり?」
 ミレはそっと指をさした。

「いた。ありがとう、ミレ」
 ボクはミレにお礼を言うと、そのままできる限り狙いを定めて投擲する。

 ボクの手から離れた石槍は一瞬速度を失って落ちそうになったが、なぜか持ち直してイノシシめがけて飛んで行った。
 そして、ザシュっと頭蓋にヒットし、そのまま奥深く突き刺さってしまった。
 何が起きたのか。

「イーサさん、今何が……?」
「まさか自分で軌道修正するとはなぁ。私が鑑定した時も面白いものができたと感じていたが、まさか魔法の槍になっていたとは」
 イーサさんは感慨深げだ。

「遥、試しに戻れって石槍に言ってみてくれないか?」
 イーサさんのリクエストに応えて「戻れ」と言ってみる。
 すると、イノシシに突き刺さっていた石槍が消えてボクの手元にもどってきたではないか。
 え? どういうこと?

「どうやら一瞬速度が落ちた時に魔法の槍に変化したようだね。いや、これは面白い」
 なんだかよくわからないけどすごい槍ができたようだ。
 石製だけど……。

「ちなみに、作るとき何か想像したことはないかい?」
 と聞かれたので、ちょっと思い出してみる。

 命中補正をつけるときにイメージしたのは北欧神話に出てくる主神オーディンの使うグングニルだ。
 あれってたしか、必ず命中するし必ず戻ってくるんだっけか。
 あ、原因はこれか。

「えっと、地球の北欧神話っていう神話の武器をモデルにしました」
 これは余計なことをしたかな?

「なるほど、それでか。これはもう一種のアーティファクトだね。創造神の力がこういう風に作用するとはね」
 どうやら控えめに言ってやらかしたようだ。

 こうしてボクは石製のアーティファクトを作り出してしまった。
 まぁ石製なのでいつかは折れると思うけど。
 不壊とかはつけてないし……。

「何はともあれ、イノシシを狩れるようになったのはいいことだね。獲物を回収したら次に行こう」
 イーサさんはなんだか嬉しそうだ。
 ボクも嬉しいけど、ボクの実力ってわけじゃないんだよね……。
 もうちょっと工夫できるように頑張ってみようかな。

 獲物を回収して一息ついていると、不意に袖口をクイクイと引っ張られた。
 何やらミレが物欲しそうに見ているのでどうしたのか聞いてみることにした。

「ミレ? 何か欲しいの?」
 ミレはボクの石槍を指す。
 これが欲しいのかと思ったけど、石槍を指して手持ちの斧を指すので同じようなものを作ってほしいということなのだろう。

「まっててね~。同じようなものに斧はないなぁ。ハンマーでもいい?」
 木槌のようなものを地面に描くとミレは激しく頷いた。
 じゃあこれにしよう。

「じゃあさくっと作っちゃうね」
 というわけで同じ北欧神話から似たような武器でミョルニルをイメージして石槌を作り出した。
 雰囲気が石槍に似ているので、成功しているはずだ。

 ミレに出来上がった石槌を手渡すと、嬉々として森の奥へと走っていった。
 そしてイノシシを見つけてこっちにおびき寄せてくると、足止めをしてから石槌を投げつけた。
 あえてちょっと離れた場所めがけて投げられた石槌は、自動で軌道修正すると足止めされたイノシシの頭にヒットしそのままかち割った。
 どうやらイメージ通りにできたようだ。
 ミレも大はしゃぎである。

「いやぁ、量産しないでほしいなぁ」
「あ、ごめんなさい」
 イーサさんは若干困惑気味だった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品