【完結】あなた色に染まり……ません!~呉服屋若旦那は年下彼女に独占宣言される~
最終章 ずっと私は貴方のもの8
実家の作品は漸のおかげで、順調に売れている。
単価が上がったうえに問屋を通していないので、利益が……びっくりするくらい、増えた。
これなら私のお給料も出せる、と父は喜んでいる。
その問屋さんとの取り引きも最近、再開した。
祖父が回した三橋呉服店は職人を大事にしないという情報が少しずつ効いてきているようだ。
「これで一斗との会社の話もだいたい詰められましたし、安心して年が越せます」
「結婚式も日にち、押さえられましたしね」
入籍前後で式場探しをしたのだ。
漸は東京で宣言どおりに四月に式で手配をはじめていたようだけど、こんな状態なのでそれは全部キャンセルになった。
改めてこちらで手配をはじめたのだけれど四月は時期がいいらしく、土日は、特に漸が希望した桜の時期はどこも埋まっていた。
しかしラッキーなことに、私たちは平日挙式でなんの問題もな人間ばかりなのだ。
そういうわけで例年桜の開花時期の平日に式を挙げるようになった。
「楽しみです、鹿乃子さんの花嫁姿」
「あ、志芳からウェディングドレスのデザインもあがってきたので、あとでお見せしますね」
いまから、春が楽しみだ。
漸の事務所を借りるのにちょっと揉めたり、志芳の作る漸の衣装が私のに比べて地味で漸が拗ねたり。
祖父に怒られながらも必死に修行をしているうちに、……四月になった。
その日はとても天気がよく、漸の希望通り桜が満開だった。
「この日が待ち遠しかったです」
式は金澤神社で挙げる。
披露宴、は開かずに親しい人たちだけでのお食事会にした。
「……ううっ、私はこんなに緊張してるのに、なんでそんなに漸は余裕なんですか」
差しだされ手に自分の手をのせ、立ち上がる。
「私だって緊張していますよ」
嘘だ、嘘。
あのすました顔で緊張とか……あ。
でも、漸って感情を隠すのが上手いから。
本当に緊張しているのかも。
「漸でも緊張、するんですね」
「はい、もちろんです」
私だけじゃないんだと気づき、少しだけ気が緩んだ。
「可愛いですね、本当に鹿乃子さんは。
特に今日は、可愛いです」
それを見てころころと漸が笑っているということは……もしかして、緊張しているのは私だけなのか!?
ううっ、相手が一回りも年上だと、その手のひらのうえでいいように転がされるかしないでもない……。
「では、行きますか」
「はい」
漸に促され、係の人に先導されて控え室を出る。
神殿へ進む私たちに神社へ来ていた人たちが注目した。
「素敵な打ち掛け」
ちらっ、とそんな声が聞こえて、頬が熱くなる。
「幸せそうな花嫁さんね」
さらに聞こえてきた声で、誇らしくなった。
これは父が私のために作ってくれた、特別な打ち掛けだ。
掛下だって祖父作だし。
さらに縫ったのは祖母と母なので、私は最高の花嫁だ。
それに、隣には最愛の人がいるのだから。
神殿で三三九度の杯を交わした。
もうすでに入籍は済ませたが、それでもこれで本当に漸の妻になったのだ、という気がする。
「鹿乃子さん」
「はい」
差しだした左手に、漸が指環を嵌めてくれる。
結婚指環は漸とふたりで幾つもサイトを見て、決めた。
実際に東京のお店まで行って、細かい打ち合わせもした。
婚約指環も順番が前後したけど、と一緒にオーダーしてくれた。
セミオーダーだから私の指環のサイズも心配しなくていいです、なんて真面目に言っていた漸が、おかしかったな。
「漸」
「はい」
差しだされる漸の左手へ今度は私が指環を嵌める。
とりあえず、じゃなく正式な私のものだという印。
これをもう一生、外させたりしないし、外したりしない。
式が終わり、料亭の予約時間まで時間があるので、そのあいだを写真撮影に当てた。
「モデルさん、なのかな?」
「結婚式場のプロモーション撮影とか?」
すぐに視線が、漸に集まりだす。
なんだかそれに、だんだん腹が立ってきた。
