第二章　社会と現実はさほど甘くない。

バニーちゃんと一緒（３）

「緊急事態宣言」その発令も本来大規模震災発生だ。他国からの
侵攻などで全国民に緊急を要する事態。それが発生する状況だ。

　総理大臣から内閣府を跨いで通達する強力無比な布告だった。

　治安が混乱する状況の発生。維持の必要も認められる特例だ。
国家公安委員会の勧告に基づく発令は制定から行われなかった。

　だがしかしあれは三年前……じゃない。二年と少し前の秋から
西側大陸の僻地で発生した。新型ウイルスによる世界的蔓延だ。

　新型ウイルスはインフルエンザに迫る致死率の高さ。圧倒的な
感染力を伴った。南米や欧州中心に蔓延すると世界を席巻した。

　ウイルスが大陸覇権国の免疫学研究所から漏れたとされる説が
ネットの闇で強く支持される。覇権国指導者は関与を否定した。

　無関係を一貫して誇示するも現在は自国にブーメラン現象だ。

　まもなく国家最大都市で開催される冬季のオリンピック開幕。
他人事だと貫けるはずもない。そこに未知のダンジョン誕生だ。

　この場面で認識する。ダンジョンは人類の脅威だろうと当初に
想定した通りで魔物がはびこる異空間としての地下ダンジョン。

　だがしかしと考える。理解と自覚もできない現状で唯一無二の
技能を得られた。眠り姫ココはウサギから獣人に進化している。

　しかもダンジョン創造者の意図も一切不明だ。地球上の人類を
観察している状況。それは間違いない事実だ。昇降エレベータの
設置でほぼ瞬間的に対応された現実の不条理が明らかにされた。

　ダンジョン周辺地域に関する諸問題も改めて発生するだろう。

　大規模立ち退きを実現させるため金銭保障以外の手段が同調。
関係者の不安定な状況と未来の危機感まで強調して煽る行為だ。

　現時点で政府方針に反対する気持ちもないが俯瞰して考える。
世界と人類共通の認識としても提起されるべき問題なんだろう。

　ダンジョンが誕生することで人類は種族的な衰退どころか……
地球温暖化を超える勢いで改めて変革まで迫られる状況だった。

　新たに美里が追加した情報もそれだけでは収まらない。国内は
ダンジョンが総数八か所。現時点の推測が世界で六十四か所だ。

　それでも予測の範疇だろう。十一桁の数字に直結するからだ。
現状の総人口なら９９億を最大数として累計される十桁だろう。

　十一桁目が始まりのダンジョンをふくめると国内で八か所だ。

　どのような基準から世界を分割したのか明らかでない八分割。
おそらくは世界中の都市で公園に誕生している地下ダンジョン。

　ダンジョンの規模や階層と現れる魔物も異なる可能性が高い。

　すべて謎の状態で唯一無二の存在であるウサギ獣人のココだ。
その価値は美貌までふくめて最優先で守られるべき対象だろう。

　極力外部に存在をしられたくない状況だ。中学生として毎日の
登下校が可能か？　当事者としては心配も尽きない状況なんだ。

　なにか起こると決まっていないが胸騒ぎは収まる兆しもない。
無条件で守る対象が姪っ子の永依だ。それにココも追加された。

　自分の力で守れなくても幅広い人脈として活用できるだろう。
最悪の事態だけを回避できればいい。基本的にどうにでもなる。

　黙考に集中していたら美里さんが左掌で触れながら問われた。
「ところで佳二くん。佳二くん？　現在このビル空室あるの？」

「あっスミマセン。はい二階から四階までは昨秋から空室です」
　半ば呆然としていた。内容を理解すると同時に状況の説明だ。

「安心したわ空けておいて。自衛隊と公安で使用する前提です」
　何気なく放たれた美里の一言だった。新たな波乱の幕開けだ。

　閣下の去り際に美里と鈴音についても余計なお世話を残した。
連絡役では収まるはずもない美女二人組が身近に滞在するのだ。

　ハニートラップは別にしてもハーレムに近い状況が発生する。

　終わり良ければすべてよし……世界に必要かそうでないかでも
物事は変動する。進むべき方向が左右されるだけで結果次第だ。

　誰が為に鐘は鳴るのか。ただ明日は明日の風が吹くんだろう。