【完結】政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
第七章 最低な元上司の許せない事情5
ベッドを立った零士さんがパジャマを持ってきて、私にかける。
「それに清華はなにかと不用心だからな。
これくらいしておかないと安心できない」
真顔の零士さんは少し、怒っている。
そのせいであんな写真を撮られてしまった身としては、反論できません……。
先に風呂に入れと言われて浴室へ行く。
「うわ……」
鏡を見たらデコルテには赤い花弁が無数に散っていた。
「つけすぎ……」
それは下着の際ギリギリにまでついている。
これってもしかして、それだけ――嫉妬、していたんだろうか。
それでもいつもどおりに過ごしているなんて、零士さんの精神力って凄い……。
私だったらヒステリックに叫んで、糾弾しそうだ。
「……ん?」
身体を洗いながら再びキスマークを確認してふと気づく。
これって、着物だったら見えちゃわない?
明日、お茶のお稽古なのにどうしよう。
明日には消えていますように……。
……などという私の願い虚しく、翌日もバッチリ残っていた。
狼狽えていたらメイドさんがコンシーラーとファンデーションで隠してくれて事なきを得たが……次からは見えないところにしてもらいたい。
――その後。
古手川さんは零士さんの後ろ盾のもと銀行から融資が受けられ、ヤバい人への返済もできた。
「鴇田のおかげだ、ありがとう」
店の事務所で私に向かって頭を下げる古手川さんの頬は腫れ、口端には絆創膏が貼られていた。
「あのー、その顔は……?」
もしかして相手から殴られたんだろうか。
だとしたら酷すぎる。
「ああ、これ?
神鷹さんに殴られた」
自分の頬に触れ、いたっと彼は顔をしかめた。
そのわりに爽やかな顔をしている。
「『これは君に裏切られた清華の痛みだ』って言われて……目が覚めたな」
「え……」
本当は尊敬していた彼の裏切り行為に深く傷ついていたのに、零士さんの前では古手川さんにも事情があったんだから仕方ないと笑って済ませていた。
なのに零士さんは、気づいていたんだ。
「いくら追い詰められていたからといって、僕は越えてはいけない線を越えてしまった。
本当にすまなかったと思っている。
なのに、こんな僕に救いの手まで差し伸べてくれて」
古手川さんはどこまでも真剣で、反対に居心地が悪くなってくる。
私としてはずっと、尊敬できる元上司でいてほしかった。
こんなふうに感謝なんてしてほしくない。
「救いの手だなんて、そんな。
私はなにもしていないです。
零士さんが全部、やってくれただけで」
実際、私はなにもしていない。
融資は神野系列の銀行だったので父の名を出せば融通が利いたかもしれないが、それすらしなかった。
……したくなかった。
それは、フェアじゃないから嫌だ。
なら零士さんの後ろ盾はどうなんだって問題だが、先行投資らしいので深く突っ込まないでおく。
それに服のバリエーションが増えたとか喜んでいたし。
「実は、あれで神鷹さんが浮気を疑って、鴇田と離婚すればいい……とか本気で思っていたとか言ったら怒るか?」
「……はい?」
冗談だと思いたいが、古手川さんは少しも笑っていない。
「僕は鴇田が好きだったんだ」
真っ直ぐに彼が私を見つめる。
本気なのはわかったが、私はそれにどう答えれば。
「鴇田は結婚を嫌がっているんだと思っていた。
だからこれは、鴇田を救うための正しい行いなんだって自分に言い聞かせて。
勘違いも甚だしいな」
薄く笑った彼は、そのときの自分を酷く軽蔑しているようだった。
「実際は神鷹さんに愛され、大事にされているんだな」
「えっ、あっ」
彼の視線が私の首もとへ行き、つい手で押さえていた。
古手川さんと会うに当たって、昨晩も零士さんから〝所有印〟をたくさんつけられた。
見えないところにってお願いしたのに、それじゃ意味がないだろと見えるところにたくさん。
しかも、隠すの禁止とか命令されたので、今日は丸見えだ。
「……はい。
大事されて、幸せです」
精一杯の私の気持ちで、笑顔で答えた。
車まで古手川さんが送ってくれる。
「それに清華はなにかと不用心だからな。
これくらいしておかないと安心できない」
真顔の零士さんは少し、怒っている。
そのせいであんな写真を撮られてしまった身としては、反論できません……。
先に風呂に入れと言われて浴室へ行く。
「うわ……」
鏡を見たらデコルテには赤い花弁が無数に散っていた。
「つけすぎ……」
それは下着の際ギリギリにまでついている。
これってもしかして、それだけ――嫉妬、していたんだろうか。
それでもいつもどおりに過ごしているなんて、零士さんの精神力って凄い……。
私だったらヒステリックに叫んで、糾弾しそうだ。
「……ん?」
身体を洗いながら再びキスマークを確認してふと気づく。
これって、着物だったら見えちゃわない?
