ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハカタ

味噌村 幸太郎

BLの境界線、テクニック!


 ヤマジュンで盛り上がる毎日だった。
 ボーくんは相変わらず、やることないので、ずっと愛読していた。

 たまに見学に来る人がいたのだけど、中には未成年もいた。
 確か、18歳にならないと通所できないルールなんだけど、まだ17歳の子もいた。

 だから、その時だけは、ボーくんもパタンと本を閉じてしまった。
 それを後ろから見ていた所長の天拝山さんが苦笑していた。

 終業後、天拝山さんがヤマジュンを見て、呟く。
「へぇ、こんなのがあるんだぁ。これってさ、BLなの?」
 すると熟田さんが、ぶちギレる。
「違いますよ!  これはBLじゃないっす!」
 僕と熟田さんの間では、認識に誤差があったようで、僕は疑問をぶつけてみた。
「え、BLじゃないんですか?」
 熟田さんは激しく否定する。
「違います! こんなのとBLを一緒にしないでください!」
 酷い言い方だと思った。
 ヤマジュン信者としては。

「味噌村さんは、これをBLだと思っていたんですか?」
「はい、違うんですか?」
「全然違います! これはガチモンです! 見てください。ここに18禁マークがついてるでしょ? でも、BLは全年齢です! 普通の書店で買えます!」
「なるほど。ん?  ということは、僕の娘って小学生なんですけど、買えるってことっすか?」
 熟田さんは鼻息を荒くして、答える。
「もちろん買えます! 女子小学生でも、普通に書店で買えるのがBLっす! 私も小学生の時に知って買ったんすから!」
「な、なるほど……」

 隣にいた天拝山さんも犬ヶ崎さんも、僕と同じく妻子持ち。
 お子さんはまだ幼い女の子だ。

 熟田さんは興奮した様子で、熱く語り始める。
「だってあれですよ。私も『イナ●レ』のアンソロジーとかで知って、小学生の時にめっちゃハマッたんすから。小学生でBLは普通です!」

 僕は実母が腐女子なので、そういうのに抵抗はなかったが……。
 近くにいた天拝山さんと犬ヶ崎さんは、言葉を失っていた。

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