巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第一章 始まりが雨でなく運命?

始まりの迷宮で邂逅(13)

「えっ? こんな長い時間かかったんだ。もう八時半だってさ」
 左手首のアナログ時計だ。チラ見しながら意識もなく叫んだ。

「えぇーケーちゃんさぁ。あーしら水分だけで夕飯まだっしょ」
 目前の両眼が飛びだすような顔。美少女の変顔はおもしろい。

「そだね。五時前の地震で準備してからすぐに公園突入したよ。
ダンジョンで三時間過ごしたんだね。そんな感じないんだけど」


「んーと興奮してっから? お腹減らない。時間感じないよね」
 腹時計も鳴っていない永依。時間の認識に齟齬があるらしい。

「時計正しいからね。ダンジョン時間が早く流れるとかないよ」

「そだねー。なんか急にお腹減っちゃったよー。お家に帰ろう」
 家が恋しいと永依がつぶやく。本心にも感じられる真剣さだ。

 帰りは焦る必要もない。ゆっくりした速度で出口を目指した。
さほど時間に差がでるはずもない。階段前広場に戻れたらしい。

「そういえばココ最初っから地下だよ。カードをもってないけど
出口で必要だよね」なんとなくこぼすが即座に反応は戻らない。


「うーん。出口で取っ手触ったら光るボールが現れるじゃん?」
 どこか不可解な表情をしながら思案する永依の答えも絶妙だ。

 改めて入口で扉を握った際の現象を回想する。確かに光る玉が
空中に出現した。割れたらきらめくカードが地面に落ちたよね。

 カードをパネルに触れさせてから入室したら階段だけの部屋。
「帰りは登りで百段ツラいよね」義足の人間には厳しい試練だ。

「んーあーしとココちゃん。二人でケーちゃんを抱えよっか?」
 姪っ子の気配り発言だ。障がい者である自分でも照れくさい。

「いやいやいや遠慮しとくよ。エレベータないから残念だけど」


【任意ノ階層デ転移可能ダ】プラス【全員攻略ノ階層デ移動ダ】
――脳内に響いた機械音。なぜか神様による福音にも聴こえた。

「うおおぉっ? 一瞬で目の前エレベータができちゃったよね。
なんて親切丁寧なダンジョン管理人さんだろう。感謝しかない」

 実態はエレベータじゃない。特定階層に転移する装置らしい。

「これならケーちゃんラクショーね」永依も満面の笑みだった。

 エレベータに乗りこんだ。扉が閉まりすぐに転移したらしい。

「えぇっ。ついた? なんも感じないね」永依の驚愕した叫び。
音もしなかった。まったく振動を感じないまま扉があけられる。


『高度に発達した文明は魔法と変わらない』そんな言葉もある。

 超越した魔法社会。その結果で形作られたダンジョンの空間。
もしくは進んだ文明の科学的な手法で具現化されたダンジョン。

 現実にあるダンジョンだ。どちらにせよ人間は理解できない。

 階段昇降口の正面に繋がる位置がそのまま迷宮の出口になる。
正面は扉だけだ。なにもないテニス協会の建屋に繋がる階段室。


 エレベータ扉がひらくと同時だ。正面は妙な文様の扉だった。
つまり下をむけば正面が地下に向かう幅が5mの階段口なんだ。

 入室時同様なにもない空間だ。照明がなくても視界はひろい。

 異なるのが往路は勢い侵入した二人組にメンバーが増加した。
オマケとして永依の奴隷。ウサ耳の美少女ココも同伴している。

 その結果として三人に増えた。エレベータから並んで降りる。


「正規許可証だったっけ? 表面の名前と十一桁の数字だよね。
入退の際に必要なカードもらったんだよ。ココのも必要だよね」

 何気ない言葉に律儀な反応が返る。ココの目前で光球が現れて
すぐに破裂する。白くきらめいたカードが出現と同時に落ちた。


 ココは興味もないらしい。無言で目前のカードを拾いあげた。

「ふーん。早速だけど宇佐美ココって名前だよ。あとは数字とか
裏面には文字列だね。『心臓喰らい』能力名かな。なんだろう」

「はぃ? かっけースキルじゃん。ココちゃんにだけズルくね。
あーしも欲しい」かなりふてくされた表情で永依がつぶやいた。

 同時にポケットの確認。カードを見て驚きの表情で硬直した。


「ケーちゃんびっくりだー。あーしのカード『神の拳』だって。
カッコイイじゃん」いま泣いたカラスがもう笑うの体現だった。

 姪っ子の永依はギャル。それでも比較しようのない美少女だ。

「英語ならゴッドハンド? なんかかっけー複数形でハンズだ」
はしゃいで喜びの表現だ。文字列をみながらつぶやきをこぼす。

「はぁ? さっき裏面なんもなかった……えーっ『分析師』って
一体なんなんだよ。数学者みたいで変態チック。おかしいよな」

「リアル・チェッカーって盗聴犯だよ……」情けなくて撃沈だ。


 互いのカードを見比べて同時に不思議な文様の扉に近づいた。

「もうすぐ21時で……腹へった。早く家帰ってご飯とお風呂」

「うん。ケーちゃん手作りの焼きそば。ココちゃんとお風呂だ」
 つぶやきに明るく応じる永依だ。ココの顔をみながら微笑む。

 まずココに人間の常識……日本の生活と習慣を理解させよう。
生活面で困らない最低限の教育かな。見た目だけなら同い年だ。

 お互い仲良く同居生活。それを楽しんでもらえるなら嬉しい。


「家に帰るまで遠足は終わらない」ここから残念なお知らせだ。
地下迷宮は出口の先が日常だ。寒さを感じる外部まで先は長い。

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