天壌無窮の守人

兎月あぎ

第二幕 レイダー

突然現れた謎の襲撃者、何故狙われているのかが分からない。
だが明らかにノックを狙いに来ているのだけは砲身の向いている方向で分かる。
「ノック!何かあれについて知っていることがあるなら全部話せ!」
ノスがそう聞くとノックから答えはすぐに帰ってきた。
「奴は機兵世代前期に作られたボルトアクションシリーズの後継機のサイレントシリーズだ!絶対に目を離すな、静かに走行することが可能で密林に逃げ込まれたら追うことは難しいぞ!本来遠距離狙撃を主としてるから小回りは効きにくいはずだ、一気に近づいて駆動部を狙ってくれ!」
機兵世代などノスにとっては分からない言葉などは追々聞くとして、相手の特性が分かれば対処の仕様はある。
すぐに行動しようとするのだが…ノックの動きがどこかぎこちないのである。
「おいノック!急げ!」
ノスが急かそうにもやはり動きがぎこちないのである。
「…?」
自分たちが主な攻撃対象になっているにも関わらず動きのぎこちないノックに苛立ちを覚えながらも目の前の敵に向き合うことにした。
敵の全長は砲身を含めて10mほどか、距離は100m。
こっちが動いたとしてもすぐに後退されて逃げられるであろう。ならば…と考えていると相手が全力でこちらに突進してきたのである。
「なっ…!?」
てっきり後退しながらこちらを狙ってくるものだと考えていたがその考えは甘かった。
向こうは装甲車、大してこちらは生身の状態、ならば突っ込んで轢いた方が速いだろう。
急いで密林側に体を投げ飛ばす、対してノックは海側に飛びのいていたのが見えた瞬間目の前を装甲車が通り過ぎた、と思った瞬間吹き飛ばされた。

「ガッ!?」

吹き飛ばされた中視界に映ったのはその場で回転している装甲車の姿であった。
独楽のように高速回転しておりおそらく砲身部分が直撃したのであろう、腹部にズキズキと痛みが走る、そして今日二度目である木に背中から打ち付けられる状態となった。
吹き飛ばされた後すぐに腹を押さえながら立ち上がると目の前には砲身が。あぁ、終わったなと思った瞬間車体後部がはじけ飛んだのである。

「だらああああああああああああああああああああああ!!」

車体後部がはじけ飛んだ瞬間砲身から弾が発射され明後日の方向まで飛んで行った。その場からすぐに離れるとノックが手を引き抜いているのが見えた、原理は分からないがどうやらたノックが車体後部を破壊し、助けられたことは分かる。
「ッ…ノック無事か?」
腹を押さえながら聞くと
「お前の方が無事じゃないだろ!すまねぇ、判断が遅れたばっかりにお前に大けがさせちまった。骨とかは…折れて無さそうだな、ほら乗っかれ!近くの町までおぶって行くからよ!」
しゃがみながら背を向けられそう言われてしまった。
「いや…こいつはどうするんだ?…それに大丈夫だ、一人で歩ける。」
いや嘘だ、相当痛む。
だが、襲撃してきたこいつをどうにかしなければ今後また同じようなことが起きるだろう。今は黒煙を上げ止まっているがいつ動き出すかもわからない上に得体のしれないものだ、何なのかを突き止めてからでもいいだろう。そう考えていると
「融通の利かない奴だな、ふんっ!」
担がれた。
「お、おいノック、離せ、大丈夫だから!」
担がれた状態でじたばたしてみるも全くほどかれる気配もない、あと地味に腹に当たって痛い。
「行くぞ!しっかり捕まっていろっ!」
そう言うとノックはノスを担いだまま近くの町まで走り始めたのであった。

そうして砂浜にはもうもうと黒煙を上げる装甲車だけとなったのであった。




南アメリカ大陸某研究所にて

そこでは何かしらの研究員であろう人々が慌ただしく動いていた。
「…反応は?」
「逃げられました…クソッ、上官に怒られちまう。」
「しょうがない最新世代が相手なんだ、しかも送られてきた情報だと2体いたんだろう?無理もない、旧世代には荷が重すぎる。」
「痕跡はまだ残っている、力を使われなければそう遠くに入っていないはずだ、急いで他の奴を送れ」
「ちくしょう…なんでこんなことに…減給ものだぁ」
最後につぶやいた一人の研究員の言葉は周りの研究員達のテンションを下げるのには充分な言葉であった。



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