狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

羽村美海

ヤクザと激甘新婚生活!?③


 しばらくの間、尊は無言のまま美桜のことを抱きしめたままでいた。

 ただそれだけのことなのだが、尊に淡い感情を抱いているせいか、この行為になにかしらの特別な意味があるような気がしてしまう。

 ーーこの時間が永遠に続いてくれればいいのに。

    そんなことをひっそりと願っていた。

 そんな束の間の時間を経て、尊のぬくもりがゆっくりと離れていく。

 おそらくソファからベッドに移動するためだろう。

  その僅かな時間さえも離れたくないと思ってしまう美桜の胸に、いいようのない寂しさが込み上げる。

 けれどもそれは美桜の思い違いだったと気づくことになる。

 なぜなら離れていくと思っていた尊が眼前にぐっと迫ってきて、正面から顔を覗き込んできたからだ。

 尊の不意打ちに目を丸くする美桜に対し、尊は意地の悪い言葉で羞恥を煽ってくる。

「俺に早く抱いて欲しいからって、そんなに物欲しそうな顔をするな」
「////ーーッ!?」

 心の中を見透かしたような尊からの指摘に、美桜は全身を真っ赤にさせ身悶える。

 尊は美桜の初心な反応に気を良くしたのか、してやったりというような表情を決め込んでいる。

 その態度からも、尊と美桜との想いの差は歴然だ。

 羞恥に塗れながらも、美桜は悔しさを覚えムッとしてしまう。

「俺の奥さんは大人しそうな顔をして、意外とよく怒るよな」
「そ、それは、尊さんが怒らせるからじゃないですかッ!」

 尊の意地悪な追撃に思わず言い返していた。

 すると尊は憤慨した美桜のことを思いの外優しげな表情で見つめてくる。

 機嫌でもとってくるつもりに違いない。

 ーーいつもいつもそんな手には乗らないんだから。

 キッと鋭い視線で尊のことを見据えて身構えていたというのに……。

    ここぞとばかりに放たれた尊からの予想に反する言葉に、美桜の心は掻き乱され大いに戸惑ってしまう。

「普段おっとりしているお前が、俺にだけ感情を曝け出してると思うと、堪らなくなるんだからしょうはないだろ。だがもうそれだけじゃ物足りない。まだ俺の知らないお前のことをもっともっと暴き出してやりたくなる。そんな風に思わせるお前が悪い」

 尊の口吻は、相変わらず傲慢なものだ。

 けれどそこかしこに、これでもかというように、思わせぶりな要素をチラつかせたものだった。

 尊は、混乱気味の美桜の頭を大きな手で優しく宥めるようにポンポンと撫でるとトドメの一撃のように尚も甘く囁いてくる。

「だからもう諦めて、俺になにもかも曝け出してしまえ。いいな?    美桜」

    そんな風に言われてしまえば、美桜にはもう抵抗など示すことなどできない。ただコクンと頷くしかなかった。

 やはり尊にはどう足掻いたって敵わないらしい。

   今一度そのことを再確認させられた美桜は、尊により軽々と抱き上げられいよいよベッドへと運ばれた。


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