明日、お茶のお稽古なのにどうしよう。
明日には消えていますように……。
……などという私の願い虚しく、翌日もバッチリ残っていた。
狼狽えていたらメイドさんがコンシーラーとファンデーションで隠してくれて事なきを得たが……次からは見えないところにしてもらいたい。
――その後。
古手川さんは零士さんの後ろ盾のもと銀行から融資が受けられ、ヤバい人への返済もできた。
「鴇田のおかげだ、ありがとう」
店の事務所で私に向かって頭を下げる古手川さんの頬は腫れ、口端には絆創膏が貼られていた。
「あのー、その顔は……?」
もしかして相手から殴られたんだろうか。
だとしたら酷すぎる。
「ああ、これ?
神鷹さんに殴られた」
自分の頬に触れ、いたっと彼は顔をしかめた。
そのわりに爽やかな顔をしている。
「『これは君に裏切られた清華の痛みだ』って言われて……目が覚めたな」
「え……」
本当は尊敬していた彼の裏切り行為に深く傷ついていたのに、零士さんの前では古手川さんにも事情があったんだから仕方ないと笑って済ませていた。
なのに零士さんは、気づいていたんだ。
「いくら追い詰められていたからといって、僕は越えてはいけない線を越えてしまった。
本当にすまなかったと思っている。
なのに、こんな僕に救いの手まで差し伸べてくれて」
古手川さんはどこまでも真剣で、反対に居心地が悪くなってくる。
私としてはずっと、尊敬できる元上司でいてほしかった。
こんなふうに感謝なんてしてほしくない。
「救いの手だなんて、そんな。
私はなにもしていないです。
零士さんが全部、やってくれただけで」
実際、私はなにもしていない。
融資は神野系列の銀行だったので父の名を出せば融通が利いたかもしれないが、それすらしなかった。
……したくなかった。
それは、フェアじゃないから嫌だ。
なら零士さんの後ろ盾はどうなんだって問題だが、先行投資らしいので深く突っ込まないでおく。
それに服のバリエーションが増えたとか喜んでいたし。
「実は、あれで神鷹さんが浮気を疑って、鴇田と離婚すればいい……とか本気で思っていたとか言ったら怒るか?」
「……はい?」
冗談だと思いたいが、古手川さんは少しも笑っていない。
「僕は鴇田が好きだったんだ」
真っ直ぐに彼が私を見つめる。
本気なのはわかったが、私はそれにどう答えれば。
「鴇田は結婚を嫌がっているんだと思っていた。
だからこれは、鴇田を救うための正しい行いなんだって自分に言い聞かせて。
勘違いも甚だしいな」
薄く笑った彼は、そのときの自分を酷く軽蔑しているようだった。
「実際は神鷹さんに愛され、大事にされているんだな」
「えっ、あっ」
彼の視線が私の首もとへ行き、つい手で押さえていた。
古手川さんと会うに当たって、昨晩も零士さんから〝所有印〟をたくさんつけられた。
見えないところにってお願いしたのに、それじゃ意味がないだろと見えるところにたくさん。
しかも、隠すの禁止とか命令されたので、今日は丸見えだ。
「……はい。
大事されて、幸せです」
精一杯の私の気持ちで、笑顔で答えた。
車まで古手川さんが送ってくれる。
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