金髪紅眼の後輩が彼女になりました!(ただし、彼女の正体は地上最強の人妖とする)

チョーカー

翔の予知

 離脱。

 翔とあかりがいる学校から1キロ。

 リズムは走って離れたはずだが、息は乱れていない。

「将門と道真……」

「ん?」

「あれが傾国の狐と王様候補で正解なのよね?」

「そうだよ! ヤバそうだよね。君は、どう感じた? あの王様候補と手合わせして」と道真。

 将門も「……」と無言だが、道真に同意するように頷いていた。

「彼……正道翔の印象? そうね……」

 彼女は少し考えた。 将門と道真は興味深そうに返事を待つも――――

「かける君、カッコ良かった」

 普段、無表情に見える彼女の顔に赤みがさす。 僅かであるが照れ臭そうに微笑んでいるではないか!
 
 そんな様子に、

「なっ!」と将門。

「ぬっ?」と道真。

 だが、皆月リズムは2人の反応に関せずに言葉を続ける。

「武道、武術とか疑っていた。でも、彼は違う。私と戦えれていた。好き。わたしの想像を超えた動きを見せてくれた。憧れる。もう一度……いえ、何度でも戦いたい。大好き」

「……」と将門、道真は絶句した後、顔を見合わせた。

「将門と道真、確認!」

「な、なんだ?」

「あの鳥羽あかりって子が狐なのね? あの子が王を決める存在……だったら、わたしが彼を、かけるくんを彼女から奪えば問題ない。日本は無事、全ては平和に解決する」

 この時、将門と道真が思った事は奇しくも一致した。

 強い後悔。

 見余っていたのだ。皆月リズムという人間の精神。

 格闘技で強くなる事への執着。それに反して他の物事への無関心さ。

 彼女は無関心ではなく、1つの事に驚異的に執着をするのだ。

「撤退を――――」と最後まで言えなかったのは、将門か? 道真か?

 日本三大悪霊と言われる両者に対して、皆月リズムは――――

「逃がさないよ」と強い言葉を発する。

 強い意思を言葉にするそれは呪いに転換される。 呪いは将門と道真を縛った。

「かけるくんを落とすためには……うん、学校に行こう。わたし、高校に行ってないから、転向って手は使えない。それじゃ……入学ね。今から受験に向けて勉強しなくちゃ――――

 待っていてくださいね、かける先輩」

 そして、その言葉も呪いとなる。 

 離れた1キロ先の高校。 そこにいる正道翔は、強烈な寒気に襲われる。

 ――――嫌な予感。 武道武術によって鍛えられた危機管理能力。

 予知能力に匹敵する翔の直感。 それが近い将来、彼にとって途轍もないトラブルに見舞われると教えてくる。

 ――――だが、

 それは、またいずれ。

 ここではない。どこかで語る機会があればの話。

  
 完結
  

 

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