新・生物学入門『ドラゴンの創り方』

下之森茂

1.海事の外(そと)

『海外では生物学の学習に、
 ユニークな提案を求める。』


大人がそうのたまうので、
子供たちはひとまずうけたまわる。


『新しい生物を創造そうぞうしなさい。』


しかし子供たちは疑問を浮かべた。


「生物を…作るのですか?」


既存きぞんの生物から発展させてもいい。
 二足歩行の毛のないサルから旧人類きゅうじんるい
 すなわちヒトをつくったように。
 獣、ムシ、サカナ、生物、
 菌やウイルスでもなんでもいい。
 ここで大事とされるのは、
 想像力を働かせることだ。』


しかし子供たちからはなにも出てこない。


『例えばドラゴンというものがある。
 見た目は虫類そのものであるが
 鋭い爪やコウモリのような翼を持ち、
 空を自由に飛ぶことができる生物。』


「それはトビトカゲドラコでしょうか?」


『あれは滑空かっくうだ。モモンガに近いが、
 ドラゴンはハネを広げ、自由に空を飛ぶ。』


トビトカゲは、脇から飛び出た肋骨ろっこつから
広がる扇状せんじょう皮膜ひまくを使って、風や空気抵抗で
降下飛行をする樹上棲じゅじょうせいのトカゲである。


「なるほど。ではそのドラゴンは
 新しい生物なのですか?」


『新しくはない。
 ずっと伝承されている空想上の生物だ。
 火を吐くドラゴンまで創造された。』


「それは頼もしい。」


『頼もしい?』


「湯がかせる。」


『そういう考えは大事だ。』


突飛とっぴな子供たちののたまいに、大人がさんした。

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