金髪紅眼の後輩が彼女になりました!(ただし、彼女の正体は地上最強の人妖とする)

チョーカー

鳥羽あかりVS天王けあきの空中戦

 「あかり、逃げるぞ!」

「え? でも……」

「良いから早く」

「わぁ、手を(ふぁあ、力強く引っ張ってくれる!)」

「少しでは遠く……もう少し……ここら辺まで走れば……大丈夫だったか? あかり?」

「いえ、大丈夫と言うより、3人とも倒れてたので逃げなくても良かったのでは?」

「いや、眼突きや金的蹴りを使ったけど、1分くらいで回復する。そういう風に技を使ったから」

「喧嘩が強いんですね翔先輩。見た目と違って」

「強くはないよ? 護身術だからね。いざと言う時に女性や子供でも男性を倒せる。そういう技を仕込まれてるだけだよ」

「へぇ~ 意外です」

「そんな事より、ごめんな。怖い目にあわせて、本当に大丈夫だったか?」

「……」

「あかり?」

「怖かった。……いえ、本当は、怖かったです。先輩が殴られるんじゃないかって思うと……」

「そうか、そうだよな……」

「私は、自分で自分か抑えられなかった。 あと少し遅ければ――――殺していた」

「――――っ!?」

「きっと、あの人たちを殺していた。

 きっと、惨たらしく。 きっと、残虐的に。

 きっと、人間だったとわからなくなるほどに破壊していた。

 だから、だから私は、そんな私が――――」

「けど、そうはならなかった」

「え?」

「そうはならなかったんだよ。だから、これからもきっと――――そういう時がまた来たら、俺が必ず止めるよ」

「先輩……」

 だが、唐突な声が飛んで来る。 2人共聞き覚えのない声だ。

「お話中に申し訳ありません」

「!?」

「え? 急に……どなたですか? あかりの知り合いか?」

「いいえ違います。鳥羽あかりさん、えっと……私の式を倒した正道 翔さんでしたかね?」

「どうして俺とあかりの名前を? 式って? 本当に誰なんですか? ……って日本刀!? 賀茂先生の知り合いか!」

「あの人は生徒に日本刀のイメージを持たれているのですか?」

「なんだ? 急に振り返って……背後に誰かいるのか?」

「ん~ 私1人で挨拶しろって事ですね、いいですよ。ただし――――」

「翔先輩、どいて! そいつ殺せない!」

「え? そんなラグナロクの伝説みたいな――――え?」

翔の視線からあかりは消えていた。 いや、あかりだけではない。

「2人とも、どこに?」

「翔くん、翔くん、結界を張ったわ。2人の戦いが終わるまでは耐えるわ」

「え!? 賀茂先生!? そんな事より、あかりと……あの日本刀の人は?」

「上よ」

「上って? 空を指さして――――え? あかり? 2人とも空を飛んでいる!?」

「本当に耐えれる? 鳥羽あかりさんが、彼女が本当に怪物だった正体を見せられても」

「……それが目的だったのですか? 俺たちのデートを尾行するって言いだした理由は?」

「そうね。それも1つの理由よ」

「……」

「人妖の狐が相手をしているあの子……天王 けあき。 彼女本人は認めたがらないでしょうが……紛れもなく日本最強の式神使いよ」

「天王 けあき……」

「見えてるのね。高速飛行で戦闘を行っている2人の攻防を」

「……はい? そりゃ見えてますけど?」

「そう(やはり、貴方も狐を引き付けるナニカがあるのね)」


 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

「なんです? 急に殴りかかってきて……私、貴方の名前も知らないのですが?」

「これは失礼。私、天王けあきと言います」

「そう、けあきさん。これはどういうことかしら? 出会い頭に、殴りかかってきたりして?」

「あら? 必要でしたかね? 怪物に自己紹介のマナーなんて?」

「わかったわ。殴り返すわ」

「――――っ!(距離にして10メートル以上の間合いがあったのに、空間を歪めて打撃の衝撃だけを飛ばしてきた)」

「あら、凄い。ゼロ距離の打撃を全部防御するなんて、抜いたら? その日本刀を」

「いいえ、切り札ですので――――まぁ、これを抜くと、死にますよ」

「あら? どっちが? 死ぬのは私? まぁ貴方になるのでしょうが!」

「狐火ですか? 賀茂さんには聞いてましたが――――この程度ですか」

「なに!?」

「気づいてませんね。本体から離れた貴方は、自身が思っている以上に弱体化してますよ?」

「だったら――――だったら、ここで私を――――わっちを殺してみるが良い!」

「それが本気? やはり、たわいない」

(わっちの弾幕を全て避けるつもり? 空中制動と速度に自信あるのかしら?)

「では、こちらも式を使用します」

「この霊力……鬼か?」

「然り、左鬼と右鬼と言います」

「もう少し、名前を捻ったら? 可哀そうよ……その手のひらサイズの子鬼さんたち」

「あら? 見た目で判断されます? 行きなさい! 左鬼! 右鬼!」

(なに? あの自信? 強い霊力は感じない……と言う事は特殊効果か。触ると拙いタイプ? だったら!)

「随分とアッサリと接近を許しますね。それが強者の弱点! 受けなさい弱者の一撃を!」

「ぐっ! コイツら霊力を喰らうのか! それに――――重い」

「落ちよ! この高さから地面に叩きつければ――――憐れな人妖よ、地球の重力に縛られよ!」

「くっ! おのれ! おのれ! おのれ、人間め! ――――なんちゃって!」

「え? 地面に落ちて縛られた……はず。それなのに最後の余裕は一体……」

「そりゃそうよ!」

「なっ! いつの間に上に――――人妖が2人!? 分身だったの? あの強度で?」

「愚かな……わっちが分身を作るのに1人で済むわけなかろう。10人じゃ」

「――――っ! 10人に増えた。そんな馬鹿な。封印されて、これほどの力があるはずがない」

「だったら、試せばよかろう。 それとも抜くか? 切り札と言っていた刀を?」

「それも……良いでしょう。ここで貴方を滅ぼ――――え?」

「なんじゃ? 急に? 油断を誘うと――――え?」

 2人は戦いを止めた。 なぜなら結界の中、もう1人が空中に出現したからだ。

 その1人は――――

「ちょ! 翔先輩! 何やってるですか! 危ない! 危ない! すぐ受け止めます!」

「あははは……ありがとう、あかり。 ここまで賀茂先生に打ち上がて貰った。超怖かったわ」

「どうして、こんな無茶を!」

「お前が辛そうだったから」

「――――!? どうして、どうしてそう見えるんですか! あんなに好戦的にわっちは、私は笑って見せてたじゃないですか?」

「ん~ なんだろうな? なんだか、本当は戦いたくなくて、それでも戦わないといけないから笑っていた。俺にはそう見えたよ」

「――――馬鹿! 馬鹿ですよ、先輩は」

「ごめんよ、馬鹿で」

「……こんな時に私のお願いを、頭を撫でないでくださいよ」

「約束だからな。1日1回、頭を撫でるって約束」

 そんな様子を天王けあきは――――

「私は、何を見せられているんですか? 人間と人妖がじゃれ合う様子なんて!」

「あ――――えっと、天王けあきさん? すまないけど、今はデート中なんだ。よかったら見逃してくれないかな?」

「――――! 早く、私が見えない所まで行ってください。じゃないと私は、何をするか自分でもわかりません」

「そうか……すまないな。行こうか? あかり」

「えっ? え?」

「どうした? 続けようぜ? デートの続きを」

「あっ! はい!」

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