【完結】政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~

霧内杳

第四章 素敵な結婚式の計画9

零士さんが顔を近づけ、自分の着けたピアスに吐息をかける。

「俺が、清華の身体に入っている」

「……んっ」

確認するかのように、零士さんはれろりとピアスを舐め上げた。
おかげで、耐えきれなくなって小さく声が漏れる。

「これでいつも、俺は清華と一緒だな」

「……あっ」

零士さんは私の耳を嬲り続けた。
ぴちゃぴちゃという音が耳に響く。
ぞわぞわとした感覚が身体の奥から湧き上がってきた。
それを堪えようと、強く彼の腕を掴むが止めてくれない。

「零士、さん……」

ぎゅっと力一杯、零士さんの腕を握る。
それでようやく、彼は顔を離した。
涙が浮かびはじめた目で彼をうかがう。

「そんな目をされたら……我慢できなくなるだろ」

次の瞬間、噛みつくみたいに唇が重なった。
何度も、何度も、彼の唇が私の唇を食む。
それが酷く、もどかしい。

「……今日はここまでだ。
マイ、フェアレディ」

自身が濡らした私の唇を、彼は指で拭った。

「……はい」

熱に浮かされた目で零士さんを見上げる。
ちゅっと額に落とされた口付けは先ほどまでと違い、子供扱いされているようでむっとした。

「そうだ、ウェディングドレスとタキシードのデザインができたんですよ」

まだ熱の冷めない顔で視線を逸らし、話題を変える。

「できたのか。
それは楽しみだな」

「はい、ちょっと待っていてくださいね」

逃げるように立ち上がり、自分の部屋へと向かう。
……今日の零士さん、いつもにもまして攻めてきたなー。
今でこれって、それのときってどうなっちゃうんだろ?
……いやいや、今はまだ考えない。

「お待たせしまし、た……」

リビングに戻ると、零士さんは肘掛けに頬杖をついて眠っていた。

「零士、さん……?」

視線に気づいたのか、眼鏡の奥でゆっくりと彼の目が開く。

「……ああ、すまん。
ちょっと寝てた」

目が合って彼はにっこりと笑ったが……やっぱりお疲れなんだ。

「デザイン画、見せてくれ」

「ああ、はい」

笑顔を作って持ってきたデザイン画を差し出す。

「素敵だな」

「本当ですか!?」

隣に座った私の腰を零士さんが抱き寄せる。
一緒に顔を寄せて、デザイン画を見た。

「ここのトレーンがですね、取り外しができるんですよ。
お式のときはトレーン付きで、終わってパーティのときは外して身軽になれるようにしたいんです」

デザイン画を捲って外したバージョンのものを見せる。

「凄いな、そんなことが考えつくなんて」

「で、零士さんの衣装も、ベストを変えてイメージが変えられるようにしようと思って」

「うんうん」

私の話を零士さんは嬉しそうに聞いている。

「でも式場がクラシカルじゃないですか、絶対に零士さんはフロックコート風の方がいいと思うんですよね。
零士さんはスタイルいいからどんなものでも着こなせそうだし」

「清華から褒められると嬉しいな」

ふふっと小さく笑い、零士さんが私の額へ口付けしてくる。
それがくすぐったくて心地いい。

「どっちがいいですか?」

タキシードとフロックコートのデザイン案を並べる。
私としてはフロックコート押しだが、コスプレ色が……とかもし言われたら諦めるしかない。

「どっちも素敵で選べないな。
清華はどっちがいいんだ?」

「あ、……フロックコートの方です」

私こそ、零士さんに褒められて気持ちがふわふわする。
少し熱い顔で俯き気味に、フロックコートの方を指した。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品