【異能な転生者】主人公が成長していく物語
第4 話 どうする?
第4話 どうする?
ケインが村に帰ってこなくなって数年の時が流れた。
ケインが好きだったリズも結婚して村から出て行ったきり、帰ってくることもなかった。
噂ではリズは、顔は美人だけど、性格から愛想もなかったので暴力を振るわれていると言われていた。
ケインが帰ってきて、リズと結婚していたらなと考えることもあったけど、親がケインとの結婚を許すことはなかったかも。
いくら冒険者になってお金を持っていたって‥‥‥
二人ともが不幸になってしまった。
もうケインも、この世の中にいないのかぁ〜、はぁ、なんだか心に冷たい風が吹く。
寂しいな‥‥‥
*
ケインがいなくなってから俺が13歳の時に村で大変な災害が起きる事になる。
そうだ、俺は、この日から変わってしまった。
このできことで村も一変する事になる。
*
俺とアリシアは、普段通り、家の手伝いを終わらせて二人で遊んでいた。
「クリス、また、あの木の上まで競争しましょうよ」
「えっ、またぁ」
「なに言ってんのよ、いい、いくわよ」
「よーい、スタート」と言う間も無く言った本人のアリシアが俺よりも先に走り始める。
アリシアと二人で木まで走り始めたけど、俺もアリシアについていけるようになってきた。
でも、まだ、アリシアの方が走るのは早いから木の根元までアリシアが一番に到着した。
「はぁ、はぁ、まだまだね、クリス」
「うん、ハァ、ハァ、まだアリシアの方が早いや」
「よし、じゃ、今日は木の上まで登る競争よ」
「よし、今度は負けないぞ」
「よーい、スタート」とアリシア
「ち、ちょっと、待ってよ、まだ、息が、ハァ、ハァ‥‥‥」
「 もう、クリスったらだらしないんだから」
何も答えないでいると、勝手にアリシアが先に木の上に登りだす。
俺は息が収まるのを待ち、アリシアのあとについて木を登っていく。
そして先に登ったアリシアが枝の上に座るのが見えた。
俺は木に上るのは少しは得意だけど、それでもアリシアには敵わない。
俺の、ようやく枝に辿り着き、アリシアの横に座ることができた。
村の周辺には木がいっぱいあるけど、登った木は、大きさも高さも村では一番の木だ。
村で一番の木だからと多くまで見渡すことができるので、俺たち二人は、よくこの木に登っている。
「ここから見える景色は、いつ見てもキレイね、クリス」
「うん」
いつも見ている景色だけど、飽きることがない景色だし、夏もで冬でも景色は変わってきたり、生えている木が倒れてしまつたり、木が伐採させることもあるから、見ている景色は時々、変化する。
緑が多い時もあれば、葉っぱが落ちて木の枝ばかりになっている季節もあるから。
「今日は天気もいいし、澄み渡っているから、遠くまで見えるわね」
「うん、本当だね」
「はぁ、気持ちいい風が吹いているわ」
「うん」
しばらく景色を楽しんでいると、ふと見ると、森から黒い人影のような塊が出てきた。
まだ、遠くて良くわからない。
アリシアも俺も目は良い方だと思う。
でも、まだ遠くて黒い塊しか見えない。
「ねぇ、クリス、あれってなんだと思う」
「旅人か冒険者かな?」
「でも、あそこに、道はないよ」
「‥‥そうだね」
「体を横に揺らしながらヨタヨタ歩いてきているね」
徐々に二人の目にも見えてきた。
「あれは、ま‥もの?」と俺
「大変だ」アリシア
「早く監視塔に知らせないと」村には危険な魔物が来ることも想定して櫓があるけど、そこには、いつも一人はいることになっている。
俺たちは、櫓の人に気がついてほしくて大声を上げる。
二人して「お〜い」
「お〜い」と言うけど人の動きがない。
監視塔の櫓は、人がいることもあるけど、居眠りしていることが多い。
またはトイレに行っているか‥‥‥、どちらなのか、わからないけど、とにかく人がいないみたい。
「本当にもう、人がいないみたいね」
俺たちは木から降りる前に、見てみると真っ黒い魔物が4匹いるみたいだ。
