天壌無窮の守人

兎月あぎ

第四幕 四話 星屑と亡霊

フロリダ半島某所海上プラントにて
爆発音と射撃音が入り混じる中急いで移動する影が二つあった、ノスとノックである。
「だああああ!何でこんなに多いんだよ!」
射撃音に負けず劣らずの声量で悪態を付いているノックは敵から奪った銃器で応戦していた。
「そりゃ以前に他の国の施設ぶっ壊してたんだから次は自分たちの国かもって思うはずでしょ?」
そう言いながらノスは淡々とハンドガンでノックの援護射撃を行っていた。ノックの力を使えれば一番楽なんだろうがそうはいかない、ノックの皮膚は痛々しい色に変色していることから分かる通りサジタリウスとの戦闘ですでに4発分力を使っており、あと使えるのは1発だけなのである。使うのならばせめて脱出の際に使いたい、ということで向かってきた兵士から銃器を拝借、もとい強奪し使っているのである。
「それにしても多すぎだろ…おいサジタリウスなんかないのか!」
『この体でどうにかしろと?無茶な話だ。以前の様に体を持っていたならまだしもこんな端末だけの体では何もできん。』
等と話しているうちに敵の数は徐々に減っていっているのが確認できる、援軍が来る前にさっさと突破したいところである。
「ノック、そろそろ行くぞ」
そうノスは合図しタイミングを見計らい飛び出していく、ノックの援護射撃を受けながら敵の元まで一気に近づき体術で地に叩きつける。一通り倒し終わった後ノックが後ろからついてきた。
「今いるのがどのあたりだっけ?」
「今いるのが第3プラント、俺の目的地が第7プラント、お前の目的地が第2プラントだな。俺の力の使いどころは第7プラントだから先に第2プラントだな。」
今回侵入してる海上プラントは全部で7つのプラントで構成されており形としては6角形の各隅に一つずつ真ん中に1つといった配置である。最初に入ってきたプラントは第4プラント、6角形の内の右下に位置していおりそこから左に進んでいるところである。
「ここから上に進まなきゃいけねぇ、道のりがなげぇなぁ」
「進むぞ、援軍が来られても困る」
こうしてノスの目的地である第2プラントへ移動していくのであった。




第2プラントが閃光に包まれる、その後莫大な量の煙を上げ根元が崩れていく。第7プラントへと続く橋が崩れていく中そこを走っている二人がいた。今回も無事目的物を破壊し最終目標である第7プラントへと移動しているのである。
「急げ急げッ!」
「うおわああああああああ!!」
情けない声を上げているノックはさておき実際二人の数m後ろがどんどん海の中へと飲み込まれて行っている。少しでも遅れていれば海に飲み込まれているだろう。
そうしているうちに第7プラントへの入り口が見えてくる、手に持っていた銃で扉の電子パッド部分を撃ち、扉を蹴飛ばしながら落ちる寸前の所で入ることが出来た。
第7プラント内はシンとしており人気が全くと言っていいほどないのである。するとノックが先へと歩き始めたため付いていくこととなった。ノックにしては珍しく無言でゆっくりと歩を進めているためここのことを聞いてみることにした。
「ノック、ここには何があるんだ…?」
「…ここにはな、俺の過去のものや他の奴の研究資料がまとめられてるんだがそれを全部消してしまいたいんだ…。この体になってからそれなりに経つが元に戻れる検討すら見つからない。過去の身分証など持ってきても使いようにならないだろう、もうこの世界で普通に生きていくことなんてできないのさ。今の自分は魂だけみたいなもんだ、まるで亡霊だな。それにここを壊せばあいつらもいろいろと困るだろう?」
「……」『……』
最後にはからからと笑ってはいたもののどこか寂しそうな顔をしていたのが分かる。そして恐らく資料室であろう部屋を発見し中に入って爆薬を仕掛けていく。その作業をしている中ノスは一つの疑問を抱いた。
「それにしてもここには一切警備が来ないな…何してるんだあいつらは」
その答えはサジタリウスが答えてくれた。
『ここは上位の権限を持っている奴しか入れんのだ、たとえ雇われの警備隊でも中にある資料を見られるのはどうしても嫌らしいな。そのせいでこうして入られているのだがな』
フンという鼻息が聞こえてきそうな声にノックと二人で苦笑しながら作業を進める。そして第7プラントの爆破準備が整った後は脱出するだけである。第7プラント最下部に移動し設置されている小型ボートを奪取、ある程度離れるとノックが立ち上がり力を込め始める。
ノックが大きく息を吸い込み口を開くと
「吹っ飛べええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
エネルギーを打ち出しプラント下部に着弾、ノックの声量打ち消すほどの爆発と熱気が上に向かって伸びていく。第7プラントを支えていた支柱はボロボロになり軋み崩壊し始める、それに合わせ周りのプラントも中央に引っ張られるよう崩壊して行っている。崩壊するものに巻き込まれないよう急いで小型ボートを出発させる、運転しながら崩れ行くプラントを見つめるノックの顔はどこか寂しげであった。



朝日が昇る中海上で二人は次の行き先を話し合っていた。
「ノス、次の行き先はどうするんだ?」
「付いてきてくれるのか…?それはとてもありがたいが。次の行き先はロシアの山奥にあるっぽい、また長旅になるだろうし寒いぞ…?」
「どんとこいよ!」
『お前らそんな特に決めずに移動してるのか…?』
二人と一体はそういい合いながら海上を移動するのだった。




某国某研究所にて
???「たっだいま~」
???『たっだいま~じゃないわ!アイツを動かしといてあの始末か』
???「しょうがないじゃん、予想外のもの持ってるんだもんどうしようもないでしょ?」
???「フリントノックが持ち出してたのか…?いやでも…あんなものが作られたなんて研究報告は無いぞ?吾蔵研究員どうするんだ」
吾蔵研究員「次の目標になりそうな場所に何人か送り込むことにした。とりあえず了承は得たものの…どうなるかは私にはわからん、だがこのまま進んでしまえば我々も危ないだろう」
???「胃が痛い…」
???『右に同じく』
???「ねーねーそれよりさ…」


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