ボクとネコのはなし
第18話 野球と水泳
こんこん、とドアをノックする音と共にドアが開き、お盆にコップを二つ乗せた樹下母が入ってくる。
非常にタイミングがいい。
「アイスコーヒー入れたわよ」
「ありがとう、お母さん」
差し出されたコップを受けとるボクと樹下桜音己。スティックシュガーとガムシロップは二個ずつ渡された。こういうのは大変ありがたい。
ツッコミのしすぎで喉が少しだけ渇いていたところだった。
それにしても、当たり前の光景だが違和感がある。
確かこの部屋、引きこもりの部屋だよな。かなりすんなり家族団欒なんだが。
「じゃあね、勉強頑張りなさいよ。先生、よろしくお願いしますね」
娘にガッツポーズを見せながら、ボクに頭を下げて、樹下母は後退りで部屋を出ていった。この娘にして、あの母あり、か。
スプーンも何も渡されなかったが、このアイスコーヒーはどうやって混ぜるのだろうか?
横目で樹下桜音己を見ると、文句一つ垂れず当たり前の様にコップを水平に動かし円を描く。コップの中の氷が、からんからん、と音を鳴らす。
……それで、混ざってるって言う気か? ちょっと、無理じゃないか。
しかし、もてなしにケチをつけるわけにもいかない。真似るしか、選択肢は無さそうだ。
からんからん、と音を鳴らしてボクもアイスコーヒーを飲んだ。意外と、うまく混ざるもんだな。問題は底に溜まったシュガーか。
アイスコーヒーを飲んで、冷房にあたる。
外で走り回るのもいいけど、これはこれで有意義な夏の過ごし方だな。
縁側でカルピス、森林浴しながらのアイスコーヒー。まるでCMのようだ。
「う~ん、それにしてもいい天気だね」
やっぱり寝不足か、それとも昨晩の寝る体勢が悪かったのか、椅子の上でも上半身を伸ばすだけでスゴく気持ちが良かった。
「そうですね、眩しいくらいの快晴です」
「こんな中、彼は野球をやってんだろうな。気持ちいいだろうな」
「こんな中、野球なんてやったら日射病で倒れませんか?……っていうか誰の話ですか、それ?」
「ん、誰って、犬飼英雄君の話だよ」
え?、と一瞬樹下の顔が固まる。眉間にシワが寄って、明らかに、疑問がある、という顔をする。
「イヌっちは、野球やりませんよ」
え?、と今度はボクの顔が固まっただろう。ただ眉間にシワが寄るわけでもなく、間抜けな顔で、だ。
「や、イヌっちのプライベートを全て知ってるわけではないので、草野球なんかはやったりしてるかもしれませんし、家で野球ゲームであくせくとサクセスしてダイジョーブって言ってるかもしれませんが」
後半部分は、想像すると変なヤツに聞こえるのは気のせいだろうか?
「第一、イヌっちはラフでダイブな感じの水泳選手なんですよ。今頃プールでウルトラソウルしてるわけですよ」
「プールでウルトラソウルってなんだよ!」
その前のラフでダイブな感じってのもまったく伝わってこないが、ツッコミ大変だなコレ。
それにしても、あの見た目からしてバリバリの野球少年の犬飼英雄君が、ボクの期待を大きく裏切って水泳少年だったとは。
今度会ったら今日の分も合わせて、しっかり睨んでやろう。ボクの名推理がことごとく否定された腹いせだ。
ん、とすると猿渡美里に対するボクの推理も怪しくなってくるな。
もしかしたら、同じ部活なんてこともありえるが、犬飼君で外した推理なので違う部活として考えると、陸上部なんかが最適じゃないだろうか。
「ちなみに、ミリーが野球部です。野球少女です」
「彼女の方が野球部なのか?」
「なかなか試合には出れないみたいですが、青春を直進してる感じですね」
またボクの推理は外れたわけか。名探偵も、ニュータイプも程遠い。
最近、女子野球選手とよく聞くようになったけど結構身近にチャレンジしてる人物がいるもんなんだな。
それで、あれだけしっかりした足腰をしているのだろうか。犬飼英雄を投げれるだけの、足腰。
いや、鍛えすぎだろ。
「君は、何か部活やってないのかい?」
「えっと、帰宅部?」
「それって部活やってないってことだろ? ボケてもないし」
ボクの一言が気に触ったのか、樹下はコップを机の上に置き唸りながら眉間にシワを寄せた。
む、む、む、む、と普通の人なら決して口に出さない唸り声を上げる。
理科に対しての一連の行動が出産なら、今度のは霊媒師だ。何かと過去をほじくり返された後、不吉な未来を予言されそうだ。
「えっと……き……た……く部?」
残念この霊媒師、何も思いつかなかったらしい。
確か、彼女のボケは百八個あったはずだが、この質問には用意されてなかったみたいだ。
非常にタイミングがいい。
「アイスコーヒー入れたわよ」
「ありがとう、お母さん」
差し出されたコップを受けとるボクと樹下桜音己。スティックシュガーとガムシロップは二個ずつ渡された。こういうのは大変ありがたい。
ツッコミのしすぎで喉が少しだけ渇いていたところだった。
それにしても、当たり前の光景だが違和感がある。
確かこの部屋、引きこもりの部屋だよな。かなりすんなり家族団欒なんだが。
「じゃあね、勉強頑張りなさいよ。先生、よろしくお願いしますね」
娘にガッツポーズを見せながら、ボクに頭を下げて、樹下母は後退りで部屋を出ていった。この娘にして、あの母あり、か。
スプーンも何も渡されなかったが、このアイスコーヒーはどうやって混ぜるのだろうか?
