【完結】政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
第一章 自由の終わりと25歳の誕生日4
途中で適当な洋服店に寄ってくれた。
セミカジュアルなお店だったのでいつもどおりデニムパンツを選びかけて止まる。
スーツの零士さんと釣り合わないし、神鷹の奥様としては……とか言われるかもしれない。
「どうしたんだ?」
私が選んだ服を棚に戻し、彼は怪訝そうだ。
「いえ……」
もっと、上品なワンピースとか選んだ方がいいんだろうか。
なんて移動しかけたけれど。
「好きな服を買えばいいだろ。
服で人間の価値が変わるわけでもないんだし」
私が棚に戻したデニムパンツを手に取り、零士さんが押しつけてくる。
「そう、ですね。
そう、します」
緩みそうになる顔を見られないように服を選ぶフリをして彼に背を向ける。
好きな服を買えばいいなどと言ってくれるなんて思ってもいなかった。
彼はきっと、よき旦那様になるだろう。
買った服に着替えて店を出る。
ライトブルーのパンツにベージュのオフショルダーでバルーン袖のブラウス。
それにあわせてバッグとサンダルも買ってくれた。
着替えも、と思ったが、それは現地で買えばいいと言われた。
役所へ行って提出した書類は問題なく受理された。
これで私は零士さんと、夫婦になったというわけだ。
空港へ向かいながらふと思う。
今ってちょうど、パリ オートクチュール コレクションの時期だ。
もし行けたら……ってきっと無理だし、それに許可が出たとしても招待状がないから入れない。
空港に着いて、どこの航空会社の飛行機に乗るのかな、零士さんの会社『フージンエアライン』にヨーロッパ便はないはずだし、他社かな……。
とか考えているうちに連れてこられたのは、プライベートジェットの搭乗口だった。
「零士さん?」
「ん?
どうかしたのか?」
不思議そうに彼が私を見下ろす。
そうか、彼にとって海外にプライベートジェットは当たり前なのか……。
てきぱきと搭乗手続きを終え、飛行機に乗る。
キャビンは広く、快適に過ごせそうだ。
「我が社の飛行機で、といきたいところだが、まだヨーロッパ路線は就航していないからな。
将来の目標だ」
早速、零士さんはシャンパンを傾けている。
フージンエアラインは廃業寸前のLCCを零士さんが買い取り、新会社として立て直した航空会社だ。
月一回数量限定で発売される〝旅行ガチャ〟などが話題を呼び、業績は上々。
近く、台湾路線も就航予定だ。
ちなみに旅行ガチャで航空券と共にセットされているホテルも、零士さんの経営だったりする。
目的地のパリまで十二時間のフライト。
その間、なにをしていたのかと言えば……これからの生活での取り決めをしていた。
「基本、俺はほとんど家にいない。
よかったな」
ニヤリと右の口端をつり上げ、零士さんが皮肉っぽく笑う。
「別によかったとか思わないですが。
ほとんどいないってなにをしているんですか」
それをしれっと流して素知らぬ顔でお茶を飲む。
「仕事であちこち飛び回っているから滅多に家に帰れないんだ。
でも安心しろ、浮気はしない」
「はあ」
零士さんはドヤ顔だが、それって本当なのかな……?
