俺が【聖女】でほんとうにいいのか? 人は助けるが毛も生やすぞ?

さるナース

第002話、冒険者ギルドで転職だ! 研修一日目、前編


俺は朝から冒険者ギルドの前に来ている。

「ここが、冒険者ギルドかぁ」

結局あれからヨシムさんが辞めた後に、俺も退職を申し出た、特に引き止められることもなくあっさりと退職できた、皆から引き留められてたヨシムさんとはえらい違いだ、まぁ俺は期待されてなかったしな。


***

心を落ち着かせて、冒険者ギルドの扉を開く、朝から多くの人で賑わっている、強そうな人が多い、俺は緊張しながら受付に向かった。


受付Aさんは明るい笑顔で挨拶をしてきた。 スラッとした女性だ、可愛いという印象だが、目つきがなんとなく怪しい雰囲気がする、少し寒気も感じる、なぜだろう。
※ 受付Aの名前は後日の話で出します。

「ようこそ、冒険者ギルドへ~、初めての方ですね、登録ですか~?」
「はい、よろしくお願いします」

俺も挨拶を返すと、受付Aさんは紙を机の上に出してきた。

「こちらの紙に記入をお願いします~」

どうやら名前や前の職業等を書き込む履歴書のようなものだ。 俺は間違えないように気を付けながら、書いていった。 受付Aさんは俺と紙を見比べている。

「えーと、名前はサルナスさんですね、以前は魔法道具を作ってた、体格はまぁまぁ、顔つきは、、、あまり強そうではないですね~、大丈夫ですよ、依頼は様々ですから~」

(顔つきで強さがわかるのか? なんかダメって言われてる気がする)

次に受付Aは水晶を机の上に出してきた、透明で透き通っている、大きさは片手に乗るくらいだ。

「適正を調べるために、この水晶に手をおいてくださ~い」

受付の女性が手を置くように促してくる、俺は片手で水晶の上に手を置く、ひんやりと冷たい感触だ。

「これでいいですか?」

「ではリラックスしてくださ~い」

水晶は光り出し、受付側に何か浮き出ている、文字のようだが俺の方からはよく見えない、周りに情報が漏れないようにとの配慮だろう。 その文字を見ながら受付Aさんは困惑した表情をしている。 何か問題でもあったのだろうか。

「ん? ん~、、、 あれ~?」

「どうかしました?」

(えっ? まさか俺には適正が無いとか?)

そんな顔されると、俺も不安になってくる。 そして受付Aさんは顔を水晶から俺の方へ向けて、変なことを言い出した。

「……サルナスさんは女性ですか~?」
「いや、男ですよ、見ての通り」

(何言ってんだこの人)

受付Aさんはまだ困っている表情だ。

「ですよね~ じゃあこれって、、、ちょっと待ってくださいね~」

受付Aさんは奥の部屋にバタバタと走っていった。 俺は困惑しながら、受付でそのまま待つ、数分後、受付Aさんはもう一人の男性を連れて戻ってきた。

(あれ? もう一人連れてきた)

「お待たせしました~」

受付Aさんが連れてきた男性が俺に話しかけてくる。

「あなたがサルナスさん? ん~男性ですよね?」

先程と同じ質問をされた、どう見ても男なのに、さっきからなんなのだろうか。

「はい」

「鑑定士のワンといいます、実は水晶での鑑定に不備があったようで、私の魔法で鑑定させていただいても、よろしいでしょうか?」

「あ、別にいいですけど」

鑑定士は俺に向かって手をかざし、鑑定魔法を行った、鑑定の結果は意外なものだった。

「鑑定! ん!? これは、、、どうやら水晶は間違ってはいないようです、あなたには "治癒師" の適正がありますね」

鑑定の結果が不思議に思われた留学は "治癒師" という職業にある、俺が知ってる範囲で "男の治癒師" はいない、もしかしたら知らないだけで、実はいるのかな。

「治癒師? 俺にはそんな適正が、でも男の治癒師って聞いたことないような」

受付Aさんも、同じ意見のようで、説明してきた。

「それはそうですよ~、女性に出る適正です~、男性にはいません」

「えっ! そうなんですか?」

それなら俺はどうして適正が出たのだろう。

「はい~、大昔の記録には存在した"らしい"という話もありますが、私の知る限りでは男の治癒師はいません~」


受付Aさんの説明によると、この世界では治癒師は女性だ、それが当たり前、優しいイメージが強く、男性に人気で、一部では天使とも言い表されている、最高位の治癒師は"聖女"と崇められることもあるらしく、地域によっては信仰の対象にもなりうるらしい。

「最初は水晶の故障かと思ったんですが~」
「俺が治癒師? でも俺は男ですよ、そこに間違いはないです」

俺は生まれた時から男だ、まさかいつの間にか変化したのか? 俺は少し混乱している。

「そうなんですけど~、水晶でも鑑定魔法でも治癒師と出たので、こちらも間違いないと思います~」

俺が考え込んでいると、受付Aさんは研修の提案をしてきた。

「とりあえずギルドで研修を受けませんか? 新人さん向けにここで研修を行っていますので~」

「ぜひお願いします」

俺は即答して、研修に申し込みをした。

「わかりました~、では明日のこの時間にギルドに来てください~」

「わかりました」

俺は冒険者ギルドを出て、家に向かった。


***


帰宅、俺は椅子に座り、ボ~っと考えている。

「まさか"治癒師"に適正があるとはなぁ、でも女性だけの仕事なんだよな、男の俺にやっていけんのかな… 一応テキストをもらったけど」

俺は冒険者ギルドでもらった入門テキストを手に取り、ざっと読んでみる。


【治癒師入門! 基礎の基礎!】

『まずは怪我の治癒魔法です! 怪我を治すには慈愛の心を持ち、傷を治したいと切に願い、祈りを込めます、その心に神が答えてくれるのです!』


「なんか曖昧な内容だな、具体的にどうしたらいいんだ? 明日の研修に行けばわかるか、今日はもう寝よ、ぐ~」

俺はテキストを放り投げ、布団へ寝転がり、そのまま眠りにつく。

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