【完結】政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~

霧内杳

第六章 デートはホテルで7

どうしたらいいか悩んでいたら、零士さんの手が私の身体を弄っているのに気づいた。

「えっ、ちょっ、……んんっ」

……これ、起きてないんだよね……?

本当にどうしていいのかわからない。
それに豪語していただけあって……キモチイイ。

「えっ、ヤダ、零士さん」

やめさせようと手を叩くが止まらないし、目も覚まさない。
零士さんとどうこうというのにすでに抵抗はないが、それでも寝ぼけては嫌だ。

「零士さんってば!」

強く声を出したら、動きがぴたりと止まった。

「……きよか……?」

まだ完全に目の覚めきっていない声が聞こえる。

「えっと、とりあえず離していただけますか……?」

「あ、……うん」

零士さんの手が緩んだので抜け出し、起き上がって乱れた服を直した。

「あー、……なんかすまない」

「……いえ。
寝ぼけていたなら仕方ないので……」

ふたりとも目を合わせないように背中を向け、ぼそぼそと話す。

「食事して帰るだろ?
このまま泊まってもいいが、どうする?」

話しながら零士さんはサイドテーブルに置いてあった眼鏡をかけた。

「私は泊まりでもいいですが、零士さんのご予定はどうなんですか」

「少しくらいなら大丈夫だ。
なら、泊まって帰るか」

ようやくこちらを向いた彼が私の頭を照れくさそうにぽんぽんする。

「わるかった」

「いいんですよ、気にしてないですから」

自分から零士さんに抱きつくと、彼は私を膝の上にのせた。

「なに食べる?」

「そうですね……。
そう言えば零士さんはマグロのお寿司以外でなにが好きなんですか?」

あまりにも彼と過ごした日数が少なすぎて、まだ知らないことがたくさんある。
せっかくできた時間だし、この機会に理解するのもいいかも?

「すき焼きかしゃぶしゃぶかな」

「じゃあ、それにしましょう!」

いい考えだと胸の前で軽く手を打つ。

「俺の好きなのでいいのか?」

「はい、零士さんの好きなものが食べたいです」

少し不安そうな彼に笑って答える。

「そうか、わかった。
ここの和食レストランのしゃぶしゃぶが美味いんだ」

私を抱いたまま、零士さんが立ち上がる。
彼に抱っこされたまま部屋を出た。
街中ではないし必要ないんじゃないかなとは思うけれど、彼がそうしたいんならいいか。

レストランフロアで彼オススメの料亭に入った。
江戸時代から続く店で、ここではないが私も両親に連れられていったことがある。

なにも言わずに個室へ案内された。

「いつもの頼む」

メニューもなにも見ずにそう言って注文したあたり、ここの常連なのかもしれない。

「飲むだろ?」

さすがに飲み物はメニューを渡してくれた。

「そうですね……」

開いたものの、つい前日お酒で失敗した身としては遠慮したい。

「まだ気にしてるのか」

迷っていたらくすくすとおかしそうに零士さんから笑われ、頬が熱くなっていく。

「……それは、一応」

そのせいで零士さんは私を待って寝落ちるほど、寝不足だった。
気になるに決まっている。

「飲み過ぎなければいいだけだ」

なんでもない顔で言われ、さらに顔が熱くなった。
わかっていてあの結果だけに、耳が痛い。

「じゃ、じゃあ一杯だけ」

「うん」

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