婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子

19.宰相の息子3

――堕落した汚れ切った女は救済する必要なし――



死後も教会墓地に埋葬されることは無く打ち捨てられるケースが多い。


ならば、『私娼』はどうかと言えば、更に酷い。
世間的にも教会的にも『堕落した女』のレッテルは貼られていないものの、全くの保証がない立場なのだ。
歓楽街で自ら客引きする女もいれば、宿や飲食店の二階で売春行為を行う女もいる。私娼とはいわば「もぐり」だ。プロではなくアマチュアと言ってもいいのかもしれない。度々、政府による取締まりの対象になっていた。それというのも、性病が蔓延したからだった。
たかが性病だろう、と言う者も当時はかなり多かったらしい。
現在では考えられない事だが、薬の効かない性病が蔓延したのもその時からだ。

感染症の数もその時代に最も増えたと伝え聞く。

だからなのか、当時の国王が「売春禁止法」を制定するまでに至った。
勿論、法で禁止した処で、春を売る女が減った訳ではない。
逆に地下に潜るケースが増えた。
プロとの境界線も曖昧になり、性を売る女性の扱いも酷くなってしまった。
そのため、娼館の存在だけは例外として残された。

ただし、『公娼』ではなく、『私娼』としてだ。

私娼なら、結婚も出来るし、死後も教会に埋葬が許される。




社交界に参加していることから、ミリーは、国王が認めた侯爵家専属の『公娼』なのだろう。
客は専ら貴族だ。
彼女は仕事ができなくなるまで働かされることだろう。
その後は?
最悪、命を奪われかねない。
閨での睦言情報を余所に知られる前に。
生きる事を許されたとしても侯爵家からは逃れられない。飼い殺しだろう。



昔、父上が仰ったように、私は判断を誤った。いや、もっと穏便に事を進めていれば、こんな事にはならなかった。
ミリーを正妃にする事に固執しなければ、彼女は辱めを受け続ける事は無かったのではないか?アレクサンドラ様の仰ったように、ミリーを愛妾としてフリッツ殿下の傍付きにすれば良かったのではないか?
そうしていれば、私達は今もあの頃のように笑っていられたかもしれない。
時が経つにつれて後悔が広がっていく。
フリッツ殿下を助ける事も、ミリーを庇う事も出来ないというのに。

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