天壌無窮の守人

兎月あぎ

第七幕 四話 終末大戦争

吾蔵研究員の指令に従って大量の代理戦争用兵器たちが動き出す。目指す先は大量に生み出された怪物たちの群れ、戦火はすぐに上がりあちこちで銃撃音や爆発音が聞こえ始めた。
《小僧ども、乗れ。途中までなら乗せていってやろう》
「それならお言葉に甘えて…よっと」
そう言いノック、ミリー、Cc、吾蔵研究員、紫乃がサジタリウスに乗る。乗ったのを確認したサジタリウスは四肢に力を込め起き上がり進撃を開始した。破城槌のような足先で怪物たちを踏みつぶしながら進撃するサジタリウスは普通の怪物では止めようがなかった、しばらくするとサジタリウスの周辺には瓦礫の小山と大型の怪物ばかりとなった。
《お前たちしっかり捕まっておけ?瓦礫ごときが私を倒せると思うなよ》
そう言うと大盾を構え四肢に力を込め始める。5人はサジタリウスの背中にいくつかあるメンテナンス用の足場などの出っ張りにしがみつく、次の瞬間強烈なGがかかったかと思うと空中には2,3体の大型の瓦礫の怪物が舞っていた。サジタリウスの後方へと墜落した大型の怪物はそのまま瓦礫の山となって消えていった、しかし次から次へと大型の敵が湧いてきておりキリがない。
《小僧どもここまでだ、ここで降りろ、ここでこいつらを引き付けておこう》
「すまねぇ頼んだ!」
サジタリウスから急いで飛び降り怪物やサジタリウスに踏みつぶされないよう急いでその場を離れる。背後からはすぐに戦闘音や振動が響き始めると同時に空中に大量の瓦礫が舞い始める、大型の怪物の足元を潜り抜けながらノストラダムスの方へ移動する。
「ノック、あんたあれの対処法は見当ついとるん?」
そう紫乃が聞いてきたのだが、
「いや?今から考えるつもりだった」
「『「はぁぁぁぁぁぁ…」』」
この有様である、因みにミリーは頭に?を浮かべていた。3人に大きなため息をつかれノックもさすがにまずいと思ったのか何か言いだそうとするも、何も出てこない姿を見てより呆れながらも紫乃が喋りだす。
「いいか?うちの感覚やとアイツの冠があるやろ?あれが恐らくうちらでいう核の部分や、あれさえぶっ壊しさえすれば力を保てず自壊していくはずや。あんた残り何発撃てるん?」
「残ってるのは4発だ」
「ふむ…並大抵の力じゃぶっ飛ばせんはずや、だから3発分、あんたの力を一度に3発分をあそこに叩きこんでやり。それでぶっ壊せるはずや」
「了解!」
呆れ顔ながらもそう教えてくれた紫乃に感謝しつつノストラダムスまで徐々に近づいていく。ノストラダムスから放たれる光弾や押し寄せてくる怪物たちの群れを対処しながら進むもなかなか近づくことが出来ない。数えきれないほどの怪物がまだ前方に見ることが出来る。
『…キリがないな』
「仕方ないゼロポイントのエネルギーを使っているんだ…エネルギー切れなど無いだろう」
多少は喋る余裕はあるらしい、吾蔵研究員はどこにでもあるような拳銃を使い主にCcの援護射撃に回っている。しかしながら状況を一変する何かがなければ前に進むことが出来ない、そう考えていると。
「ここはうちに任しとき、ここが正念場や」
紫乃がそう言うと同時に体が淡く発光し始め帯がライドレールへと変化する。
「正面から退き!」
そう紫乃が一喝すると、急いで前にいた面々は正面を明け渡す。次の瞬間怪物たちに大量の鉛弾が浴びせられ次々と崩れ落ちていく。そしてあっという間に海が割れたかのように直線状に道が出来上がったのだ。しかし次から次へと怪物が出てくるためその道は徐々に狭くなっていく。
「はよ行き!後は頼んだで!」
「頼む!」
そういいノックを含めた4人は紫乃の援護射撃を受けながらノストラダムスへとまた近づいていくのであった。

世壊まで 残す所あと15分




おかしい、計算外だ。ここまで追いつめられるとは思わなかった。だが幸いにも目的物は自らこちらへと近づいてきている、その際に壊してしまえば問題ない…どちらにせよこちらが勝つことに変わりはない。
そう考えていると腕の届く範囲までノック達がやってきた。
「往生際の悪いやつらめ、たとえこの世界を今守ったとて徐々に壊れていくのは目に見えているぞ?それでも戦うというのか?」
そう言うも返答の想像はなんとなくついていた。
「うっせぇ!難しいことはあんま分からんが今この瞬間お前が悪ぃってことは分かる!その頬引っ叩いてこんなこと止めてやる!」
やっぱりだ、こいつはいつもそうだ。馬鹿正直でまっすぐな奴である…なら、真正面から叩き潰してやる。それが一番だ。

