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人間の物語

猫狐冬夜

気色悪い化学的秩序と世界喪失の始まり

~学校終了~授業が終わり、家に帰る。帰り道、
目はいているけど、何も見ていない。ただ、彼女の事を考えている。
名前も知らない、今日、初めて会ったばかりの彼女を。もう、あの出来事を、何十回も、
心の中で再生している。自分の記憶力に驚くくらい、よく覚えている。自分の記憶力に
驚く隙もないくらい、あの時から、心を奪われている。囚われている。赤くなった顔、
訝しげな顔、別れ際に見せた笑顔、綺麗で可愛い声。ただただ愛おしい、狂おしい。
本当に彼女は今も存在しててくれるのか、常に目の前において、触って感じ続けて
いないと、消えてしまいそうで怖い。何処か狂ったような、いや、狂った自分に、
何処か恐怖を感じるとともに嘲笑する。昔から自分は異常者だ、この世界からどれだけ
離れてしまおうと、今更、気にする必要はない。ただ、もう一度、会いたい。
会って、見て、聞いて......触れたい。何なのだろう、この気持ちは、いや、そんなことは
どうでもいい、この世界なんてどうでもいい、彼女が世界だ。いつの間にか、自分の
家の庭にいた。いつ、庭に着いたのだろうか。もしかしたら、ずっと前に庭についてて、
ずっと突っ立ってたのかもしれない。久しぶりに、軽く笑う、自分を笑う。嫌な笑い方
しかできないものだ。でも、それでも、微笑みが消えない。まあいい、働こうか。彼女
の言った時間まで、まだまだ時間がある。まず、軟葉や硬塊などの植物を収穫する。
30^2×30×1.2mの円柱の形をした籠に素手で掴んで入れていく。
30分ほどで収穫し終わり、回収箱に入れる。すると回収箱から機械音声が流れる。
[34791g 今日現在の順位、上位47%。今までの合計量 293481kg 合計順位 下位21%]
他の人はこれを楽しみに毎日を送っているといっても過言じゃない。自分はこんなものを
楽しむだけの人生は最悪だが。さて、次に...柱肉蟲のエサやりだ。柱肉柱のエサ
硬塊コゥカイ死生物シセイブゥツ子蝟胃夢スェイムの体液を混ぜたものだ。ちなみに
、死生物は、川に泳ぐあれで、名前の由来は、[昔は海を流れる死体だったが、ある時から
動くようになった。]という。言い伝えからきている。さて、柱肉柱のエサは専用のトレー
の上にある。このトレーは1㎡で、地面に繋がったパイプから、このトレに排出
される。このトレーは重量計測ができ、トレーからエサがなくなった時、エサがトレーに
排出される。柱肉柱は一日に125kg食べる。トレーのところに行くと直径60cmの球体の
エサが置いてあった。白茶の不気味な色だ。このトレーは車輪付きの荷車でもある。荷車
の取っ手をつかみ柱肉柱のところまで押して行く。あんまり、柱肉柱は見たくないのだが
放っておいて餓死されるのは嫌だ。まったく、試しに飼うなんて事をした3年前の行為を
恨む。目の前の長く太い円柱型の生物。生々しい肌から長さは16mにもなる。近くにエサ
を放って逃げるようにその場を立ち去る。それには顔がある。だが、その顔はあまりにも
悍ましい。臓器が露出したような顔をしていて、その小さな目で見つめられると恐怖が
背中を走る。柱肉柱に水をやる必要はない。柱肉柱はドライ代謝を行う生物で体液も
ない。そして、柱肉柱は成長が完了すると一匹1g、千万匹程に分裂する。この柱肉柱も、
もうすぐそうなるのだが、見てみたい気もするけど、見たくない気もする。次に子蝟胃夢
のエサやりとミルクの回収だ。子蝟胃夢は特殊な生物だ。例えるなら、ミルクで培養
された内臓だ。白く半透明薄い皮に包まれたトロトロの白い液体。それは球体を地面と
平行な面で半分に切った形をしている。頂上では細長い臓器が中でぶら下がっている。
その臓器は、体液ポンプ、体液製造器、子種製造器、からなる。老廃物はどうしている
のかというと、皮膚にろ過機能があり、皮膚から尿がにじみ出てくるのだ。そのにじみ
出た尿は、野生では捕食対象を匂いで誘導する役目がある。ただ、捕食対象といっても、
どちらが食われるか、五分五分で、相手が食いついて皮が破れた時、相手を体液で
溶かし、皮を再生して取り込めれば生き残れるが内臓を食われると死ぬ。また、時折、
子種を体液ポンプで発射する。子種は1㎞程、飛ぶ。そして、エサをやる方法は、これ
また特殊だ。子蝟胃夢に接続している機械に、硬塊と軟葉ナゥハを機械に投入する。
すると、機械、子蝟胃夢にそれらが入り、数時間もたてば同化するのだ。そして、この
機械にはまだ役目があり、固いレバーを引くと、その力を使って、川と繋がっている管
