Gear-Theater(ギア・シアター)

小本 由卯

2 セットアップ

 他の工房への挨拶周りを終えた3人は、工房の運用準備を
進めていた。

 設備の稼動作業を進めるアンベル。
 静かだった工房に、機械の稼動音が響き渡る。

 アンベルが起動準備を任されてから、ある程度が経った頃、2階で別作業を
行っていた青年2人が、アンベルの元へと降りてきた。

「もうここまで終わったのか!」
「やっぱりアンに任せて正解だったね」
 アンベルの手馴れた作業に、2人は感心の声を上げた。

「それで、そっちはどう? 重かったでしょう」
「大丈夫だ、こっちも大体終わった」
「良かった、それなら……」

「ねぇ、この調子なら明日には準備が整いそうだし、少し街に出てみない?」
 と、アンベルが2人に提案する。
 
「役場の場所とかも確認しておきたいし、それに……」
「買いに行かないと無いよ、ご飯」
 アンベルの言葉に、青年2人は反対する理由が無かった。

 ……。
 3人は、中央区を歩いていた。
 街の全体図を片手に、実際の風景を頭に叩き込む。
 
「ここが、医療施設だね」
「まぁ、来なくて済むことを祈るがな」
「で、その先が……」

 先に見えたのは、役場の入口。
 近づくと、先ほど見た人物が入口の前に立っていた。
 ナヴィーが、部下と思わしき青年と女性の2人と話している。
 忙しそうなナヴィーの姿を見て、邪魔になる前にと3人は役場を後にした。
 
 その後、商業区で食料などの調達を終えた3人は帰路につく。
 商業区の広さ、物資の種類の多さにより、予想よりも時間を掛けてしまったが
3人は明るい表情を浮かべている。

 空もすっかり暗くなっていたが、街の光源のおかげで視界に
不便は無く、人々も朝と変わらない活気に溢れていた。
 
 足早に歩く中、突然ブランフドが足を止め、上を見上げる。
「どうした? ブラン」
 気になったノワルフがブランフドの視界の先を向いた。 

 見えたのは、夜空を背に輝く時計塔。
 外周に設置された光源が、その存在を際立たせていた。
「どうしたの?」
「あ、ごめん! ちょっと時間が気になっただけ」
 心配そうに声を掛けるアンベルに対して、ブランフトは慌てて答える。

 夜空の下、光源に照らされた通路を歩きながら、3人は工房へと帰っていった。

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