【完結】政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~

霧内杳

最終章 あなただけしか見えない6

痛みに耐えようと力が入り、爪がぷつんと彼の皮膚を破った。

「清華」

名前を呼ばれ、きつく閉じていた目を開く。

「大丈夫か」

問われて、ただ黙って頷いた。
痛い、けれど彼とひとつになれた嬉しさが身体を駆け巡り、涙が溢れてきた。

「泣くほど痛いのか!?」

私が泣きだし、慌てる彼に首を振る。

「幸せ、で」

「俺も幸せだ」

目尻を下げて微笑んだ零士さんの唇が重なり、控えめに私の身体を揺らした。
それは次第に、激しくなっていく。

……なに、これ。

痛いのは最初だけだった。
快楽が私を飲み込んでいく。
身も心も零士さんに満たされ、溢れ……。

……溺れ、る……。



私は今、零士さんの会社で自分のブランドの服を作っている。

「プレスの反応、好評でした!
単独特集を組みたいと、取材の申し込みも入っています」

「本当ですか!?」

打ち合わせで報告を受け、興奮した。

つい先日、ブランドの発表会を行った。
当日の手応えはよかったが、実際の反応は気になっていたので、この報告は嬉しい。

「この調子でどんどんいきましょう、どんどん」

彼女の調子がいいのは、そういう仕様なのらしい。
だんだん、慣れてきた。

「では、よろしくお願いしますー」

打ち合わせを終え、会社を出る。
今日は零士さんが帰ってくる日だから、夕食作りたいなー。

零士さんは仕事の整理をし、前よりも家にいる頻度がずっと増えた。
もともと、株やなんかと不動産収入だけで働かないでも十分やっていける。
会社経営は彼の趣味みたいなものなのだ。

「ただいま」

「おかえりなさいませ」

帰ってきた零士さんの唇が重なる。

「今日は私が作ったんですよ」

「それは楽しみだ」

ソファーでしばらく私とのキスを堪能したあと、零士さんは着替えに行った。
その間に夕食の準備を済ませてしまう。

「美味しそうだな」

本当に嬉しそうに零士さんが食卓に着く。

「俺、牛肉とマグロが好物だと思っていたんだけどさ」

零士さんは今日も美味しそうに私の作った料理を食べている。
それだけで私も嬉しくなっちゃう。

「一番好きなのは清華が作った料理だな」

満面の笑みで彼は、フォークに巻いたパスタをぱくりと口に入れた。

「そう言ってくださるなんて、光栄です」

「毎日でも食べたいけど、そうなると清華が大変だよな。
でも悩む……」

真剣に零士さんは悩んでいてちょっとおかしい。
でも、そんなに喜んでくれるのなら、これからは頻度を増やしてもいいかな。

食事のあとは少しイチャイチャして、零士さんは書斎へ、私も作業部屋へ行く。

「次はどんな服を作ろうかな?」

私のブランドは現在、ウィメンズだけだが、ベビーや子供服に手を出してもいいと思う。
最近、……そんな気がするんだよね。
そろそろいい頃だし明日、検査薬を買ってみようかな。
そうだったら零士さん、喜んでくれるよね。
ちょっと明日が楽しみだ。


【終】

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