から海水を吸い上げ子蝟胃夢の中に注がれる。これは...1キロリットル、注がなきゃ
いけないから20分くらい時間がかかる。そして、最後に、この機械を使って子蝟胃夢
からミルクを吸い出し、車輪付きバケツに貯めるのだ。このミルクと呼ばれる液体は酷く
濃厚な酸性の匂いがする。そして、一度、興味本位で少し舐めたことがあるが。胃液に
精液を混ぜた味がした。精漿の味を何で知っているかというと......興味本位だ、飲んでは
いない。そして、その車輪付きバケツを硬塊や軟葉を栽培している、川沿いの畑に注ぐ。
硬塊は、骨と肉を混ぜた球体といった感じで、軟葉はヒダヒダの臓物といった感じだ。
次に、川に釣竿を設置しておく。本当は最初にやっておくのだけど、珍しく忘れていた。
柱肉柱のエサのトレーの右隣にある、物置を開け、5mの釣竿を持つ。この釣竿は川に
平行に設置する。糸は釣竿に垂直に50本、巻き付いていて、糸を巻き取ったりする機能
はない。魚が引っかかったら、釣竿横にもって、引くのだ。また、この釣竿は、15kg程
なので、魚に取られることはない。そして、一番の特徴は、この釣り糸は柱肉柱の糞
であるという事だ。柱肉柱は太さ1ミリでちぎれにくく、カロリーが高いが猛毒の糞を
するのだ。野生ではカロリーの高さを匂いで察知した生き物がそれを食べ、毒で死に、
それを柱肉柱が食べる。しかも、この糞は、トゲトゲしていて、吐き戻すことができ
ない。だから、この糞を垂らしておくだけで釣りができるのだ。
~9時間が経った。本来なら、普通は、まだ、あと一時間、働く。本来なら12歳で大人
になってから、高人になるまでそうな筈だった。例外、現実では見たことのない存在。
はこうする。それ以外の行動を人がしているのは見たことがない。毎日、決まった時間に
起き、決まった時間に学校に行き、決まった時間に働き、決まった時間に眠る。
そうでない、行動をするのは世界とずれてしまう恐怖がある。いや、例外の行動なんて、
他の人は想像すらしないのかもしれない。あの女性が言った時刻に、場所に着くため
には、そろそろ家を出ないといけない。学校以外の用事で、登下校以外の時間で、庭の外
に出る事すら、したことがない。人のいない道を知らない。見るはずでも歩くはずでも
ない、人のいない道を歩くのは怖い、それは、まるで世界が違うようなのだろう。
それでも、迷ってはいない。庭の外に向かって歩きながら思う。この庭を出れば、
彼女の約束通り、会えば何かが決定的に変わるのだろう。全てに匹敵するくらい大きな
何かを失うのだろう。だけど、同じくらい大きな何かを得れるとも思っている。
そもそも、彼女が、そこに来るよう言った事が、彼女が例外的だ。
自分の様に...自分以上に。だから、期待しているのだ。はぁ、大きく息を吐く。
人のいない道だ。一人歩いている。何か、恐怖を感じる。未知への恐怖だろうか。
ただ、今、会おうとしている本当の理由は単に、会いたくて会いたくて仕方がない
からだ。今、会わないと消えてしまいそうで不安だからだ。その感情が、この世界で
例外だから、理由にしたくなかっただけだ。本当、自分を騙すのが好きだな。
自嘲でしか笑えない、自分を冷笑する事でしか笑えない歪な人間なのだ。自分は。
彼女に渡されたメモを見ながら、歩く。なんか、可愛い文字だ。ちなみに、このメモ
に書いてある住所だけで、辿り着けるか不安だ。このアリシア(世界、この国)は
二次元座標と対応付けられている。自分を育てた高人に、幼い頃、教えられたのだ。
古い記憶だから、あやふやだが。一軒一軒の家には座標の数値、書いてあるので、
それを見ながら、進む。だんだん、どう行けばいいかわかるほど、足が速く動いて
いた、走っていた。早く、会いたい。ただただ、そう思った。だから、走る。彼女の
言う場所までは、7kmくらい、道に迷わず走れば「20分」で着く。自分でも驚く
くらい早く走っている、遅く走れないのだ、早く会いたくて、ペースとか苦しいだとか
の理由じゃ止まれないくらい、会いたいのだ。会いたい、声を聴きたい、彼女は、
どんな風に喋って、どんな仕草があって、いつもどうしているのか、知りたい、
感じたい。訝しげな眼で見つめてきた事、恥ずかしそうに顔を赤くして目を逸らした事、
笑顔で「またね、バイバイ」と言った事。ただただ愛おしい。
~気づいたら、地面に倒れていた。喉が酷く痛いし、肺は苦しく、心臓は痛くて苦しい。
太もも、も鈍い痛みを発している。でも、すぐ起き上がってしまう。早く会いたい。
着いた場所は、普通の家だった。コンコンッ、ドアを叩く。2秒ほどでドアが少し開く。
彼女が、ドアから顔を半分だけ出してこちらを確認している。...可愛い。いつもの
三角形の突起がついたフードを被って自分の事を上目遣いで見つめている。数秒間
