Gear-Theater(ギア・シアター)

小本 由卯

3 守衛協会

 無事に運用許可を得た第4工房は、街の工房として本格的に運用が開始された。
 そして、工房の主である3人は、それぞれ別々の行動を取っていた。

(……?)
 街を歩いていたブランフドの視界に、謎の団体が映り込む。
 全身を機械の鎧で武装した団体が、街の外へ向かって歩いている。
 
 団体を疑問の眼差しで見つめるブランフド。
 そんなブランフドが気になったのか、声をかける者がいた。

「彼らを見るのは初めてか?」
 話しかけてきたのは、長い鞄を背負った青年だった。

「はい、この街に来て、また日が経っていないので」
「……まさか貴方は、第4工房の?」
 ブランフドの返事に対して、青年は勘づいたように問いかけた。

「はい、あ、ブランフド・ルノージュです」
「私はオリアン・シトローネ、守衛協会の者だよ」

「守衛協会って確か、この街の防衛団体ですよね?」
「その通り、そして守衛協会の者達は、特別に街中での武装が認められている」
 オリアンの言葉によってブランフドは、あの武装団体の正体に気がついた。

「じゃあ、あの人達も?」
「そう、彼らも守衛協会の者達だよ、危険地帯などに入ったりする時は
あのようにそれなりの武装を使うことになる」

「守衛協会の任務って思った以上に危険なんですね……」
「規律さえ守っていれば大丈夫だよ」
「しかし、どの大陸にも危険な生物は潜んでいたりするから、絶対に安全とは言え
ないが……」

 その時、2人の会話を遮るように鐘の音が街に鳴り響いた。
 時計塔が発する、定刻を告げる鐘の音だった。
 鐘の音が鳴り止むと、我に返ったようにオリアンが言葉を続ける。

「……申し訳なかった、つい話しかけてしまって」
「いえ、この街の事がまた少し分かりました」
 
 ブランフドは最初に気になっていた疑問を問いかける。
「あの、どうして僕が第4工房の人間だって分かったんですか?」
「実はあの工房、長い間使われていなかったのだが、希望者が出たって事で少し話題になっていてね、それでまさかと思ったんだ」

 話を終えたオリアンは、手にしていた長い鞄を背負い直すと、ブランフドに
向き直った。
「工房と守衛協会の人間なら、また会えるだろう、何せあの武装だって守衛協会が使えるのは工業区の人々のおかけだからね」

 別れの挨拶を告げるオリアンを、ブランフドも礼を言って見送った。

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