天壌無窮の守人

兎月あぎ

第七幕 三話 決戦、恐怖の大王

ノストラダムスによる重い一撃がノックへと迫る、その攻撃をひらりとかわし急いでその場から離脱しミリーたちのいる場所へと走る。
「…分かってるよな?」
ノックはにやりと笑みを浮かべながらCc達の方へと顔を向ける。
『…一時休戦といこう…その後両者じっくりと言い訳を聞かせてもらおうか』
そう言い膝に手を当てCcはすっと立ち上がり、体の各所を軽く見る。そして吾蔵研究員の方へ振り返り。
『吾蔵研究員、奴に使えそうなものを探してきてくれ』
「了解した、それまでにやられるなんてことは無いようにな?」
『ぬかせ』
そうやり取りを行った後Ccはノストラダムスの方向へ、吾蔵研究員は真逆の方向へと走っていった。
「逃げたところでどうにもならんぞ」
走る吾蔵研究員へ向けてノストラダムスの手が伸びる、がその手は途中でピタッと止まった。手の平の先でミリーがじりじりとその手を押し返そうとする姿が見られる、その姿を確認したノストラダムスはミリーを握り空中へとその手を持っていく。握りつぶそうとしているのか、腕に力が込められていく。
「ヤァッ!!」
次の瞬間ノストラダムスの腕が爆発し燃えだした。ノストラダムスの腕が開かれ中からミリーがくるくると回転しながら出てき着地する。その服は少々焼け焦げており先ほどの爆発の影響であろうことが分かり、力を使用した影響か髪は赤く燃えるように輝いている。
「ミリー無理はするな!」
「分かってるアル!」
ノストラダムスは燃えた手を振り払い消化しているようだった。鎮火した腕の先を見てみるも目立った外傷はない、ノストラダムスの表情も変わっていないためそこまでダメージは入っていないのだろうが、少しでもダメージが入っていると願いたい。
ノストラダムスが動き出した、両手を頭上に振り上げその両拳を振り下ろす。もちろんその攻撃により足場は崩壊、体勢を崩される。そこに追い打ちをかけるかのように手で薙ぎ払ってきた。Ccは背部の小型スラスター、ミリーは爆発と火炎を起こしノックを拾ってから薙ぎ払いの範囲を脱出。壁に打ち付けられた瓦礫は粉々となり当たればひとたまりもないことが分かるだろう。
すると急にノストラダムスが大きく息を吸い始めた。次の瞬間爆音が当たり周辺へと響き渡る、それと同時に衝撃波が三人を襲い大きく吹き飛ばされる。また、脆くなっていたのだろう、研究所の敷地内の8割は破壊され更地に近い状態となってしまった。幸い今の衝撃波でダメージを受けることは無かったのだが、次に足元が輝き始めるという変化が起こり始めた。
その光の大元はもちろんノストラダムス、足元から何か攻撃が来るかと身構えた瞬間周辺の瓦礫が浮かびだし、瓦礫と瓦礫の間をまるで筋肉繊維かのようにほそい光が紡がれていき輝く怪物が辺り一面に出現した。
「なんつー力だ」
『多勢に無勢とはこのことだな』
「勝つ気がないアルカ?」
『馬鹿言うな、さっさと大元まで行くぞ』
軽い会話を挟み怪物に向けて一斉に走り出す、元素材が瓦礫だからかはわからないが思った以上に脆く殴れば簡単に腕はもげる程度ではあった。しかし、いかんせん数が多い。次から次へと襲い掛かってきてキリがない、その上倒された怪物の破片が足元に崩れ落ち時たま足を取られそうになる。
しばらく攻防が続いていたものの戦況が変わる瞬間はすぐに訪れた。
ノストラダムスの体から光弾が追尾するかのように迫ってきたのだ、その上最前線で戦っているCcの腕に抱きついてくる小型の怪物が現れ始め、なんとそいつらは自爆してきたのだ。そのため自動修復に時間を要するためにCcは最前戦を離れなければいけなくなった。そのため少しづつ押され始める、一応Ccがエネルギー弾での援護射撃をしているもののそれもあまり効果を有していないようだ。
じりじりと押され始めまた元居た場所へと戻される、Ccのスーツの自動修復が終わるまでまだ少し時間がかかる。ミリーは辺り一帯を炎の海へと変えているものの崩れていくのは小型の怪物ぐらいで大型の怪物にはさほど効果がないようだ。
いぜん怪物が減る様子も見えずノックは力を使うかどうか考えていると半壊した通路に向けて怪物の一部がなだれ込み始めた。何事かとそちらの方へと顔を向けると一瞬で大量の弾丸を浴びて倒れていく怪物の姿が見えた。そしてそこから出てきた人物は。
「だから言ったやろ、あれほどちゃんと見とき言うたのに…この借りはどっかで返してもらうで!」
「紫乃!」
「その名で呼ぶな言うたろ阿保ぉ!!」
不死蝶の紫乃だった。どうやってここまで来たのかはわからないがなんにせよこの状況で戦力が増えることに越したことはない。その上大量の弾幕を張れる紫乃によって大量の怪物が処理されていく。またCcの自動修復も完了したのだが何かぶつぶつと言っている、誰かと連絡を取り合っているのだろうか。しばらくするとCcの手が光り始め、その手を前に突き出し始めたのだった。