この世界、浮気とか当たり前だし、それでなくても零士さんはイケメンだから、その気がなくても女性の方から寄ってきそうだ。
「そう言えば私と結婚するに当たって、別れた女性とかいなかったんですか?」
もし仕方なく別れた方がいるのなら、別に引き続きその方と付き合ってもらってもかまわない。
これは愛のない政略結婚なのだから、それくらいは飲み込める。
「いないな。
付き合っている女がいたのはもう……十二、三年前か」
思い出しているのか少しのあいだ宙を見たあと、彼はレンズ越しに私と視線を合わせ真顔で頷いた。
「仕事が楽しくて女とかどうでもよかったな。
ま、仕事が恋人というヤツだ」
零士さんはなんでもない顔でカップを口に運んだが、そんなに昔からワーカーホリックだったんだろうか。
今もかなり忙しいみたいだし、ちょっと心配。
妻として無理をさせないように、気をつけておくべきかな。
「反対に清華こそ、付き合っている男がいたんじゃないのか?」
何気なく彼は聞いてきたが、その声にはどこか殺気、のようなものを感じた。
もしかして結婚するまでは純潔が当たり前、とか思っているんだろうか。
「あー……。
私も仕事が恋人だったのでいないですね」
セミカジュアルなお店だったのでいつもどおりデニムパンツを選びかけて止まる。
スーツの零士さんと釣り合わないし、神鷹の奥様としては……とか言われるかもしれない。
「どうしたんだ?」
私が選んだ服を棚に戻し、彼は怪訝そうだ。
「いえ……」
もっと、上品なワンピースとか選んだ方がいいんだろうか。
なんて移動しかけたけれど。
「好きな服を買えばいいだろ。
服で人間の価値が変わるわけでもないんだし」
私が棚に戻したデニムパンツを手に取り、零士さんが押しつけてくる。
「そう、ですね。
そう、します」
緩みそうになる顔を見られないように服を選ぶフリをして彼に背を向ける。
好きな服を買えばいいなどと言ってくれるなんて思ってもいなかった。
彼はきっと、よき旦那様になるだろう。
買った服に着替えて店を出る。
ライトブルーのパンツにベージュのオフショルダーでバルーン袖のブラウス。
それにあわせてバッグとサンダルも買ってくれた。
着替えも、と思ったが、それは現地で買えばいいと言われた。
役所へ行って提出した書類は問題なく受理された。
これで私は零士さんと、夫婦になったというわけだ。
空港へ向かいながらふと思う。
今ってちょうど、パリ オートクチュール コレクションの時期だ。
もし行けたら……ってきっと無理だし、それに許可が出たとしても招待状がないから入れない。
空港に着いて、どこの航空会社の飛行機に乗るのかな、零士さんの会社『フージンエアライン』にヨーロッパ便はないはずだし、他社かな……。
とか考えているうちに連れてこられたのは、プライベートジェットの搭乗口だった。
「零士さん?」
「ん?
どうかしたのか?」
不思議そうに彼が私を見下ろす。
そうか、彼にとって海外にプライベートジェットは当たり前なのか……。
てきぱきと搭乗手続きを終え、飛行機に乗る。
キャビンは広く、快適に過ごせそうだ。
「我が社の飛行機で、といきたいところだが、まだヨーロッパ路線は就航していないからな。
将来の目標だ」
早速、零士さんはシャンパンを傾けている。
フージンエアラインは廃業寸前のLCCを零士さんが買い取り、新会社として立て直した航空会社だ。
月一回数量限定で発売される〝旅行ガチャ〟などが話題を呼び、業績は上々。
近く、台湾路線も就航予定だ。
ちなみに旅行ガチャで航空券と共にセットされているホテルも、零士さんの経営だったりする。
目的地のパリまで十二時間のフライト。
その間、なにをしていたのかと言えば……これからの生活での取り決めをしていた。
「基本、俺はほとんど家にいない。
よかったな」
ニヤリと右の口端をつり上げ、零士さんが皮肉っぽく笑う。
「別によかったとか思わないですが。
ほとんどいないってなにをしているんですか」
それをしれっと流して素知らぬ顔でお茶を飲む。
「仕事であちこち飛び回っているから滅多に家に帰れないんだ。
でも安心しろ、浮気はしない」
「はあ」
零士さんはドヤ顔だが、それって本当なのかな……?
この世界、浮気とか当たり前だし、それでなくても零士さんはイケメンだから、その気がなくても女性の方から寄ってきそうだ。
「そう言えば私と結婚するに当たって、別れた女性とかいなかったんですか?」
もし仕方なく別れた方がいるのなら、別に引き続きその方と付き合ってもらってもかまわない。
これは愛のない政略結婚なのだから、それくらいは飲み込める。
「いないな。
付き合っている女がいたのはもう……十二、三年前か」
思い出しているのか少しのあいだ宙を見たあと、彼はレンズ越しに私と視線を合わせ真顔で頷いた。
「仕事が楽しくて女とかどうでもよかったな。
ま、仕事が恋人というヤツだ」
零士さんはなんでもない顔でカップを口に運んだが、そんなに昔からワーカーホリックだったんだろうか。
今もかなり忙しいみたいだし、ちょっと心配。
妻として無理をさせないように、気をつけておくべきかな。
「反対に清華こそ、付き合っている男がいたんじゃないのか?」
何気なく彼は聞いてきたが、その声にはどこか殺気、のようなものを感じた。
もしかして結婚するまでは純潔が当たり前、とか思っているんだろうか。
「あー……。
私も仕事が恋人だったのでいないですね」
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