Gにまつわる話

味噌村 幸太郎

悲鳴


 みなさんは、黒くて脂で光った生き物。
 G、ゴキブリは嫌いですか?
 僕は苦手です。

 現在、僕の家には、妻と娘が二人います。
 なので、男性は僕しかいません。
 だから悲鳴があがれば、退治するのは僕の役目です。

 僕の妻はそんなに女の子ぽい素振りを見せることのない女性です。
 まあ、ツンデレかもしれません。
 ですが、ゴキブリを見つけると。

「キャアアアッ!」

 と甲高い声で悲鳴をあげます。

 それを聞きつけると、僕は
「どうしたの?」と聞きます。
「じ、Gが出たぁっ!」
 と慌ててしまいます。
 で、男の僕は一生懸命、新聞紙丸めて、ゴキブリと戦うのです。

 僕は持病があるため、夜に結構強い睡眠薬を飲んで寝ます。
 だから、なかなか夜中に起きることができません。
 妻もそれを知っているので、夜は滅多なことじゃ僕を起こしません。

 しかし、Gが出たとなれば別です。

 いびきをかいて寝ていると、
「味噌くん、味噌くん。悪いけど起きて」
「ほへっ?」
「お風呂あがりにゴキブリが出たんよ」
「んががっ」(わかった)
 意識がもうろうとしていますが、僕は立ち上がって、頷きます。

 新聞紙を丸めて、夜中だろうと、30分ぐらいかけて、素早いゴキブリとにらめっこします。
 これに関しては、男の義務だと思っているので、別に妻に対して、何も思いません。

「起こしてごめんね、ありがとう」
「んががっ、いいご。おやじゅみ」(うん、いいよ。おやすみ)

 これが僕たち夫婦の例です。
 多分、ほかのご家庭や夫婦、カップルとかでも、同じような感じだと勝手に思ってます。

 しかし、例外はいます。

 僕の両親です。

 キッチンでお袋が料理をしているとき、悲鳴をあげます。

「キャアアアッ!」

 それを聞きつけた親父が怒鳴ります。
「なんかやかましい!  女みたいな声を出すなっ!」
「だって、ご、ゴキブリがっ!」
「それぐらいで、バカみたいな声を出すなっ!」

 そう言ってブツブツ文句を漏らしながら、ゴキブリを倒すそうです。

 キッチンには、親父のために用意している大きなツボがあります。
 それは親父が大好きなぬか漬けのツボです。
 毎回、ゴキブリの騒ぎを聞くと、原因をそれとし、ベランダで高いツボをパリン!  と割り、捨てます。
 そして毎回お袋は買い直すのです。

 ゴキブリとは、本当に人間とは相性の悪い生き物ですね。

  了

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