とうとうノストラダムスの前までたどり着いた。ここからはゼロポイントの力の一部を持つ吾蔵研究員を守りながらの戦いとなる、ここまで来るのに様々な助けを借りた、ここで成功させなければいままでのことがすべて水の泡である。
「行くぞノス!」
邪魔となる怪物たちを退けつつノストラダムスへと近づいていく、目標はノストラダムスの冠。ノストラダムスから放たれる光弾が容赦なく4人へと襲い掛かりその身に打ち付ける、妨害を受けながらもボロボロになった研究所の残った壁を伝い徐々に登っていく。もちろんそうやすやすと登らせてくれるわけもなく。
「散れ!有象無象め!」
ノストラダムスの平手がノック達へと襲い掛かる。吾蔵研究員はCcに引っ張られその領域を脱出、ノックやミリーは間一髪で避けるもずり落ちてしまう。次に間髪入れずノストラダムスの拳が襲い掛かりミリーは直撃してしまい大きく吹っ飛ばされる。
「ミリー!」
『心配している場合か!来るぞ!』
Ccの忠告通り大量の光弾が3人を襲う。ノックのいる足場は光弾により徐々に削り取られていきその場から移動せざるを得ない。Ccや吾蔵研究員も向ってくる光弾の対処に忙しくしており手を借りれそうもない、そこで何故かノックは急に方向転換をしノストラダムスと真逆の方向へと走り出す。
「怖気着いたか?だが逃がしはせんぞ、捻り潰してやる」
ノストラダムスの腕が伸びてくる。捕まると思われた直前、ノックがその場で真上に飛びあがりノストラダムスの伸ばされた腕の上へと着地する。
「くっ!」
そこから一気に腕を駆け上がる、もちろん簡単に登れるはずもなく太陽のフレアの様に光の奔流がノックを飲み込まんと襲い掛かる。そこをノックは潜り抜けるように全速力で駆け抜ける、時たま周辺を光の奔流が通り抜けていく度嫌な汗が滴る。
肘関節まで来たところでノストラダムスが腕をぐるんぐるんと振り回しノックを落とさんと試みる。もちろん周辺には掴めるようなものもなく空中へと放り出される、直後光弾が殺到。支援射撃が飛んでくるもすべては撃ち落とせずなすすべなくノックはまともに喰らってしまう、そのまま落下する…ことはなくCcによってより上へとぶん投げられた。
「うおわああああああああ!?」
『伸びてる暇があるならさっさとぶち込んで来い!』
Ccがそう言った直後、追い打ちをかけんとするノストラダムスの拳の直撃を喰らい地に叩きつけられる。パワードスーツには大きな破損が見られ自動修復も働いていないようだ、今までの様に戦うことは不可能だろう。そのようなCcの姿を確認し、空中でノストラダムスに向き直るも冠まで全く高さが足りない。かくなる上は
「どらぁぁぁあああああああ!」
力を使い真下にエネルギーを飛ばし自分を上へと打ち上げる。だがそれでも足りない、これ以上力は使えない。居場所は空中、このままでは重力に沿ってそのまま叩きつけられるしかない、光弾も追尾してきている。そう考えていると隣に人影がひゅっと現れる。その人物はミリーだ。
瞬間的な爆発と火炎を駆使しここまで登ってきたのだろう。だが、その体はぼろぼろであり先ほど受けたダメージは非常に大きかったことが分かる。
「ミリー!大丈夫なのか!」
「今はそれどころじゃないアル!いいアルカ?今から思いっきり上に飛ばすアル、そこで一気に決めるアル。分かったアルカ!」
「了解した!」
返事をした直後首根っこを掴まれ、足元に熱気を感じた直後その華奢な腕のどこにそんな力があるのかと思うほど豪快に投げられ更に上昇する。たどり着いた場所はノストラダムスの顔面の真ん前。その顔は眉間にしわが寄っており苛立っていることがよく分かる。
「行くぞノス!歯ぁ食いしばれ!」
そう宣言するとにやっとノストラダムスの口角が上がる。
「歯を食いしばるのはお前の方だ」
直後ノストラダムスは口をパカっと開きそこに光が収束する。何が起こるのかはっきりと理解できた、そしてノックのいた場所は光の奔流に飲み込まれていったのだ。




非常に危なかった、奴らがこちらの核を狙っていたのは分かっていた。まさかここまで来られるとは思わなかったが直撃したのだ、ただではいられまい。あとは真下にいる研究員を潰してしまえば…。
そう考えていた直後ノストラダムスの耳に何者かの声が聞こえる。その声のする方向へと目を向けると。
「ぅぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!」
先ほど光の奔流に飲み込まれていったはずのノックがより高い場所からこちらに向かって落下してくるのが見えた。
何故だ!?先ほどの攻撃は当たっていたはず!そう思いノックを注視する。すると、先ほどと違った箇所が二か所ある。一つは左脚、丸ごと無くなっていた。そしてもう一つは…力を使った痕跡だ。
ノックの腕が眩く光りだし重力に任せこちらへと急速落下してくる。
「ぬぉおおおおおおおおおおお!」
ノストラダムスもやられまいと拳を突き出すも突然下にグイっと引っ張られる。下を見て見ると肘先には光の縄が出来ており、それは吾蔵研究員の持っている機械から放たれていた。
しまった!?そうノストラダムスが思ったのも束の間、ノックはもう目と鼻の先である。
そして…
「ひとぉぉぉおおおおおつ!」
ノックの渾身の一撃目がノストラダムスの冠に直撃する。その衝撃は世界を震わせるかのような衝撃であり怪物は皆崩れ去った。
「ふたぁぁぁあああああつ!」
二撃目が叩き込まれる。ノストラダムスの足元にはひびが入り足が少し埋没する、その攻撃はノックにとって5回目の力の消費である。
「これで最後だぁぁぁああああああああああ!」
「ぬぁぁぁあああああああああああああああ!」
6回目でもあるのも意に関せず全力の一撃を叩きこむ。

そして冠は崩れ去り

ノストラダムスはノックによって地に伏せることとなったのであった。








世壊まで


















あと5分

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品