それも俺たちの方じゃなく村への入り口に向かって近づいている。
「大変だ」俺たちは急いで木から降りていくけど、慌てて降りたから、最後の方は木から落ちてしまったけど、枯れ草のおかげで怪我はなかった。
「大丈夫、クリス」
「うん、大丈夫、急ごう」と言って魔物が来る前に村に入らなければ‥‥‥
俺たちは走ったことがない速さで走って魔物よりも早く村の門をくぐって村長の家に行った。
そして、すぐに村長の家のドアをたたいた。
「村長さん、大変だ〜」ドンドンと叩いても村長はすぐには出てこなかった。
「なんじゃ」
「村長さん、魔物がいる」
「お前たち、嘘を言うんじゃないぞ、まったく、遊ぶんだったら、他所で遊んでくれ」
「本当だよ」
「今まで、村に魔物が出たことはないんじゃ」
出てきた村長に、2人は魔物が近づいていると言ったが、村長は、子供のいたずらと受け取って、まともに話を聞いてくれなかった。
「本当なんだよ、村長さん」
「そうよ信じてよ」
こんなことやっていたら時間ばかり過ぎてしまう。
俺たちも急から言葉が出てこない。
そんなことを考えている時間はなく、横目でみると魔物が村に入ってきた。
村長は玄関の扉があるため、魔物は見えない。
そこに大きな声が響いた。
「フゴーッ」
村長は声に驚いて扉から出て声がした方を見ると、村長の目が大きく見開かれる。
「ま‥ものだ」
村長も魔物を見て、驚いて、腰が抜けたように座り込んでしまった。
すぐに行動することができなかった。
村長が気を取り戻した時には、歩いている村の人を魔物が襲い始めたり家を壊したり、鶏小屋を破壊していたところだ。
大きな声が響いて、やっと櫓の人が目を覚ましたのか、鐘が鳴り始める。
「カン、カァン」
「魔物だ~逃げろ」
それだけ、鐘を鳴らすと、登った人も下りてきて、逃げてゆく。
この村は、大きな村じゃないので、人は50人もいない。
しかし戦える人は多くはない。
もし、村に冒険者でもいれば、立ち向かってくれたかもわからないが、今は冒険者はいない。
普通であれば田畑を荒らしている魔物が出ていれば、冒険者ギルドに依頼を出すためには、お金を用意することから始める。
ギルドに依頼を出して、依頼を受けた冒険者が討伐してくれるが、料金が安いと依頼を出しても、受ける冒険者がいないので、被害も拡大してしまう。
物音で家から出てきた村人が魔物に襲われている。
「うわ〜、助けてくれ〜」
「殺されるっ」
「キャ〜」
村人が1人、また1人と魔物が持っている、こん棒で叩かれている。
叩かれた村人は、血を流しながら動くことはない。
「 ぎゃぁー」
「わー助けて」
いろいろなところで叫び声がしている。
倒れた村人を魔物は、さらに数回、こん棒で叩いている。
こんな状態では、生きている可能性は低い。
逃げ遅れた村人が殺されていくのを、2人は見る事しかできないでボー然と立ち尽くすしかない、足が動かなかった。
立ち尽くしている2人のところまで、魔物が近づいてきて、村長や大人たちも2人を守ってくれていたが、大人は魔物に簡単に、やられてしまっていた。
村長さんから血が流れていく‥‥‥
今まで話していた村長が死んでいく。
それを見た二人はパニックになった。
俺たちは無我夢中で走り始めて、村の外になる木に登ろうと思った。。
しかし、村の門を出たところで魔物が1匹いて俺たちを追いかけ始める。
俺もアリシアも魔物を見ることが初めてなので、この魔物がなんなのか、わからない。村長も魔物としか言わなかった。
魔物が「ゴブ、ゴブゴブ」と大きな声で威嚇してきた。
2人は、足が震えてきて、動けなくて木に向かって走ることもできなかった。
顔にも汗が流れてきて目に入ったが、魔物から目を離す事ができない。
背中は汗で洋服が重たくなっている。
魔物が2人の目の前に近づいた時に、見ているだけで、足を動かすことさえ忘れてしまうほど恐怖が2人を襲う。
