天壌無窮の守人

兎月あぎ

プロローグ

深夜南アメリカ大陸南東海岸部にて、
鬱蒼と茂った木々以外に生気を感じさせるものがいない、異質な環境となった密林のとある場所。
突如、炸裂音が響いたと同時、

空間が裂けた。

文字通り空間が歪み、千切れ、割れたガラスのような穴ができたのである。
そこからズルリ…とフード付きロングコートを纏い肩掛け袋を背負った中肉中背の人間が這い出てきた。
その人物が身を起こすとその動作によって顔が露わになる。
中高生ぐらいだろうか?中性的な顔立ちをしておりどちらかと言うと可愛らしさが優っている。
空間の裂け目から出てきた人物はまたフードを被り直し
「…っ、なんでこんな場所に」
そう言葉を発すると衣服を整えた後とりあえずと言わんばかりに密林から波音のする砂浜の方向へと足を向け歩き出した。

砂浜を歩き続けること数時間、夜も明けようとしてきた頃、波打ち際に人が倒れていた。
倒れている人物はロングコートを羽織った状態でうつ伏せになっており、横顔から見るに青年なのであろうことが分かる。
フードを被った人物は倒れている人物にゆっくり近寄りしゃがむと、いきなりロングコートを剥ぎ取ったのだ。
剥ぎ取ったロングコートの下は赤銅色の鍛え上げられた筋骨隆々の背中が見え只者ではなさそうな感じすらさせるのだが、
フードの人物はそんな事はお構いなしとばかりに倒れている人物の体を漁り始めた。
が、何もないとわかるや否や、懐からいきなりナイフを取り出し倒れている人物の首元に持っていき、その鋭利な刃物が首元を掻き切ろうと瞬間

爆発

「ッ ︎」
フードの人物は吹き飛ばされ、背中から木に叩きつけられた。
衝撃を受けた体を起こしながら爆発した場所に目をやるが砂浜には砂煙が巻き上がり何も見えない。
すると砂煙の中から
「お前ぇ ︎人様が倒れていたのにそのまま寝首を掻こうとは…ゆるせん!正々堂々と戦えぃ!」
と、荒々しくもたくましい声が周辺にまで響き渡る。
砂煙が徐々に晴れ爆発の中心にいる人物が佇んでいる様子があらわになってきた。
それは先ほどまで倒れていた人物であるのだが、一つだけ先ほどと違う点がある。
それは、先ほどの爆発で吹き飛んだのであろう。そこに青年は一矢纏わぬ姿、そう。

全裸で

佇んでいた。

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