金髪紅眼の後輩が彼女になりました!(ただし、彼女の正体は地上最強の人妖とする)

チョーカー

皆月リズム

 格闘技のジム。

 サンドバックを叩く音。それが連続で鳴り響いている。

「いいぞ、もっと! もっと速くだ!」

「……」と叩いている女性。まだ幼さの残っている彼女は無言で、それでも真摯にサンドバックを殴っていく。

「はい、OK! 10秒休憩後、20秒ラッシュのラスト8本目!」

 休憩とも言えない短いインターバルの後、再び少女はサンドバックを叩き始めた。

 そんな少女の鍛錬を窓の外から見ている男の影が2つ。

 しかし、そんなはずはない。なぜなら、ここは2階なのだから――――

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「どうだ、将門くん? 新しい君の依代候補は? これを見ても、まだ性別を気にするかい?」

「うむ……やはり、闘争の発展はすばらしいものがある。食事、鍛錬、睡眠……それらを徹底的に管理されている。強者を生み出すには整った環境ではあるな」

「……そういう事を言ってるわけじゃないんだけどね。それで乗っ取る?」  
 
「うむ……しかし、どうも女性の体というのは……」

「何、童貞みたいな事を言ってるの? さぁ、さぁ! 男は度胸ってね!」

「押すな。そう急かせる必要も――――」

 この時、激しい鍛錬を終えた少女――――名前は皆月リズムと言う。

 彼女は、何か自分の中に入り込んできたような感覚に襲われた。

「むっ……こやつ! 何て精神力だ」

「将門くん? なに遊んでいるの? 早く狐と王候補の見学に行こうよ」

「道真……体が動かせぬ。こやつ……自身の肉体を完全に制御しておる」

「いやいや、そんなわけないでしょ!? いくらなんでも霊力とか呪術に関係ない人間が悪霊を体に封じ込まれるわけが――――」

「だれ? 誰かいるの?」とリズム。 信じられないことに彼女は――――

「ぼ、僕と将門くんの声が聞こえている? まさか、本当に!?」

「将門……? 誰なの? 私の頭から聞こえてる。行かなきゃ……」

「待て……行くだと? どこに行くつもりだ」

 そんな将門の声にリズムは、

「病院。精神科に行かないと」

「待て待て、自分がおかしくなってる判断が良すぎないか? 我の名前は将門……平将門の名は聞いた事……」

「……?」

「ないのか……とにかく、我はこの地の王。悪霊の王と呼ばれた者だ」

「ゆうれい? 本物?」

「うむ……ずいぶんと素直だな」

「うん、言われた事をやらないと強くなれない。そうやって私は育ったの」

「そうか。それはそれで歪んでいる教育だと思うが……悪いが其方の体を少し借りる」

「ん……? 少しだけなら」

「ほ、本当に良いのか?」

「?」

「いや、良いのなら……行くか道真。 お前、何を笑っている?」


 

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