巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第二章 社会と現実はさほど甘くない。

バニーちゃんと一緒(13)

「チッチッチッ。ケージ君ってさぁ。ギターを弾けたりする?」
 突然の問いが意味不明だ。判断できなくて応じるのに躊躇う。

 時代錯誤に右差し指を振る自称魔法使いさん。ふざけた態度で
迷惑を被る過去を連想する。顔をしかめながら味気なくなった。

「大昔に触ったぐらいで弾けない。周囲も音楽に関心なかった」

「ふーん。やっぱ特撮戦隊ヒーローってさ。白いギターを抱えて
颯爽登場。少女を怪人から助けるのがお約束じゃないのかなぁ」

 ニヤリと笑うボケは斜め上に転がるのだ。一瞬言葉がでない。


「怪人なんか現実にいるか。そもそもヒーローじゃないからな」
 冷たい返答になぜかめげないデスボイスだ。すかさずの応酬。

「だってあれじゃね? ダンジョンの奥からバニーちゃん助けて
美少女ギャルを振りまわすんだ。愛車も名前通り切り札じゃん。
なんとかライダーやレンジャーで呼ばれるヒーローみたいだよ」

「えっ……待って。JOKERの意味が切り札……城のカーだ。
佳二はK2で意味が2000。おぉダジャレとか語呂あわせ?」

 正答を導いても喜ぶべきなのかとしばらく沈黙するしかない。

「ようやくケージも気づいたようだね。正義のヒーロー誕生さ」
 両腕を組んで感動するオッサン。ちょいキモの英雄さんだね。


「ヒーローって……悪者がいない。車も変形とか合体できない」
 うんざりした表情になっただろうか。応じる声まで低かった。

「ケージも甘いよな。あきらめたらそこで試合終了じゃないか」

「まっまさかっ……現実なんだ。そんなものできるはずがない」
 バスケ漫画じゃねぇよとツッコミどころだがあえての放置だ。

「ホーッホッホッホッ。ドーン!……ってのはもちろん冗談さ」
 またも懐かしアニメのネタ。腕を振りながら英雄さんが笑う。

「稼働する二足ロボ。哀しいが現代科学で再現も不可能だった。
だがしかしケージ君。現代スーパーカーに不可能もないのさ!」

 右差し指をこちらの胸に示して……AI開発責任者が嘲笑う。


 スーパーカーって言葉に昭和じゃねぇよと考えながら応じる。

「へっ? まさかとおもいますけど車いすが勝手に動くんだから
可能性はある。もしかして運転席になったりしません……よね」

「さすがの推理力。天丼はやめておくが推理マニアのケージなら
気づいて当然かな。ホンダの技術と我々の開発力の合体なんだ」

 真面目にふざける英雄さん。社会を馬鹿にする自称魔法使い。

 いつの間に手を組んだのか仕方ない。すぎた過去は戻らない。
いつも巻きこまれてひどい状況に陥るから関わりたくないんだ。


 イベントじみた大騒動を抑えられるかな。不安しかないよね。
「female? 脚の代わりになるAIさんに質問いいか?」

『もちろんです佳二さま。スリーサイズはありません。体重が』

 おかしな開発者と天才ハッカー。調教されたAIなんだよね。
普通じゃないからボケをかませる人工知能に苦笑いしかでない。

「それ必要ない。もしかしてCIVICの運転席に変わるの?」
 冗談のつもりで問いかけると至極真面目に即答されたんだよ。


『はい。そのとおりです。佳二さまが座って合言葉を叫ばれると
自動でmaleと同調します。150度ひらいた扉下から台座用
レールが延伸してバックした車いすとの合体。回転して運転も』

「おぉっ。なんでいっつも悪い方の想像だけが良くあたるんだ。
車と運転席と操縦者が三位一体になる……マンガじゃねぇよな」

 いつの間にか並行世界に転移させられていたんじゃないか……
おかしな妄想まで芽生え始めた。全身の力が抜けてうずくまる。

「そろそろ現実を受けいれることからラクになろうじゃないか」
 背後から英雄さんに両肩ガシガシつかまれるのがツラすぎる。


「合体する漆黒スーパーマシン。乗りまわすのが正義の主人公。
無理やり与えられた状況だよ。泣きたくなるのも仕方ないよね」

 なんだかんだとコントみたいな状況も突如終了のお知らせだ。
ボカロの音声と古い最強ロボットアニメのテーマが英雄さんだ。

 同時にスマホを掴んだ二人に対して背後から機械音が届いた。

『エマージェンシー。エマージェンシー急報です。英田永依さん
宇佐美ココさん。両者が何者かに拉致されたと受信しています』

 もちろん男声の機械音はAIのmaleだ。車載のスピーカを
通して発した音声。内容を理解した瞬間に驚愕するだけだった。

 安寧とは長くもない……それが世の理だ。また必然と呼べる。

コメント

コメントを書く

「現代ドラマ」の人気作品

書籍化作品