狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

羽村美海

ヤクザから突然のプロポーズ!?③

 そんな想いを抑え込むためにも、美桜は大好きな花々を愛でることで気を紛らわせた。

 とはいえ、これまで恋の経験のなかった美桜は、ほんのりと桜色に染めた頬を生けた花々に負けないくらい満開に綻ばせていているものだから、全くと言っていいほど、嬉しさを隠しきれないでいるのだが。

 つい先ほどまでヒサのことを叱りつけていたヤスもヒサも、そんな美桜の様子から全てを察しているのか、ふたりは顔を見合わせ、ニヤニヤとニヤつきつつ静かに見守っている。

 そんなこんなで、極道者ではあるが優しいふたりのお陰もあって、極心会での初日は、意外にも穏やかに過ごすことができていた。

 ただ残念だったのが、尊の仕事が思いの外忙しいようで、美桜が寝付いた頃にならないと帰ってこられないことだ。

 加えて、美桜がフラワープロジェクトの監修を務めることになった件で、美桜を取り巻く環境もがらりと変わってしまった。

 二週間が経った今では、T&Kシステムズの運営するサイトでの特集に掲載するコメント記事の作成にはじまり、写真撮影に動画の収録にと、美桜も連日のように奔走するようになっている。

 勿論、世話係兼護衛のヤスと慣れないスーツ姿が初々しいヒサも同行してくれている。

 慣れないことの連続で緊張もするが、ふたりのお陰で、いい感じで肩の力が抜けて、やり甲斐も感じることができている。

 なにより、尊や大好きな花のために役に立てることが嬉しくて仕方なかった。

 これまでの人生の中で、一番充実した時間を過ごしているかもしれない。

 ただ唯一の弊害があるとすれば、一緒に暮らしていても、尊とはすれ違う日々が続いているということ。

 美桜が眠りについてから帰宅する尊と一緒の時間を過ごせるのも、朝のほんの束の間だけ。

    それがどうにも寂しくてならない。

 だがこれも自分との結婚に向けての準備の一環でもあるのだと、自分自身に対して何度も言い聞かせていた。

 来週、形式的な結納を予定しているのだが、それが終わったら、すぐに入籍と挙式が控えている。

 ーーあと少しの辛抱だ。

 慌ただしい日々の中で、そんな風に結婚までのカウントダウンを指折り数えて心待ちにしていた美桜の元に、ヤスを通じて、尊から思わぬ報せが入ったのは、形式的な結納を終えてから一週間が経った頃。

 来週末には、いよいよ尊との挙式と入籍を果たせるということで、美桜の心もにわかに浮き足立ってきた、爽やかな晴れ間が続き草花も鮮やかに綻ぶ五月を迎えたばかりの週末の仕事上がりのことだった。

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