巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第一章 始まりが雨でなく運命?

始まりの迷宮で邂逅(11)

 永依が正面に臨む相手は変わらない体格でも圧倒される強者。

 同世代相手にした勝負だ。入念に準備することもないだろう。
必勝宣言しながら強者に対する真っ向勝負の経験もないはずだ。


「うらっしゃぁっ!」永依の意識は爆発寸前まで高ぶっていた。
感情も制御不能だ。自ら己の両頬に強烈な闘魂を注入している。

 正面は視線をあわせながら冷静に対峙しているウサ耳少女だ。

 自分が負けることなど微塵も考えずに冷静に対応するだけだ。

「ところでエーちゃんに質問だけどね。試合の直前お互いに頭を
下げて敬礼するよね。これから闘う相手に敬意を払う意味かな」


「そだね。闘う相手に対してリスペクトする意味らしいんだよ」

 即応したおバカな空手少女も最低限度は礼節を理解している。
どこか微妙な応答に無駄な抵抗はやめて残りの説明は放棄した。

「経験ないから詳しくないんだよ。管理者さんがルール決めた。
勝負の判定と止めるのはオレだよね」真っ向から正論を投げる。


「それで試合の直前にリングアナがやった煽りじゃないけどさ。
選手の紹介なんか必ずやるじゃん。ここにはギャラリーいない。
挨拶とルールを確認する感じかな。最終的な話しあいになるね」

 目前はウサ耳少女だ。両腕を組みながら律儀に反応している。

「うん。リングスの合同トーナメント形式なんかの試合だよね。
昔なら試合の前は口上合戦だった。古い映像なんか罵りあいよ。
プロレス名物みたいな雰囲気だよね」おバカな永依も同調する。


「だからってわけじゃないけどさ。事前の取り決めをしようよ」
 双方が生粋の戦闘民族なのだ。かなり悩んだ末に提案だった。

「ふーん。ちょっとだけならね」「それなら必要にも感じるな」
 言葉をすぐに了承する永依が珍しい。ウサ耳少女も同意する。


「えっとまずは無難だけど挨拶からだね。これからウサ耳さんの
呼び方なんだ。オレは城……佳二って名前だよ。公園の隣に建つ
ビルのオーナーかな。対戦相手が英田永依。実の姪っ子になる」

「あーしはケーちゃんの紹介通りさ。気軽にエイって呼んでね。
十五歳の中学生だ。昨年は全中女子の空手チャンピオンだよ!」

 かんたんな自己紹介。聴きながらウサ耳少女が小首を傾げた。

「空手は残念ながら知識にないらしい。正面から対峙して素手で
殴りあう武道かな。どう呼んでくれても構わない。迷宮最奥部で
変身したからね。いつの間にか人間に変化しただけの仔ウサギ」


「空手は立技の格闘技なんだよ。会館のルールとか説明難しい。
肉体を使用する急所の攻撃が禁止だよ。あとなんでもオッケー。
名無しウサギさん。ここで生まれたからココでいんじゃねぇ?」

 笑顔の永依も即応。逆におもいついた名前も同時に提案する。
「じゃあカタカナでココにするか響きもいいよ。名前は嬉しい」

「本人の了解で名前ココに決定しょ。ウサ耳だから宇佐美さん」
 ウサ耳少女があっさり了承した。なぜか苗字も勝手に決める。

「住民票とか戸籍の取得は問題ありまくりだけど。それは追々。
ダンジョン攻略を最終的な目標にしながら同居になるのかなぁ」


「えぇっケーちゃん? いきなしココちゃん部屋にお持ち帰り。
同棲しちゃうの。あれだ勢いだけでプロポーズして帰りに離婚。
そんな感じだよね。なんつーたっけ大昔流行した成田離婚ね?」

「はぁ? エーちゃんなにいってんだよ。ちゃんとした食事とか
人の常識教えたり。生活の環境とかも整えないと病気になるよ」


「りょ。もちもち冗談っしょ。ココちゃんいーならお部屋一緒。
ベッドも追加しょ。服とか下着なんかオソロで選びたいよねー」

 妄想少女は転がるだけで斜め上どころか一周ぐらいの空回り。

「いざ闘いの始まりだね」覚悟を決めた永依のつぶやきだった。


【個別ノ戦闘行為ヲ開始ダ】――突如脳内に響き驚きで固まる。
目測なら直径8mの巨大円陣だ。ほぼ対極で構える二人だった。

 なぜか勝負は開始直後の終了あまりにもあっけない幕切れだ。


 戦術面での弱者が強敵を相手にして正面から闘うはずもない。
戦略面で有利に働くならルールに抵触しない限りは許容される。

 どれほど知能で劣っても戦闘行為だ。弱者と限らないだろう。

 馬鹿正直に左爪一閃を狙うウサ耳少女のココだ。ニヤリとした
笑みで返す永依が口端を微かに歪めて左掌に握る黒い金属棒だ。

 中央でちいさく突起した部分を前方に強く押した瞬間だった。


 瞬時にきらめく発行体をなぜかココが正面から見つめていた。
視界は白一色だ。ちいさなLEDライトも直射なら強力すぎる。

 そのまま右掌で包装を破ると投げつけられたのは赤い粉末だ。

「うぎゃああああぁっっ」一直線で顔面に直撃した絶叫だった。
 それは人間が発してはならない叫びだろう。周囲まで轟いた。


 以前料理で使用した香辛料はハバネロと呼ばれる赤唐辛子だ。
永依の秘密兵器は赤トウガラシより強力で激辛の刺激物だった。

 掌で顔を抑えながら転げまわるココだ。その姿が憐れに映る。

 しばらく経過するとココの動きもやがて緩慢になり静止した。
「管理者さんが認めた勝負だよね」おかしな決着に頭を抱えた。

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