「漸」
単価が上がったうえに問屋を通していないので、利益が……びっくりするくらい、増えた。
これなら私のお給料も出せる、と父は喜んでいる。
その問屋さんとの取り引きも最近、再開した。
祖父が回した三橋呉服店は職人を大事にしないという情報が少しずつ効いてきているようだ。
「これで一斗との会社の話もだいたい詰められましたし、安心して年が越せます」
「結婚式も日にち、押さえられましたしね」
入籍前後で式場探しをしたのだ。
漸は東京で宣言どおりに四月に式で手配をはじめていたようだけど、こんな状態なのでそれは全部キャンセルになった。
改めてこちらで手配をはじめたのだけれど四月は時期がいいらしく、土日は、特に漸が希望した桜の時期はどこも埋まっていた。
しかしラッキーなことに、私たちは平日挙式でなんの問題もな人間ばかりなのだ。
そういうわけで例年桜の開花時期の平日に式を挙げるようになった。
「楽しみです、鹿乃子さんの花嫁姿」
「あ、志芳からウェディングドレスのデザインもあがってきたので、あとでお見せしますね」
いまから、春が楽しみだ。
漸の事務所を借りるのにちょっと揉めたり、志芳の作る漸の衣装が私のに比べて地味で漸が拗ねたり。
祖父に怒られながらも必死に修行をしているうちに、……四月になった。
その日はとても天気がよく、漸の希望通り桜が満開だった。
「この日が待ち遠しかったです」
式は金澤神社で挙げる。
披露宴、は開かずに親しい人たちだけでのお食事会にした。
「……ううっ、私はこんなに緊張してるのに、なんでそんなに漸は余裕なんですか」
差しだされ手に自分の手をのせ、立ち上がる。
「私だって緊張していますよ」
嘘だ、嘘。
あのすました顔で緊張とか……あ。
でも、漸って感情を隠すのが上手いから。
本当に緊張しているのかも。
「漸でも緊張、するんですね」
「はい、もちろんです」
私だけじゃないんだと気づき、少しだけ気が緩んだ。
「可愛いですね、本当に鹿乃子さんは。
特に今日は、可愛いです」
それを見てころころと漸が笑っているということは……もしかして、緊張しているのは私だけなのか!?
ううっ、相手が一回りも年上だと、その手のひらのうえでいいように転がされるかしないでもない……。
「では、行きますか」
「はい」
漸に促され、係の人に先導されて控え室を出る。
神殿へ進む私たちに神社へ来ていた人たちが注目した。
「素敵な打ち掛け」
ちらっ、とそんな声が聞こえて、頬が熱くなる。
「幸せそうな花嫁さんね」
さらに聞こえてきた声で、誇らしくなった。
これは父が私のために作ってくれた、特別な打ち掛けだ。
掛下だって祖父作だし。
さらに縫ったのは祖母と母なので、私は最高の花嫁だ。
それに、隣には最愛の人がいるのだから。
神殿で三三九度の杯を交わした。
もうすでに入籍は済ませたが、それでもこれで本当に漸の妻になったのだ、という気がする。
「鹿乃子さん」
「はい」
差しだした左手に、漸が指環を嵌めてくれる。
結婚指環は漸とふたりで幾つもサイトを見て、決めた。
実際に東京のお店まで行って、細かい打ち合わせもした。
婚約指環も順番が前後したけど、と一緒にオーダーしてくれた。
セミオーダーだから私の指環のサイズも心配しなくていいです、なんて真面目に言っていた漸が、おかしかったな。
「漸」
「はい」
差しだされる漸の左手へ今度は私が指環を嵌める。
とりあえず、じゃなく正式な私のものだという印。
これをもう一生、外させたりしないし、外したりしない。
式が終わり、料亭の予約時間まで時間があるので、そのあいだを写真撮影に当てた。
「モデルさん、なのかな?」
「結婚式場のプロモーション撮影とか?」
すぐに視線が、漸に集まりだす。
なんだかそれに、だんだん腹が立ってきた。
「漸」
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