巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第一章 始まりが雨でなく運命?

始まりの迷宮で邂逅(16)

 突如入口付近がざわついた。男女二人のシルエットも見える。

「皆さんお疲れ様でした。なにか体調面での問題ありません?」
 控えめのかけ声。艶のある白衣女性と隣に機材を抱える男だ。

 つい彼女の全身をくまなく眺める。男だから仕方ないだろう。


 グラビアアイドルかと二度見するほど巨乳。細い腰から繋がる
脚線美には痺れる。形良い臀部に誰もがそそられて当然なんだ。

「あら皆さん。かなり警戒してたのに打ち解けるの早くない?」
 白衣の美女が微笑みと同時にこぼす。機材男は敬礼で報告だ。

「葛城二佐! とりあえず通信企業の協力で直電のみ保全っす」

「とりあえず通話……早急に確保できたのはありがたいがねぇ」

「ええ。携帯各社の回線は問題なしです。ただしネットが……」
 男と葛城二佐の会話だ。ざわめく室内に突如着信音が響いた。


 機械女声の着メロ。いわゆるボカロ音声は私物のスマホ着信。
「はい? 佳二ですが。ご無沙汰しております閣下。実は……」

『もちろん確認済み。地震直後のカメラ映像にケージとおバカが
並んどったからな」表示の名前に驚いた。即応したが遮られる。

 おおきな地声。スマホから周囲に轟き体ごとのけぞらされた。

「えぇっ? まさか爺ちゃんに即ばれじゃんかよ。きっちーな」
 顔をしかめるうなり声。永依がココに抱きついてうずくまる。


「えーっと閣下すみません。ある程度の情報をお持ちのようで。
こちら全員揃って絶賛混乱中です……代表者に変わりますか?」

 正面が驚き顔の葛城二佐。スマホを預けようと考えてスピーカ
フォンに設定する。今後の状況を考慮して軽い説明も追加した。

「葛城二佐すみません。おそらくご存じかとおもいますが与党の
英田副総裁です。できるだけ手短に簡潔な説明でお願いします」

 驚いた顔でスマホを握る葛城だ。隣の美里も同様に硬直した。

「英田副総裁であられますかっ。わたくし陸上自衛隊所属。葛城
二佐でありますっ。どんなご案件。お電話でございましょうか」


『あぁ英田だよ。挨拶は必要ない。靭公園にできたダンジョン。
責任者がキミかね? ケージは評価も高いが孫の永依が問題児。
日本語ロクにしゃべれんバカだから。関わるだけで大損するぜ』

 こちらの対応よりも幾分はマジメに伝えているが本心だろう。
うけとる気もちなど考慮しないのが一族の共通点かもしれない。

 おかしな状況なんだよ。我々以外は全員が直立不動の体勢だ。

「まさかと存じますが髪がピンク色の少女。副総裁のお孫さまで
間違いないと?」信じられずに戸惑うだけ。葛城二佐の問いだ。


『あぁ。次男はそれなりに優秀。嫁の圭子もできた人物なんだ。
実弟になる佳二もユニークで一族誰かを嫁に与える協議中だな』

「えぇっ爺ちゃん。それぜってぇダメっしょ。ケーちゃんの嫁は
あーしよ。大昔から決まってんの!」遠い位置から永依が叫ぶ。

『何度伝えりゃわかる。この国じゃ三親等で近親者同士の婚姻。
認められてねぇんだ』電話の先では英田副総裁がうめくだけだ。

「…………」葛城二佐の正面。ただただ呆然とするだけなんだ。
ネタじゃない……なにも聴いてないよと大声で叫びたい気分だ。

 あまりに異次元すぎる会話の飛び交う空間だ。おかしな状況に
悩むこちらを眺めて笑う永依。驚き顔で固まるココが対照的だ。


『ともかく陸自の輸送防護車なんだ。わしらも習志野の道中……
大型の輸送ヘリでレンジャー同行。八尾空港に一時間ちょいだ』

 状況の説明を途中で区切る。なぜか副総裁が言葉を追加した。

『日付が変わる前に到着するからバカ娘も起こしとけ。メシでも
喰わせりゃいい。そこのケージたちも時間外。軽く飲んでろよ』

 閣下の怒鳴り声に顔色を悪くした。対象は永依だけじゃない。
自衛官と警察まで同時の事前確認だ。迎える準備で忙しくなる。

「こちら了解しました閣下。無事のご到着お待ちしております」
『おぉ』葛城二佐が丁寧に応じると短い返答で通話も途切れた。


 両腕で背後に伸びをしながらここからの優先順位を黙考する。
永依の祖父が与党副総裁。英田常勝は理解も早く言葉は通じる。

 ココの今後について対応策も得られるから特別に問題ないね。

「聴いたろエーちゃん。到着前にちゃんとメシまで済ませろよ。
お叱りの言葉には逆らうなよ。ココの対応では迷惑かけるから」

「ん……これからココちゃん。一緒に暮らすため頑張って謝る」

「なにかと面倒をかける。すまないな」珍しく落ちこむ永依だ。
ココ自身の状況まで絡むため肩に手をあてながら励ましている。

「葛城二佐もお疲れでした。美里さんも部下の指示が終わったら
閣下からお許しもあります。飲んで雑談しながら待ちましょう」


「そうですね。あなたたち三人も直接ではないにせよ。広範囲で
政府の関係者だと呼べなくもないです。二度手間……嫌ですね」

 美里が苦笑しながら立ちあがると部下の刑事に行動を促した。

 台風が通過した。同時に特大ハリケーンまで発生した状況だ。
わからないままに流されるだけだ。明日はどこにあるんだろう。

コメント

コメントを書く

「現代ドラマ」の人気作品

書籍化作品