【完結】あなた色に染まり……ません!~呉服屋若旦那は年下彼女に独占宣言される~
第9章 私と貴方の独占欲8
「なにが嫌だったんですか?
正直に話してくれないと、わかりません」
今度ははっきりと、苦しげに顔が歪んだ。
「私は」
「はい」
「鹿乃子さんのその可愛い笑顔を、私にだけ向けてほしいんです。
他の誰にも、渡したくない……!」
やっと気持ちを吐露した漸は、泣いているようにも見える。
「それは困りましたね」
顔から手を離したら、絶望に沈んでいく。
かまわずに今度は脇から手を入れて、抱き締めた。
「いっそ私を、閉じ込めますか?」
私の肩に顔をうずめ、ううん、と漸が首を振る。
「でもそうでもしないと、私の笑顔を独り占めできませんよ?」
ぎゅっと、私に縋る漸の手に力が入った。
「わかってるんです、一斗に鹿乃子さんを楽しませてほしいとお願いしたのは私ですし、それで鹿乃子さんが楽しんでくれたんならいいんだ、って」
「はい」
子供をあやすように、漸の背中をぽん、ぽん、と軽く叩く。
「一斗が私から鹿乃子さんを奪ったりしないのはわかっています。
鹿乃子さんも私以外の誰のものにもなったりしないのだと。
わかっているからこそ、一斗に鹿乃子さんのお世話を任せたのですが……」
はぁっ、と漸がため息をついた。
「一斗とはいえ、他の男と楽しそうな鹿乃子さんを見たら、冷静でいられなくなりました。
……すみません」
ますますベッドへと顔をめり込ませたあたり、恥ずかしがっているのかな。
「いいんですよ。
私も漸がまた、ああやって接客をして、お客から色目を使われているのだと思うだけで、漸が嫌がっているのがわかっていても腹が立ちますもん」
「……鹿乃子さん?」
ようやく漸は身体を離したが、汚れてしまってよく見えないのか眼鏡を外した。
「嫉妬するなとか言いません。
でも、それなら、……私を漸以外の男とふたりになんかしないで」
立本さんとの一日は確かに、楽しかった。
でも、これが漸となら、って何度も思った。
「鹿乃子さん。
……すみません」
漸の両手がそっと、私の頬に触れる。
「漸は私を、友人とはいえ他の男とふたりにしても平気なんだって悲しかったんです。
私は漸が、仕事でも女性とふたりになるのは嫌なのに」
「一斗だから平気だと思ったんです。
……でも、全然ダメでした」
ふふっと小さく、漸が笑う。
「私は漸を独り占めしたいし、漸に独り占めされたいんです。
……わかり、ますか」
「はい。
私も鹿乃子さんを独り占めしたいし、鹿乃子さんに独り占めされたいですから」
ちゅっ、と漸の唇が目尻に触れる。
それがくすぐったくて、幸せだった。
「漸に閉じ込められて、漸も外に一歩も出ず、ふたりきりで暮らすのはある意味、本望なんです。
でもそんなこと、できませんから」
「それはきっと、素敵な生活ですけどね」
今度は瞼へ、口付けが落とされる。
「だからせめて、私を男とふたりきりにしないで。
できるだけ漸の目の届く場所に私を置いておいて。
……これって、わがままですか」
じっと、漸の目を見つめた。
重いのはわかっている。
けれどせめて、私の気持ちは知ってほしい。
「私がそこまで鹿乃子さんを、縛りつけてもいいんでしょうか」
愛おしい、そんな目で漸が額へ口付ける。
「いいんです。
私は漸に束縛されたいから」
笑ったら、唇が重なった。
「鹿乃子さんも嫌なことは、言ってくださいね」
ようやく落ち着いたのか、私の隣に寝転んで漸が髪を撫でてくれる。
瞼が落ちてきそうなほど気持ちいいが、このまま寝落ちるのは非常にマズい。
いや、酔い潰れて寝落ちていたんだけど。
「ひとつだけ、いいですか」
最後の気力で起き上がる。
そうじゃないと本当に、眠ってしまいそうだ。