横目で樹下桜音己を見ると、文句一つ垂れず当たり前の様にコップを水平に動かし円を描く。コップの中の氷が、からんからん、と音を鳴らす。
……それで、混ざってるって言う気か? ちょっと、無理じゃないか。
しかし、もてなしにケチをつけるわけにもいかない。真似るしか、選択肢は無さそうだ。
からんからん、と音を鳴らしてボクもアイスコーヒーを飲んだ。意外と、うまく混ざるもんだな。問題は底に溜まったシュガーか。
アイスコーヒーを飲んで、冷房にあたる。
外で走り回るのもいいけど、これはこれで有意義な夏の過ごし方だな。
縁側でカルピス、森林浴しながらのアイスコーヒー。まるでCMのようだ。
「う~ん、それにしてもいい天気だね」
やっぱり寝不足か、それとも昨晩の寝る体勢が悪かったのか、椅子の上でも上半身を伸ばすだけでスゴく気持ちが良かった。
「そうですね、眩しいくらいの快晴です」
「こんな中、彼は野球をやってんだろうな。気持ちいいだろうな」
「こんな中、野球なんてやったら日射病で倒れませんか?……っていうか誰の話ですか、それ?」
「ん、誰って、犬飼英雄君の話だよ」
え?、と一瞬樹下の顔が固まる。眉間にシワが寄って、明らかに、疑問がある、という顔をする。
「イヌっちは、野球やりませんよ」
え?、と今度はボクの顔が固まっただろう。ただ眉間にシワが寄るわけでもなく、間抜けな顔で、だ。
「や、イヌっちのプライベートを全て知ってるわけではないので、草野球なんかはやったりしてるかもしれませんし、家で野球ゲームであくせくとサクセスしてダイジョーブって言ってるかもしれませんが」
後半部分は、想像すると変なヤツに聞こえるのは気のせいだろうか?
「第一、イヌっちはラフでダイブな感じの水泳選手なんですよ。今頃プールでウルトラソウルしてるわけですよ」
「プールでウルトラソウルってなんだよ!」
その前のラフでダイブな感じってのもまったく伝わってこないが、ツッコミ大変だなコレ。
それにしても、あの見た目からしてバリバリの野球少年の犬飼英雄君が、ボクの期待を大きく裏切って水泳少年だったとは。
今度会ったら今日の分も合わせて、しっかり睨んでやろう。ボクの名推理がことごとく否定された腹いせだ。
ん、とすると猿渡美里に対するボクの推理も怪しくなってくるな。
もしかしたら、同じ部活なんてこともありえるが、犬飼君で外した推理なので違う部活として考えると、陸上部なんかが最適じゃないだろうか。
「ちなみに、ミリーが野球部です。野球少女です」
「彼女の方が野球部なのか?」
「なかなか試合には出れないみたいですが、青春を直進してる感じですね」
またボクの推理は外れたわけか。名探偵も、ニュータイプも程遠い。
最近、女子野球選手とよく聞くようになったけど結構身近にチャレンジしてる人物がいるもんなんだな。
それで、あれだけしっかりした足腰をしているのだろうか。犬飼英雄を投げれるだけの、足腰。
いや、鍛えすぎだろ。
「君は、何か部活やってないのかい?」
「えっと、帰宅部?」
「それって部活やってないってことだろ? ボケてもないし」
ボクの一言が気に触ったのか、樹下はコップを机の上に置き唸りながら眉間にシワを寄せた。
む、む、む、む、と普通の人なら決して口に出さない唸り声を上げる。
理科に対しての一連の行動が出産なら、今度のは霊媒師だ。何かと過去をほじくり返された後、不吉な未来を予言されそうだ。
「えっと……き……た……く部?」
残念この霊媒師、何も思いつかなかったらしい。
確か、彼女のボケは百八個あったはずだが、この質問には用意されてなかったみたいだ。
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