人狼中学校

ヒロ

人狼ゲームスタート

突如告げられた言葉に全員が驚いた。
いや、それは嘘だ。
大野 春人ただ一人だけが笑っていたからだ。それは、嬉しさや喜びなどではなくあまりの恐怖につい笑ってしまったからだ。
未だ映像は流れている。
「皆さんは人狼ゲームをご存知ですか?知っていると言う人がほとんどだと思います。」
「ですが、今回は皆さんの知っているゲームとは少し異なるところがあります。」
「一つ、午後0時から1時の間に人狼があなた達生徒と職員を殺します。」
体育館で悲鳴が上がり、泣き出すやつもいる。
「二つ、これはあなた達から人狼への唯一の対抗手段です。この学校に隠れている人狼を見つけ出し、殺す事です。」
「そして最後に、ここではインターネット及びWiFiは使えません。」
「生きているのは人狼か、はたまたあなた達か人狼ゲームスタートです!」
映像が終わった体育館は静まり返っている
一番最初に声を出したのは校長だった。
「み、皆さん落ち着いてください」
声が震えている、かなり怯えているようだ。
「これはなにかのイタズラです。」
何を根拠にと思ったが声には出さなかった。
「職員が外を確認してくるので、生徒の皆さんはここで待機していて下さい」
そう言い終わると足早に外に出ていった。
人がいないと思えるほど静かな体育館。
先生達が出て五分が経っていた。意気おいよく扉が開いた。視線が一気に集まる
校長が前に立ち話し始める。
「校門などを確認しましたが、全て閉まっていました。いきなり外へ出るのは危険と考え、生徒の皆さん、そして教職員の皆さんは教室で待機するようにしてください。」
明らかに顔が強張っている。
「それでは解散。」
一瞬時が止まったかのように、誰も動かなかった。しばらくして、一人目が動きその後ろから二人三人と出ていった。
大野 春人は動けずにいた。
「ル…ハル!」
俺はハッとして後ろを見た。そこには優の姿があった。
「ハル大丈夫か?顔色わりぃけど」
「あぁ……うん大丈夫……」
大丈夫と言ったが大丈夫ではなかった。それも当然だろう。学校に行くと、訳の分からないゲームをすると言われ、人狼が生徒を殺すなんて言うんだから。
「俺達も移動しよう。」
「そ、そうだな。でもどこに?」
「そうだな……あまり皆が集まらないようなところのほうが良いかな。」
「それなら屋上だな」
「よし!屋上に行こう」
二人は屋上へ向かった。屋上へ向かう途中、何人かの生徒を見た。しかしそれは不安と恐怖が入り混じったそんな顔をしていた。
屋上に着いた。
予想はしていたが、案の定屋上には誰もいなかった。
「よし着いた。」
風が優しく吹いている。それもあり少し心が落ち着いた。
「ハル。」
「うん?」
「どう思う?」
「人狼ゲームのことか?」
「ああ。この学校にいるって言ってただろ。」
「そうだな……普通に考えると校長かな。一番権力があるし、金も持ってるだろうし。それにあの動揺の仕方見たらそうだろ。」
「それもあるな。でも校長だけでここまでできるか?」
「協力者か?」
「協力者かどうか解んないけど、一人ではない気がする。」
「それは俺も思った。けど誰が人狼かは分かんねぇ。無いと思うが、お前じゃねぇよな?」
「俺なわけねぇだろ!」
本気で怒っている表情だった。コイツとは幼稚園からの付き合いだ、嘘ではないとすぐに分かった。
「ワリィ疑って」
「ああ」
人狼が誰なのか。狙いは何なのか。何もわからないまま時間が過ぎた。









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