「邪魔がまた増えたか…が、気にするほどでもないな」
そう言いこちらへと近づいてくるノック一行を一瞥する。じりじりと近づいてくるばかりでまだまだ時間はかかるだろう。すぐに吾蔵研究員の持つ機械から漏れ出る力を探し始める、軽い波動を出し揺らぎを探し出す。
…見つけた、のだが様子がおかしい。エネルギーを内包しているはずの機械から大量のエネルギーが外部に漏れ出ており大量の揺らぎが確認できる。どうやら次元の裂け目を練り上げたものを創り出しているようだがいったい何をする気なのだろうか、だが今のノストラダムスには関係ない。全てを滅ぼすだけだ、そう考え一歩前へと踏み出そうとした瞬間ノストラダムスの前方上空に巨大な揺らぎが確認できた。そこから姿を現したのは一度、ノストラダムスたちを苦しめたあれだった。

上空に巨大な裂け目が出来そこからさらにエネルギーのうねりが出来上がる。そして轟音と共にその裂け目から姿を現したのは、破城槌のような足先、まるでケンタウロスの様な体躯、そして片腕には大盾、もう片腕には肘先から主武装と思われるものが一門。そうサジタリウスだ。だが動き出す気配はない。
「なっ!?なんであれがここに?壊れたはずだろ!」
『始めて見るが…すごいな』
「でっかいアル!」
すると3人の背後から複数の足音がする。振り返るとそこには様々な国の代理戦争用兵器が大量にいたのだった。
「なっ…なんなんだ!?」
ノックが狼狽えるのも仕方がない。通常このような光景は複数国同士による大戦争ぐらいでしか見ることが無いのだ、さらに最近の大戦争と違ったところがあり世代別に入り混じっており普通では見ることのない光景となっているだ。
するとその間をかき分けて出てくる人物がいた吾蔵研究員だ。
「待たせたな、各国の頭のお堅い爺さんたちを説得するのに時間がかかった。同盟国だけではあるがこれだけの戦力をかき集めることが出来た、さぁ反撃と行こうか」
二ヤリ顔でそう宣言する吾蔵研究員、準備は万全のようだ。
『ミリーだったか?腰につけているそれ、あれにはめてきてくれないか』
「これアルか?分かったアル!」
Ccはサジタリウスの方を向きそうミリーに促す、ミリーの腰についているのはサジタリウスの本体である端末。電源が切れた後ミリーがずっと持っていたのである。ミリーはするすると鎮座しているサジタリウスの背中まで登り端末を差し込む、数秒後起動音がまるで遠吠えするかのように響く。
サジタリウスの背中を叩きながらミリーはノストラダムスの周辺を指さす
「起きたアルカ?早速で悪いアルが目の前の奴らを蹴散らしてほしいアル!」
《起きたばっかりの老体にこの仕打ちか小娘が…まったく最近の若いやつらは。仕方あるまい、この体も久しいな、存分に暴れてやろうか》
ノストラダムスが顔を歪める。
「有象無象がいくら集まったところで結末は変わらんわ!お前らごと滅ぼしてやろう!」
そうノストラダムスが宣言すると同時に怪物を純粋に巨大化させたものが通常の怪物と同様に大量出現し始める。
「こうなりゃ百人力だな…今その頬を引っぱたきに行ってやるよノス!」

最終決戦の火蓋は今切られた。
世壊まで 残す所まであと30分

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