さらに震えがきて膝がガクガクして動かす事も出来ずに、そこに立ち尽くすことしかできなかった。
動くことができない二人に魔物が近くなる。
魔物は俺たち二人の目の前まできて右腕に持っている棍棒を大きく振り上げる。
逃げたいと思うけど、足が動かないし、振り上げた棍棒を見ることしかできない。
魔物は振り上げた棍棒を一気にすごいスピードで俺たちに向けて振り下ろした。
棍棒はアリシアに当たり、アリシアが吹っ飛んでいく。
アリシアはゴロゴロと転がりながら倒れ込む。頭付近から血が出てきているみたい。
俺は、それを見て恐怖で動くこともできない、ただアリシアを見ているだけ。
アリシアが転がるのをスローモーションのように見ることしかできなかった。
あまりの衝撃のため、俺は声を出して叫ぶことさえできない。
叫んでも誰も助けてくれないのに‥‥‥声が出ない
アリシアを棍棒で殴った魔物は、今度は俺を見た。
俺も魔物の動きに目を奪われて、今度は自分だと悟った。
俺は体がガタガタ震え出して動くこともできない。アリシアも心配だ。
『‥‥‥』 頭では考えることができない。
今度は魔物が俺に向けて棍棒を構えて、上から力の限り振り下ろす。
それを、俺は、どうしてかわからないけど、スピードがゆっくりなように感じて、その棍棒は回避することができたが、棍棒は地面にめり込んでしまったみたいで、魔物が棍棒を抜こうとしている。
棍棒を地面から抜いた魔物は、土がついた棍棒を構えて、また振り下ろそうと構えた。
今度は、俺に向けて正確に振り下ろされていく棍棒に、俺はなすすべもなく肩に棍棒が当たってしまう。
咄嗟に横に避けて衝撃を緩めることができたけど、痛みで立っているだけで精一杯だ。
フラフラする。
魔物は興奮しているような感じで荒い息を吐いて、よだれを垂らしていた。
「グワ〜ッ グワッ」と一声吠えた。棍棒が当たったから喜んでいるみたい。
俺は痛みで肩から腕にかけて力が入らない。
腕を動かすことができない痛みが走っている。
俺はフラフラと傷口を抑えながら立っているだけ。
ぼーっと立っている俺に向かって魔物は二撃目を加えようとしている。
二撃めは簡単に俺の頭を横から当てることができて、俺もアリシアと同じように体ごと吹き飛ばされる。
薄れ緩く意識、地面の冷たさを感じて、俺の体温も下がってきたみたい、目が霞む、体に力が入らない、動くこともできない。
もう目が開けていられない、このまま、死んじゃうのかな、遠くでアリシアが倒れているのが見える。
アリシア‥‥‥助けなきゃ‥‥‥アリシアだけでも、生きててほしい‥‥‥
そう願った俺は、どこかからかわからないけど、声を聞いた。
「クリス、もう少しですよ」
「だれっ」
「あなたの運命は、こんなところで終わりではありません」
「誰なの?」
「今は言えませんが、あなたは運命の子」
「えっ、俺が運命の子って?」
「そうですよ、クリス、あなたにも能力がありますけど、前世のアルベルトの能力を上げましょう」
「えっ、誰だって」
「そのアルベルトは不運のもとに死にましたが、本当は、そこで尽き果てることはない運命でした、運命を果たさずに死んだアルベルトの能力と記憶を、クリス、あなたにもらってほしいのです」
「なんだかよくわからないけど、アリシアを助けられるならなんでもするよ」
「はい、これで契約成立ですね」と声は言った。
「現生では、あなたには過酷な試練が訪れます、でもあなたなら、試練も乗り越えていける信じていますよ。
その試練の末にあなたが手にできるものがあります。
あなたが試練を乗り越えてこそ、手に入れられるものです」
「試練?」
「そうです、その試練を乗り越えなくては、この星の未来は、ありません。
あなたはこの世界で、ただ一人の人になることができ、世界を救うでしょう。
試練を乗り超えなさい、クリス‥‥‥クリス‥‥」と響くように言って声は聞こえなくなった‥‥‥
‥‥‥俺は目を再び開けることができた。
