巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第一章 始まりが雨でなく運命?

始まりの迷宮で邂逅(2)

――――西暦2022年1月23日。すべてが始まる夕闇刻だ。
 北向きの窓から望む夕暮れ公園。立木の先は石段テニス場だ。

 ダイニングの片隅で台所照明キッチンライトをつけながらため息がこぼれた。
すでに限界を突破して毎食のメニュー選びが限りなく悩みの種。

 料理を学べる余裕のない生活だった。ほぼ引きこもりに近い。

 無類の酒好き。アテに少量を食べて満足できるから前は外食か
総菜で済ませた。ほほ選り好みしないから問題もなかったんだ。


 これでお気楽な単身生活が終わるのか。嘆きながら了承する。
辣腕だと噂されている姉の直訴だ。抗う術もないから仕方ない。

 年齢差もある。高校時代に罹患した骨肉腫治療で助けられた。
姉弟だけでは済ませられない借り。お返しのために逆らわない。

 お詫びとして近親者一同から贈り物だ。ホンダのCIVICは
黒いボディカラー。車いす簡易移乗と運転可能に改造中らしい。

 車両登録を済ませてから届けられる。車は走れば十分だけど。
おそらく八桁も近い総額になるだろう。言葉を失うプレゼント。


 年始すぐに同居生活が始まった。徒歩圏私立に通う姪は笑う。
おバカな姪っ子の内申点で進級可能な中高一貫教育は理想的だ。

 部活動に特化した名門で実績から評価された姪っ子も大喜び。
 昔から妙に懐かれた。栄養の問題があるから気配りも必須だ。

 野菜室のキャベツを探してざく切りする。豚バラの細切れ肉は
生ものルーム。人参玉ねぎを細かく刻んで麺三玉の具だくさん。

 オタフクとヘルメスの混合地ソース。トッピングにカツオ節。
「きょうの晩メシ。ありあわせ具材ぶっこんでヤキソバだよー」


 ダイニングキッチンは改装直後の新品だ。良かったと一安心。
本来オフィスビルには事務所が入居する。その最上階すべてだ。

 外壁再塗装済みの鉄骨鉄筋コンクリート。各階二十坪の狭さ。
浴室は緊急工事で設置した。DKを除けば部屋は三つに分けた。

 資格名義の貸与が主な収入源で不労所得生活も可能だろうか。
いろいろと手や口で指図するからそれなりに年収は稼げている。


「はぁ? あったかいメシあれば十分。文句なんかねーっしょ」
 四脚テーブルの下座。定位置に決めた姪っ子の永依が応じる。

 テレビはない。スマホに触れてワイアレスの耳栓だ。ブラブラ
手足を動かす少女は音楽か無料動画を楽しんでいる最中らしい。

 肩まで流れるピンクブロンドの髪と長ツケマが際立つ化粧ギャルだ。
 赤ジャージは派手なハイブランド品で小柄な痩身でも筋肉質。

 その美貌に誰もが驚く中学生は女子空手の全国チャンピオン。


 その強さを理解しておそろしく見えない。美人はいいね!――
視線をそらした瞬間。突如発生した強烈な縦揺れにビックリだ。

 躊躇せず即応する。ダイニングテーブルの下でうずくまった。
 東日本大震災並みか当時より強い揺れ? 無言で見つめあう。

 轟音を周囲に響かせた苛烈な縦揺れは奇妙だけど安心できた。
 気がつけば収束していて出窓に近づきながら周囲を見渡した。


「テニスコート周辺だよね。薄もやと雰囲気なんかもおかしい」
 白煙の漂うテニスコートが震源だ。不思議に納得させられた。

「ケーちゃんどっか変じゃねぇ? いつもと雰囲気ちげぇしょ」
 出窓から呆然と見下ろす永依だ。互いに困惑しながら応じる。

「んー間違いないよ。気になるなら近くまでいってみようか?」


「りょ。ケーちゃん走れないっしょ。あーし守るから安心ね!」
 一回り下の少女が力こぶで宣言だ。情けなくて泣きたい気分。

 革ジャンを羽織る姪っ子が拳のガードに革グラブを装着する。
こちらは魔改造した金属製義足だ。気休めなんだけど着装した。

 厚い革服は防御用だ。手に握る『バールのような物』金属棒。
「準備は完了」鉄底安全靴を履いてから立ち上がって施錠する。


 颯爽とした姪っ子がエレベータに乗りこむ。のんびり対照的に
背後から追った。チグハグなコンビでエレベータを並び降りる。

 一階正面がテナントになる。日祝休みだから暗い店は無人だ。
カフェ&バーの『Fish・on』を左に折れるとガラスの扉。


 ガラスの扉を抜けてから短い階段を並んで降りる。意識せずに
路地を進んだ道中はうす暗い。街路樹と植栽を抜けると公園だ。

 木立のない小路を選ぶ。周囲の違和感は意識せずに直進した。

 少女の後で望む公園口。車両止めを避けながら侵入すると――
【コノ先カラ始マリノ迷宮】プラス【生命ト身体ノ保持ガ無効】


 突如として脳内で響いたのは機械音声だ。ほぼ同時だろうか。

「はぁっ? あーしの頭んなかでおかしな声。どこの誰だっし」
 驚愕に跳躍する身体。おかしな絶叫でも愛らしく見えるんだ。

 内心では驚きだ。素早くあらゆる可能性に思考をめぐらせる。

「きっとお約束。地下のダンジョンじゃないかな。公園に地震が
発生して誕生。逆かもね」うなずきながら目前の永依が笑った。

「そっかー異世界ファンタジー。RPGゲームで定番だよねー」


【了承スレバ入場ガ可能ダ】――再び音声。同時にうなずいた。

 おもしろい展開だ。これぞ冒険の始まり! 不可解な状況でも
無意識に微笑む。ニヤリと口端を歪めながら傍の姪を見つめた。

 同時に重傷を負うとか死ぬ可能性? もちろんゼロじゃない。
 だがしかし人間はいつか死ぬ。最期の瞬間まで楽しめばいい。

コメント

コメントを書く

「現代ドラマ」の人気作品

書籍化作品