婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子

15.近衛騎士団長1

「惚れた女のために殿下共々、道を踏み外すとは情けない。
王命で結ばれた婚約者を蔑ろにして、己の愛人を正妃に就けようと画策するとは…そんな愚かな判断しか出来ない男は即位できたとしても『愚王』にしかならん。一国の王が己の欲望を優先するなど有り得ない事だ」
「そんな事はありません!フリッツ殿下なら民がいつも笑って暮らせるような素晴らしい国を築いていけるはずです!」
「公ではなく私情を優先する男が、民の暮らしを守れると本気で思っているのか?」
「出来ます!殿下なら!!!」

キラキラした目で夢物語を語る息子に呆れる他なかった。
息子とはいえ、国の将来を台無しにした連中達の一人だ。まともな神経ではない。

フリッツ殿下が国王になるにはアレクサンドラ様との婚姻は必須だった。
アレクサンドラ様との間に生まれた子供は間違いなく帝国の皇族の血を引く王族だ。
我が国が生き残るには帝国の血を引く王がどうしても必要だった。『私生児』に過ぎない現国王が立太子でき即位できたのは、偏に先の王妃様のお陰だ。王位継承権を持たなかった陛下は先の王妃様の慈悲だけで今の地位に就いている。セレーネ王女殿下がヘッセン公爵家に嫁ぎ、公爵家が陛下の後ろ盾になったのも大きい。その二人から生まれたアレクサンドラ様とフリッツ殿下が婚姻することで、王家は公爵家だけでなく帝国の後ろ盾も得ることが可能になる…はずだった。
まさか自分の息子達がそれを台無しにするとは。

宰相からの案に同調すべきではなかった。息子にも真実を話しておくべきだった。「王家が軽んじられてしまう」と言う、宰相の言葉を真に受けたばかりに取り返しのつかない事態になった。
こんな事ならキチンと伝えておくべきだったのだ。
息子は素直な質だ。
貴族社会の裏まで考える事など到底できない。
せめて「アレクサンドラ様を大切にしなければならない」とでも言っておけば、その通りにしたはずだ。当たり前すぎて言わなかった事が悔やまれる。

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