冷たい地面から横たえた体を再び起こす力が湧き上がってきた。
ケインが村に帰ってこなくなって数年の時が流れた。
ケインが好きだったリズも結婚して村から出て行ったきり、帰ってくることもなかった。
噂ではリズは、顔は美人だけど、性格から愛想もなかったので暴力を振るわれていると言われていた。
ケインが帰ってきて、リズと結婚していたらなと考えることもあったけど、親がケインとの結婚を許すことはなかったかも。
いくら冒険者になってお金を持っていたって‥‥‥
二人ともが不幸になってしまった。
もうケインも、この世の中にいないのかぁ〜、はぁ、なんだか心に冷たい風が吹く。
寂しいな‥‥‥
*
ケインがいなくなってから俺が13歳の時に村で大変な災害が起きる事になる。
そうだ、俺は、この日から変わってしまった。
このできことで村も一変する事になる。
*
俺とアリシアは、普段通り、家の手伝いを終わらせて二人で遊んでいた。
「クリス、また、あの木の上まで競争しましょうよ」
「えっ、またぁ」
「なに言ってんのよ、いい、いくわよ」
「よーい、スタート」と言う間も無く言った本人のアリシアが俺よりも先に走り始める。
アリシアと二人で木まで走り始めたけど、俺もアリシアについていけるようになってきた。
でも、まだ、アリシアの方が走るのは早いから木の根元までアリシアが一番に到着した。
「はぁ、はぁ、まだまだね、クリス」
「うん、ハァ、ハァ、まだアリシアの方が早いや」
「よし、じゃ、今日は木の上まで登る競争よ」
「よし、今度は負けないぞ」
「よーい、スタート」とアリシア
「ち、ちょっと、待ってよ、まだ、息が、ハァ、ハァ‥‥‥」
「 もう、クリスったらだらしないんだから」
何も答えないでいると、勝手にアリシアが先に木の上に登りだす。
俺は息が収まるのを待ち、アリシアのあとについて木を登っていく。
そして先に登ったアリシアが枝の上に座るのが見えた。
俺は木に上るのは少しは得意だけど、それでもアリシアには敵わない。
俺の、ようやく枝に辿り着き、アリシアの横に座ることができた。
村の周辺には木がいっぱいあるけど、登った木は、大きさも高さも村では一番の木だ。
村で一番の木だからと多くまで見渡すことができるので、俺たち二人は、よくこの木に登っている。
「ここから見える景色は、いつ見てもキレイね、クリス」
「うん」
いつも見ている景色だけど、飽きることがない景色だし、夏もで冬でも景色は変わってきたり、生えている木が倒れてしまつたり、木が伐採させることもあるから、見ている景色は時々、変化する。
緑が多い時もあれば、葉っぱが落ちて木の枝ばかりになっている季節もあるから。
「今日は天気もいいし、澄み渡っているから、遠くまで見えるわね」
「うん、本当だね」
「はぁ、気持ちいい風が吹いているわ」
「うん」
しばらく景色を楽しんでいると、ふと見ると、森から黒い人影のような塊が出てきた。
まだ、遠くて良くわからない。
アリシアも俺も目は良い方だと思う。
でも、まだ遠くて黒い塊しか見えない。
「ねぇ、クリス、あれってなんだと思う」
「旅人か冒険者かな?」
「でも、あそこに、道はないよ」
「‥‥そうだね」
「体を横に揺らしながらヨタヨタ歩いてきているね」
徐々に二人の目にも見えてきた。
「あれは、ま‥もの?」と俺
「大変だ」アリシア
「早く監視塔に知らせないと」村には危険な魔物が来ることも想定して櫓があるけど、そこには、いつも一人はいることになっている。
俺たちは、櫓の人に気がついてほしくて大声を上げる。
二人して「お〜い」
「お〜い」と言うけど人の動きがない。
監視塔の櫓は、人がいることもあるけど、居眠りしていることが多い。
またはトイレに行っているか‥‥‥、どちらなのか、わからないけど、とにかく人がいないみたい。
「本当にもう、人がいないみたいね」
俺たちは木から降りる前に、見てみると真っ黒い魔物が4匹いるみたいだ。