見つめ合って、それだけで幸せだった。彼女「あ、入って」彼女が扉を大きく開く。
トウァ「......」うまく声が出ない。返事をしなきゃダメだとわかっても、緊張して声が
出ない。不愛想に無言で家の中に入る。家の中は自分と同じ正方形の部屋だった。
返事をしなかったから、変に思われてないか不安になる。彼女は今、何を思っている
のだろうか。挙動不審にちらちら彼女を見る。彼女は自分を見ているけど目を合わす
のに、何処か抵抗がある。そして、こんな時間にこんな場所にいる事も、彼女という
存在も夢に思えてくる。彼女は、幻想に思えてしまう程、可愛くて綺麗だ。
彼女「緊張してる?」キョロキョロしてて挙動不審だったのだろう、彼女は聞いてくる。
そういえば、まだ名前も知らない。さすがに、これにも返事をしないと本当に変に
思われるので、何とか返事をする。「う...ん」あまりにか細い声で情けなかった。
フフッ、そっか、そりゃあ、突然、こんな時間に呼ばれたら緊張しちゃうよね。」
彼女は自分の緊張をほぐすようにやさしく話しかける。訝しげな眼で見つめてきた時の
印象、顔を赤らめた時の印象、そして、優しく話しかけてきたときの印象。全部が、
とても魅力的で心が溶かされてしまう。「うん...」なんとか声を出す。「あ、名前、
まだ言ってなかったね。私の名前は...アリシア、ミネルシルト・アリシア。」彼女は少し
躊躇いながら言う。そう、だって、アリシアはアリシア    世 界    という意味の
言葉で、アリシア「不思議に思ってるでしょ?でも、今日はいっぱい、不思議な事が
あるんだ。」アリシアは少し得意げに微笑む。いや、その前にそれだけじゃない。
自分の名前は、ルネルシルト・トウァ...似てるね。」自分の苗字は珍しい、そう昔から
思ってた、ここに自分と苗字が似ている人がいる。何か必然を、運命を感じる。
え...何で。...そっか。」アリシアは軽く驚いた後に、何か納得した様子を見せる。
何に納得したかは自分もわかる気がした。
アリシア「今日、呼んだのはね、理由があるの。えっと、ねぇトウァは世界機構の授業で
習った事とか、幼い頃に教えてもらった事...常識に......何か疑問とかない?」アリシアは
何かに怯える様に慎重にゆっくりと喋る。そして、今日ここに来るようにアリシアに言わ
れてから何処かわかっていた。この話をする事を、今日が決定的な日だと。そして、何か
安心を覚えた。トウァ「自分とこの世界は、自分とこの世界の常識は、ずれてるんだ。」
何処か悲痛な声になってしまう。自分はずっと、誰かに話したかったのかもしれない
。アリシアは自分がそう、言う事をわかってたように、安心した微笑みを浮かべる。
アリシア「トウァ、今日はね、この世界の事、トウァが悩んでいる事の答えを話したくて
、ここに呼んだんだ...君なら大丈夫だと思って...。でも、その前に見せたいものがあるの
。......驚かないでね...お願いだから。」アリシアは何処か不安げな表情で言う。
トウァ「うん。」サッ、アリシアがそのフードを取った。白い何かが引かれたフードで
倒れて、フードが取れて反動でピョコっと動くく。アリシアは少し俯いている。だから、
余計にその白いものがよく見える。小刻みに、何回もピクピク動くそれは、大きな白い、
獣耳だった。その獣耳は大きくて、アリシアの髪の色と同じ白色の毛が短く生えている。
耳の内側は白くて長めの綺麗な毛が生えている。そして、ピクピク動いてて触ってみたく
なる。アリシアは不安そうに俯きながら上目遣いで自分の事をちょくちょく見ている。
なんだか、凄く不安そうな表情で自分の事を見ている。安心させてあげた方がいいのかも
しれない。トウァ「可愛いよ、アリシアの耳。」アリシア「...本当?」
トウァ「うん、凄く可愛いよ。」アリシア「......ありがと。」アリシアは安心したような、
少し嬉しそうな表情をする。
アリシア「トウァ、教えるねこの世界の事、この世界の...真実を。」
アリシアの瞳は綺麗に輝いていた。
アリシア「まず、私が何で知ったのかを言うね、ちょとっ待ってて、見せたい物があるの」
トウァ「尻尾?」アリシア「フフッ、違うよ」アリシアはそういって、ベッドのところを
ガサゴソとする。そして、アリシアは青い何かを手して戻ってきた。
アリシア「これだよ。」アリシアの手には青色のノートくらいの大きさの
プレパラートみたいな、半透明で薄い数十枚の板があった。そして、その板には何か溝で
文字が書かれていた。
アリシア「話すね、この世界の真実を、トウァに。」

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