巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第一章 始まりが雨でなく運命?

始まりの迷宮で邂逅(3)

【生命ト身体ノ保持ガ無効】――はっきり機械の音声が伝えた。

 命の危険も……ダンジョンでは日常だ。一層気を引き締める。
モンスター討伐の恩恵はゲームの都合だから特別に意識しない。

 だがしかし危機の察知は可能。気楽な姪っ子に理解させたい。

「ちゃんと聴いてね。ここからダンジョン。ガチなモンスターも
出現する。人間は弱い生き物だからさ。すぐ死んじゃうんだよ」


 戒めの言葉を聴いてきょとんと首を傾げた。納得していない。
「ケーちゃんあーし強いから。モンスター指先一つでダウンよ」

 右拳を握り下に親指を伸ばした全力宣言。確かにケンシロウが
理想だったよね。苦笑いしながら戒めるためにはっきり伝える。

「エーちゃんが強いのはしってるよ。でもねリアルダンジョンは
誰もしらないんだ。ゆっくり進んで一つずつ検証するのが正解」


「でも敵なんかたぶんザコじゃん。そんなにビビんなくっても」

「とにかくね。落ちついて欲しいんだよ。守ってくれんだろ?」
 お願いを聴いて正面うなずいた。双方の拳をやけに強く握る。

「まだなんにもわからないね」つぶやきながら進んだ細い夜道を
抜けると靭公園。なにわ筋とあみだ筋の狭間を西園と呼ばれる。


 日頃とちがい照明もない道。あわく照らした薄もやが異様だ。

 そのまま南東口を直進。西園に入場すると巨大なテニス場だ。
なにわ筋の傍。国際大会も開催された石段観客席テニスコート。

 コートの脇に立つ白と黒でシンプルな建屋に並んで近づき――
【建物内部ガ迷宮ノ入口ダ】――ふたたび脳内で音声が響いた。

 関西テニス協会本部事務所って聴いたことがある建物だけど。
白と黒が基調でシンプル。落ちついた雰囲気の木造平屋建てだ。


 物音をなくして近づくと扉の前で一旦静止。取っ手を握り――
【初ノ正規デ入場ヲ確認ダ】――内容を理解できた瞬間に驚く。

「ケーちゃんおかしくねぇ? なんかインチキ野郎いんじゃん」

「相手が野郎かわかんない。すでにダンジョンかもしれないね」
 また脳内で響いた音声は同時らしい。聴いた印象を伝えあう。

 入室した部屋には誰もいない。最近は日曜営業しないのかな。

 建物の外見におかしな変化も感じなかった。だがしかし現実を
巻きこんで内部は改変された。家具からしきりまでなにもない。


 正面は不思議な文様の大扉だ。他にはなにも存在しない空間。
通過すると迷宮に繋がる階段だろう。たぶん間違いないはずだ。

「ねぇねぇ不法侵入だっけ。器物の損壊? ヤクザの件と同じで
怒られっかな。爺ちゃんしつこいまた大目玉くらっちゃうよね」

 マジで悩んでいるらしい。かんたんに知識で説明してやろう。

「んんーダイジョーブじゃないのかな。たとえばになるけどね。
窓から見えた雰囲気が異様だから調査にきた。言い訳できる?」

 これから起こるかもしれない面倒。想像してみるが問題ない。
「へぇ。いまここに警察とか自衛隊? 警備員さんいないよね」


「そだね。余所にもダンジョンできたかな。忙しんじゃない?」
 何気ない日常がこれから変化するよねとなんとなく意識する。

「まぁね。うち帰ってからネットだよね。詳しくしらべよっか」

「ん。とりあえずなにもない。あっちのおおきな扉に近よるね」
 わからない未来のことは考えるだけ無駄だ。黙って進むだけ。

「りょ。たぶん地下降りる階段だよねー。がんばりマッスル!」
 お笑いネタでいつも場を和ませようとする。朗らかに笑った。

「部屋に階段かな」つぶやきながら取っ手に触れると同時だ――

 ほとんど同時だろうか――ふたたび脳内で機械音が響いた――
【地下ニ新規入場ガ可能ダ】プラス【試練ノ時ヲ開始スルノカ】

「おぉなんてこったい。ここからなんだってなんかの試練だよ」
 わけわからないから嘆くしかできない。ため息しかでないね。

「それよかさ試練ってなによ?」悩める少女のつぶやきだった。

「さぁ。相手に試されるんだからシミュレーションで闘うの?」


「なんだろ。チュートリアルみたいな特典だったりさ。サービス
サービスゥー!」不可解な言葉でも期待できるのがおバカさん。

 だがしかし現実はかくも厳しい。意味がなく期待しても無駄。
想像できないリアルのダンジョンだ。人生そんなに甘くもない。

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