新・生物学入門『ドラゴンの創り方』

下之森茂

2.情報の穴(あな)

『生物学をろんずるには、
 まず生物を知らねばならない。』


「生物を知らなければ、
 生物学は学べないと?」


『そうではない。』


大人は否定する。


『生物学は既存の生物に例えることが多い。』


「それはなぜですか?」


『情報の伝達を素早く行うためだ。』


「つまり、類型化カテゴライズですね。」


生物は分類される。


ヒトかヒト以外の生物か、
オスかメスか、大人か子供か。
仕組みがあり、それにのっとり個体を設定する。
それを類型化と呼ぶ。


知識があるもの同士であれば、
既存の生物と照らし合わせて論ずることで、
相互の理解を素早く進められる。


これはヒトのオスの、大人である。と。


生物学は、おおむねそのようにできている。


『しかしながら、その例えには穴がある。』


「アナ、ですか?」


『穴だ。穴にも形や大きさ、深さ、または
 アリの巣のように複雑な構造かもしれない。
 例えによって伝達される情報が、
 互いに等しく共有されるわけではない。
 ドラゴンも従来の虫類と同様か、
 それ以上に大きさや種類は様々になる。』


「なるほど。
 新しい生物を創造するというのは、
 想像力をつちかうのみならず、
 伝達能力を向上させる働きがあるのですね。」


『そうだ。』


子供たちが、大人の話にしきりに感心した。

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