それも俺たちの方じゃなく村への入り口に向かって近づいている。
「大変だ」俺たちは急いで木から降りていくけど、慌てて降りたから、最後の方は木から落ちてしまったけど、枯れ草のおかげで怪我はなかった。
「大丈夫、クリス」
「うん、大丈夫、急ごう」と言って魔物が来る前に村に入らなければ‥‥‥
俺たちは走ったことがない速さで走って魔物よりも早く村の門をくぐって村長の家に行った。
そして、すぐに村長の家のドアをたたいた。
「村長さん、大変だ〜」ドンドンと叩いても村長はすぐには出てこなかった。
「なんじゃ」
「村長さん、魔物がいる」
「お前たち、嘘を言うんじゃないぞ、まったく、遊ぶんだったら、他所で遊んでくれ」
「本当だよ」
「今まで、村に魔物が出たことはないんじゃ」
出てきた村長に、2人は魔物が近づいていると言ったが、村長は、子供のいたずらと受け取って、まともに話を聞いてくれなかった。
「本当なんだよ、村長さん」
「そうよ信じてよ」
こんなことやっていたら時間ばかり過ぎてしまう。
俺たちも急から言葉が出てこない。
そんなことを考えている時間はなく、横目でみると魔物が村に入ってきた。
村長は玄関の扉があるため、魔物は見えない。
そこに大きな声が響いた。
「フゴーッ」
村長は声に驚いて扉から出て声がした方を見ると、村長の目が大きく見開かれる。
「ま‥ものだ」
村長も魔物を見て、驚いて、腰が抜けたように座り込んでしまった。
すぐに行動することができなかった。
村長が気を取り戻した時には、歩いている村の人を魔物が襲い始めたり家を壊したり、鶏小屋を破壊していたところだ。
大きな声が響いて、やっと櫓の人が目を覚ましたのか、鐘が鳴り始める。
「カン、カァン」
「魔物だ~逃げろ」
それだけ、鐘を鳴らすと、登った人も下りてきて、逃げてゆく。
この村は、大きな村じゃないので、人は50人もいない。
しかし戦える人は多くはない。
もし、村に冒険者でもいれば、立ち向かってくれたかもわからないが、今は冒険者はいない。
普通であれば田畑を荒らしている魔物が出ていれば、冒険者ギルドに依頼を出すためには、お金を用意することから始める。
ギルドに依頼を出して、依頼を受けた冒険者が討伐してくれるが、料金が安いと依頼を出しても、受ける冒険者がいないので、被害も拡大してしまう。
物音で家から出てきた村人が魔物に襲われている。
「うわ〜、助けてくれ〜」
「殺されるっ」
「キャ〜」
村人が1人、また1人と魔物が持っている、こん棒で叩かれている。
叩かれた村人は、血を流しながら動くことはない。
「 ぎゃぁー」
「わー助けて」
いろいろなところで叫び声がしている。
倒れた村人を魔物は、さらに数回、こん棒で叩いている。
こんな状態では、生きている可能性は低い。
逃げ遅れた村人が殺されていくのを、2人は見る事しかできないでボー然と立ち尽くすしかない、足が動かなかった。
立ち尽くしている2人のところまで、魔物が近づいてきて、村長や大人たちも2人を守ってくれていたが、大人は魔物に簡単に、やられてしまっていた。
村長さんから血が流れていく‥‥‥
今まで話していた村長が死んでいく。
それを見た二人はパニックになった。
俺たちは無我夢中で走り始めて、村の外になる木に登ろうと思った。。
しかし、村の門を出たところで魔物が1匹いて俺たちを追いかけ始める。
俺もアリシアも魔物を見ることが初めてなので、この魔物がなんなのか、わからない。村長も魔物としか言わなかった。
魔物が「ゴブ、ゴブゴブ」と大きな声で威嚇してきた。
2人は、足が震えてきて、動けなくて木に向かって走ることもできなかった。
顔にも汗が流れてきて目に入ったが、魔物から目を離す事ができない。
背中は汗で洋服が重たくなっている。
魔物が2人の目の前に近づいた時に、見ているだけで、足を動かすことさえ忘れてしまうほど恐怖が2人を襲う。
さらに震えがきて膝がガクガクして動かす事も出来ずに、そこに立ち尽くすことしかできなかった。