正直に話してくれないと、わかりません」
今度ははっきりと、苦しげに顔が歪んだ。
「私は」
「はい」
「鹿乃子さんのその可愛い笑顔を、私にだけ向けてほしいんです。
他の誰にも、渡したくない……!」
やっと気持ちを吐露した漸は、泣いているようにも見える。
「それは困りましたね」
顔から手を離したら、絶望に沈んでいく。
かまわずに今度は脇から手を入れて、抱き締めた。
「いっそ私を、閉じ込めますか?」
私の肩に顔をうずめ、ううん、と漸が首を振る。
「でもそうでもしないと、私の笑顔を独り占めできませんよ?」
ぎゅっと、私に縋る漸の手に力が入った。
「わかってるんです、一斗に鹿乃子さんを楽しませてほしいとお願いしたのは私ですし、それで鹿乃子さんが楽しんでくれたんならいいんだ、って」
「はい」
子供をあやすように、漸の背中をぽん、ぽん、と軽く叩く。
「一斗が私から鹿乃子さんを奪ったりしないのはわかっています。
鹿乃子さんも私以外の誰のものにもなったりしないのだと。
わかっているからこそ、一斗に鹿乃子さんのお世話を任せたのですが……」
はぁっ、と漸がため息をついた。
「一斗とはいえ、他の男と楽しそうな鹿乃子さんを見たら、冷静でいられなくなりました。
……すみません」
ますますベッドへと顔をめり込ませたあたり、恥ずかしがっているのかな。
「いいんですよ。
私も漸がまた、ああやって接客をして、お客から色目を使われているのだと思うだけで、漸が嫌がっているのがわかっていても腹が立ちますもん」
「……鹿乃子さん?」
ようやく漸は身体を離したが、汚れてしまってよく見えないのか眼鏡を外した。
「嫉妬するなとか言いません。
でも、それなら、……私を漸以外の男とふたりになんかしないで」
立本さんとの一日は確かに、楽しかった。
でも、これが漸となら、って何度も思った。
「鹿乃子さん。
……すみません」
漸の両手がそっと、私の頬に触れる。
「漸は私を、友人とはいえ他の男とふたりにしても平気なんだって悲しかったんです。
私は漸が、仕事でも女性とふたりになるのは嫌なのに」
「一斗だから平気だと思ったんです。
……でも、全然ダメでした」
ふふっと小さく、漸が笑う。
「私は漸を独り占めしたいし、漸に独り占めされたいんです。
……わかり、ますか」
「はい。
私も鹿乃子さんを独り占めしたいし、鹿乃子さんに独り占めされたいですから」
ちゅっ、と漸の唇が目尻に触れる。
それがくすぐったくて、幸せだった。
「漸に閉じ込められて、漸も外に一歩も出ず、ふたりきりで暮らすのはある意味、本望なんです。
でもそんなこと、できませんから」
「それはきっと、素敵な生活ですけどね」
今度は瞼へ、口付けが落とされる。
「だからせめて、私を男とふたりきりにしないで。
できるだけ漸の目の届く場所に私を置いておいて。
……これって、わがままですか」
じっと、漸の目を見つめた。
重いのはわかっている。
けれどせめて、私の気持ちは知ってほしい。
「私がそこまで鹿乃子さんを、縛りつけてもいいんでしょうか」
愛おしい、そんな目で漸が額へ口付ける。
「いいんです。
私は漸に束縛されたいから」
笑ったら、唇が重なった。
「鹿乃子さんも嫌なことは、言ってくださいね」
ようやく落ち着いたのか、私の隣に寝転んで漸が髪を撫でてくれる。
瞼が落ちてきそうなほど気持ちいいが、このまま寝落ちるのは非常にマズい。
いや、酔い潰れて寝落ちていたんだけど。
「ひとつだけ、いいですか」
最後の気力で起き上がる。
そうじゃないと本当に、眠ってしまいそうだ。
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