神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

第四話 ギルドに登録しようその2

 さて、早速猟師ギルドに新規登録します。
 張り切ってまいりましょー!
 ついさっきまで商業ギルドにいたボクは、保護者のイーサさんと一緒に猟師ギルドへと来ていた。
 ここでは魔物の素材や動物製品などの売り買いができるのだ。
 ついでにハンティングクエストなる依頼もあったりするのでやってみて損はないかもしれない。
 同じようなものは商業ギルドにもあるらしく、そちらは納品がメインとなるようだ。

「らっしゃい! 猟師ギルドへようこそ!」
 八百屋かな? もしくは魚屋。
 猟師ギルドに入ると妙なノリでボクたちは迎えられた。

「この子の新規登録をお願いしたいのですが」
 イーサさんは商業ギルドのときと同じくボクを軽く押してずいっと前に出す。
 知らない人はあまり得意じゃないので、できればやめてほしいけどね。

「ほぉぅ。随分と可愛い子だな。どっかの良家のお嬢様かい? それともお姫様か何かかい?」
「いえ、私の姪です。少々事情があって学ばせようと思って狩りを教えているんです。今日はそのための登録にきました」
「へぇ。こんな可愛い子だったら狩りなんてしなくても引く手数多だろうに。まぁ嫁に行かせたくないのもわかるがね」
 猟師ギルドのにぎやかな受付のおじさんは、見た目だけだと熊か山賊のような姿をしていた。
 控えめに言って強そうだ。
 まぁ熊おじさんと呼んでおこう。

「お? なんだなんだ?」
「おいおい、ちょっと小さいけどめちゃくちゃ可愛い子がいるじゃないか」
「あれ? 隣にいる人はアーサーさん? じゃあアーサーさんの子供?」
「いや、姪って聞こえたぞ。いいな~。あんな可愛い子が身内にいるなんてよ」
「彼氏いるのかな?」
「なにお前、アーサーさんの彼氏になりたいのか?」
「いやいや、連れている激かわ女の子のほうだよ」
「ばっか、どう見てもまだ子供だろ? お前そういう性癖があるのか?」
「ちげーって、あの子が特別なだけだっつーの」
「お前、気持ち悪いな」
 何やらギルドの奥のほうが騒がしい。
 なんなんだろ? ちらちらこっちのほうを見てくる人が多い。
 まぁイーサさんは美丈夫だし強いから見ちゃうのもわかるけどさ。

「あーすまん。俺が騒いだばかりに。登録のほうはサインして手数料を払ってくれれば問題ないぜ。ランクを上げたいっていうなら色々依頼をこなして実績作ってくれや」
 熊おじさんはボクの目の前に紙と羽ペンを出してくれた。
 かきかき、かきかき。

「見た目に違わずきれいに書くなぁ。これなら問題ないか。あー、一応言っておくけど男どもには気をつけろよ? 色々早いからよ」
「うっせーぞ!」
 熊おじさんの言葉にすぐに文句が飛んできた。
 何が早いんだろう? 手かな?

「ははは。相変わらず賑やかですね」
「賑やかっつうかうるさいだけだな。クソガキしかいねえから」
「黙ってろ、このハゲ」
「おいてめえ、このふさふさを見てもまだハゲって言ってんのか? 叩き出すぞ」
「やべぇ、おやっさんが怒った! おい、逃げるぞ」
 熊おじさんを煽った数人の男性が慌ててギルドから出て行った。
 どうやら早いのは逃げ足だったようだ。

「たくよう。まぁ、あんなんでも腕はあるからな。ともかくだ、細かいルールはこの冊子を読め。何か獲物を狩ったら気軽に売りに来いよ」
 熊おじさんはため息を一つ吐くと、ボクに一冊の冊子を手渡しながらそう言った。
 なんだか賑やかなところだ。
 男同士のほうが楽なボクとしてはありかも。
 でもなんかちらちら見られて落ち着かない……。
 とりあえずもらった冊子を見ながら重要なことだけを確認していく。
 
 ……。
 うん、猟師ギルドは普通の猟師だけじゃなくてモン〇ターハ〇ターでもあるってわけだ。
 ちなみに読み方は【りょうし】でも【ハンター】でもいいらしい。
 一応正式には【ハンターギルド】なのだとか。

「まぁアーサーさんといれば問題はないと思うけど、くれぐれも、お嬢ちゃん一人だけでうろうろするなよ? さっきの感じじゃ狙ってるやつは多そうだしよ」
「だ、大丈夫、です。アーサー叔父さんを守ります」
 ちょっと詰まったものの言いたいことは言えた。
 でもなぜか熊おじさんは頭を抱えてしまった。

「あぁ、まぁ。アーサーさん。くれぐれもな」
「わかりました」
 何が何だかよくわからないけどわかったことにしておこう。

 猟師ギルドを出ると外はすっかり賑やかになっていた。
 ボクたちがここに来た時は朝方だったので比較的静かなほうだったが、今は日も高くなったせいか人が多くなっていた。

 アルテ村は村にしてはそこそこ大きいらしく、中央に市場のようなものができている。
 どっちかというと街に近い気がするけど、防壁になりそうなものがないので村という扱いなんだろう。
 もしかしたら防壁の有無で村か街かが分かれるのかもしれないからね。

「アルテ村は昔は本当に小さな村だったんだ。それが魔物素材がよく手に入る場所があるということで少しずつ大きくなっていったんだよ。まぁ街になれるかはまだわからないけどね」
「大きくなって街になったら、元々住んでいた村人は嫌がるかもしれないですね」
 ふとそう思った。
 はたして、村が大きくなることはいいことなのだろうかと。

 この村には日用品を作る鍛冶屋はあるけど、武具屋や武具鍛冶屋はいないそうだ。
 あくまでも出先機関があるだけで、あとは酒場と宿があって市場があるくらいらしい。
 市場の成り立ちは意外と古く、かれこれ百年前からやっているそうだ。
 最初は行商市。
 ある程度収穫とかが増えてからは村人同士での物々交換市となったそうだ。
 今は物々交換、もしくは金銭での取引になっているらしい。

「村にも歴史あり、ですね」
 何となくそう思った。
 ついでになぜだかイーサさんがボクの頭を撫でてきた。
 訳が分からない。

「お昼を食べたらまた狩りに行こうか。今度はもう少し素材を集めてみよう。それと、父上のスキルの使い方も教えるよ」
「はい。でも、神様にそのスキルについて聞いたのですが、よくわからないんですよね。今聞いてるのは何でもできるっていう【アイテムクリエイト】と【空間収納】と【空間転移】と【エリアクリエイト】っていうスキルですね。どう使うんでしょうね」
 多分作り出すことができるのだろう。
 でも、どうやって?

「父上のスキルは創造に関することだからね。やり方はゆっくり教えるよ。それと、神様じゃなくて【お爺様】か【お爺ちゃん】って呼んであげてほしいな。きっとすごく喜ぶよ」
 イーサさんはそう言うけど、初めて会った人なのでそういう風に呼ぶ踏ん切りがつかない。
 でも、あとで頑張って呼んでみようかな。

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