動くことができない二人に魔物が近くなる。
魔物は俺たち二人の目の前まできて右腕に持っている棍棒を大きく振り上げる。
逃げたいと思うけど、足が動かないし、振り上げた棍棒を見ることしかできない。
魔物は振り上げた棍棒を一気にすごいスピードで俺たちに向けて振り下ろした。
棍棒はアリシアに当たり、アリシアが吹っ飛んでいく。
アリシアはゴロゴロと転がりながら倒れ込む。頭付近から血が出てきているみたい。
俺は、それを見て恐怖で動くこともできない、ただアリシアを見ているだけ。
アリシアが転がるのをスローモーションのように見ることしかできなかった。
あまりの衝撃のため、俺は声を出して叫ぶことさえできない。
叫んでも誰も助けてくれないのに‥‥‥声が出ない
アリシアを棍棒で殴った魔物は、今度は俺を見た。
俺も魔物の動きに目を奪われて、今度は自分だと悟った。
俺は体がガタガタ震え出して動くこともできない。アリシアも心配だ。
『‥‥‥』 頭では考えることができない。
今度は魔物が俺に向けて棍棒を構えて、上から力の限り振り下ろす。
それを、俺は、どうしてかわからないけど、スピードがゆっくりなように感じて、その棍棒は回避することができたが、棍棒は地面にめり込んでしまったみたいで、魔物が棍棒を抜こうとしている。
棍棒を地面から抜いた魔物は、土がついた棍棒を構えて、また振り下ろそうと構えた。
今度は、俺に向けて正確に振り下ろされていく棍棒に、俺はなすすべもなく肩に棍棒が当たってしまう。
咄嗟に横に避けて衝撃を緩めることができたけど、痛みで立っているだけで精一杯だ。
フラフラする。
魔物は興奮しているような感じで荒い息を吐いて、よだれを垂らしていた。
「グワ〜ッ グワッ」と一声吠えた。棍棒が当たったから喜んでいるみたい。
俺は痛みで肩から腕にかけて力が入らない。
腕を動かすことができない痛みが走っている。
俺はフラフラと傷口を抑えながら立っているだけ。
ぼーっと立っている俺に向かって魔物は二撃目を加えようとしている。
二撃めは簡単に俺の頭を横から当てることができて、俺もアリシアと同じように体ごと吹き飛ばされる。
薄れ緩く意識、地面の冷たさを感じて、俺の体温も下がってきたみたい、目が霞む、体に力が入らない、動くこともできない。
もう目が開けていられない、このまま、死んじゃうのかな、遠くでアリシアが倒れているのが見える。
アリシア‥‥‥助けなきゃ‥‥‥アリシアだけでも、生きててほしい‥‥‥
そう願った俺は、どこかからかわからないけど、声を聞いた。
「クリス、もう少しですよ」
「だれっ」
「あなたの運命は、こんなところで終わりではありません」
「誰なの?」
「今は言えませんが、あなたは運命の子」
「えっ、俺が運命の子って?」
「そうですよ、クリス、あなたにも能力がありますけど、前世のアルベルトの能力を上げましょう」
「えっ、誰だって」
「そのアルベルトは不運のもとに死にましたが、本当は、そこで尽き果てることはない運命でした、運命を果たさずに死んだアルベルトの能力と記憶を、クリス、あなたにもらってほしいのです」
「なんだかよくわからないけど、アリシアを助けられるならなんでもするよ」
「はい、これで契約成立ですね」と声は言った。
「現生では、あなたには過酷な試練が訪れます、でもあなたなら、試練も乗り越えていける信じていますよ。
その試練の末にあなたが手にできるものがあります。
あなたが試練を乗り越えてこそ、手に入れられるものです」
「試練?」
「そうです、その試練を乗り越えなくては、この星の未来は、ありません。
あなたはこの世界で、ただ一人の人になることができ、世界を救うでしょう。
試練を乗り超えなさい、クリス‥‥‥クリス‥‥」と響くように言って声は聞こえなくなった‥‥‥
‥‥‥俺は目を再び開けることができた。
冷たい地面から横たえた体を再び起こす力が湧き上がってきた。
コメント