【完結】あなた色に染まり……ません!~呉服屋若旦那は年下彼女に独占宣言される~
第5章 決戦は月曜日8
「はい」
ようやく顔を上げた三橋さんが、ふふっと笑う。
機嫌がよくなっているの、丸わかり。
いったん、マンションへ荷物を置きに戻って、また街へ出た。
「お昼を食べたあとはどこへ行きましょうか?
スカイツリーでも登りますか?」
ランチは、レトロ調のカフェに連れてきてくれた。
オススメだというオムライスは、間違いなく美味しい。
ここは、三橋さんの数少ない、知っているお店らしい。
「そう、ですね……。
スカイツリーもいいですが、私としては東京タワーがいいです」
別に高いところが苦手、というわけではないが、ツン、とすましたスカイツリーよりも、どこかレトロな東京タワーの方が好きだ。
「東京タワー、ですか」
少し、意外そうな顔を彼がする。
「はい。
可愛くないですか、東京タワー。
なんだかレトロチックで」
「やはり、可愛い鹿乃子さんは可愛いですね。
そこは私も、同意見です。
では、このあとは東京タワーへ行きましょう」
三橋さんが嬉しそうに頷く。
好みがあうって、いいよね。
またタクシーで移動の間、三橋さんは携帯でいろいろ調べて計画を練っていた。
「すみません、ずっと放っておいて」
「別にかまいませんよ」
タクシーを降り、恐縮しながら三橋さんが私の手を掴んでくる。
私のためにやっていたのはわかっているし、それに。
真剣な三橋さんの顔は何時間でも眺めていられる、なんて内緒だけど。
三橋さんが決めたプランに沿ってお庭や公園をのんびり散策する。
「寒くないですか」
「はい、大丈夫です」
ちゃんと羽織を着てきたから心配はない。
しかし、日本庭園と着物の三橋さんって絵になるなー。
自然と手がバッグから携帯を出し、かまえていた。
「鹿乃子さん?」
「えっ、あっ、えっと、……もうちょっと、右で!」
「はいはい」
くすくすと笑いながら、彼が指示どおりの場所に立つ。
「うん、最高。
最高です」
――シャラララララ……。
シャッターの音が、静かに響く。
「というか、連写する意味があるんですか?」
「あります!」
はぁはぁと息の荒い自分は、完全に不審人物な自覚はある。
でも、背が高くてスタイルのいい男が、羽織ありでダークブラウンの着物を着ているんだよ!?
さらに顔もよくて、ひとつに結んだ長髪を背中に垂らし、遊び心で眼鏡は太めの黒フレームなんてこんな上物、見逃せないって!
しかもそれがこうやって不審者丸出しで写真を撮っても怒られない相手なら。
「美味しくいただかせていただきました」
「は?」
拝む私に三橋さんは笑顔のまま固まっている。
「私ちょっと、いままでを無駄にしていました……」
いくら撮っても撮り足りないが、あまり撮るとメモリが心配になってくるので、やめた。
あと、周りの目も。
「そんなに?」
「はい。
失敗です……」
結婚なんて絶対しない!と突っぱねていたせいか、目が曇っていた。
いや、まだ結婚を決めたわけではないが。
けれどこんな逸材を放置していたなんて。
「今度、兼六園に行きましょう。
あ、でも、もう寒くなりますね。
ちなみに、三橋さんの着物用防寒着は?」
「コートは一応、持っていますが」
「種類は?」
「二重回しです」
……なんだそれは、最高か……!
想像しただけでごはんが何杯もいけそうです……。
「寒くなったらぜひ、コートを着て写真撮影に行きましょう!」
がしっ、と思いっきり、三橋さんの手を両手で掴む。
ようやく顔を上げた三橋さんが、ふふっと笑う。
機嫌がよくなっているの、丸わかり。
いったん、マンションへ荷物を置きに戻って、また街へ出た。
「お昼を食べたあとはどこへ行きましょうか?
スカイツリーでも登りますか?」
ランチは、レトロ調のカフェに連れてきてくれた。
オススメだというオムライスは、間違いなく美味しい。
ここは、三橋さんの数少ない、知っているお店らしい。
「そう、ですね……。
スカイツリーもいいですが、私としては東京タワーがいいです」
別に高いところが苦手、というわけではないが、ツン、とすましたスカイツリーよりも、どこかレトロな東京タワーの方が好きだ。
「東京タワー、ですか」
少し、意外そうな顔を彼がする。
「はい。
可愛くないですか、東京タワー。
なんだかレトロチックで」
「やはり、可愛い鹿乃子さんは可愛いですね。
そこは私も、同意見です。
では、このあとは東京タワーへ行きましょう」
三橋さんが嬉しそうに頷く。
好みがあうって、いいよね。
またタクシーで移動の間、三橋さんは携帯でいろいろ調べて計画を練っていた。
「すみません、ずっと放っておいて」
「別にかまいませんよ」
タクシーを降り、恐縮しながら三橋さんが私の手を掴んでくる。
私のためにやっていたのはわかっているし、それに。
真剣な三橋さんの顔は何時間でも眺めていられる、なんて内緒だけど。
三橋さんが決めたプランに沿ってお庭や公園をのんびり散策する。
「寒くないですか」
「はい、大丈夫です」
ちゃんと羽織を着てきたから心配はない。
しかし、日本庭園と着物の三橋さんって絵になるなー。
自然と手がバッグから携帯を出し、かまえていた。
「鹿乃子さん?」
「えっ、あっ、えっと、……もうちょっと、右で!」
「はいはい」
くすくすと笑いながら、彼が指示どおりの場所に立つ。
「うん、最高。
最高です」
――シャラララララ……。
シャッターの音が、静かに響く。
「というか、連写する意味があるんですか?」
「あります!」
はぁはぁと息の荒い自分は、完全に不審人物な自覚はある。
でも、背が高くてスタイルのいい男が、羽織ありでダークブラウンの着物を着ているんだよ!?
さらに顔もよくて、ひとつに結んだ長髪を背中に垂らし、遊び心で眼鏡は太めの黒フレームなんてこんな上物、見逃せないって!
しかもそれがこうやって不審者丸出しで写真を撮っても怒られない相手なら。
「美味しくいただかせていただきました」
「は?」
拝む私に三橋さんは笑顔のまま固まっている。
「私ちょっと、いままでを無駄にしていました……」
いくら撮っても撮り足りないが、あまり撮るとメモリが心配になってくるので、やめた。
あと、周りの目も。
「そんなに?」
「はい。
失敗です……」
結婚なんて絶対しない!と突っぱねていたせいか、目が曇っていた。
いや、まだ結婚を決めたわけではないが。
けれどこんな逸材を放置していたなんて。
「今度、兼六園に行きましょう。
あ、でも、もう寒くなりますね。
ちなみに、三橋さんの着物用防寒着は?」
「コートは一応、持っていますが」
「種類は?」
「二重回しです」
……なんだそれは、最高か……!
想像しただけでごはんが何杯もいけそうです……。
「寒くなったらぜひ、コートを着て写真撮影に行きましょう!」
がしっ、と思いっきり、三橋さんの手を両手で掴む。
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